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氏家祐太「オンラインゲームとの付き合い方」
1. インターネットの普及によるオンラインゲームの人気、隆盛から起こる問題
昨今、インターネットの普及が一般的になり、パソコンからだけでなく、携帯電話や、タブレットと呼ばれるものを利用することで、いつでもどこにいてもインターネットを利用することが出来るようになった。それによって全国、全世界中の人といつでもつながることが出来るようになり、そのことを利用したオンラインゲームが近年めざましい発展を遂げている[1]。そのジャンルの多さなどから、オンラインゲームは若者を中心として、新しい余暇の過ごし方として定着しつつあるように感じる。
しかし近年では、オンラインゲームの暗部の影響が大きくなってきており、特にその中毒性が大きな社会現象になることも近いように感じる。実際、私自身もオンラインゲームに没頭していた時期があり、課金なども多くしていたためその中毒性というものを、身をもって体験している。しかし、オンラインゲームとは、本来どこにいても見知らぬ誰かとつながることができ、ゲームを一緒にプレイすることができる優れた娯楽であり、コミュニケーションの道具ともなりうるものである。そこで、自分の体験等を通して、オンラインゲームとうまく付き合うために何が必要なのかを考えていきたいと思ったため、今回のレポートではオンラインゲームによって起こる問題とその対処のために必要なことというテーマに設定した。
このレポートを書く上で参考となるような文献を探してみたが、まだオンラインゲームの問題は、新しい出来事であるため、文献をあまり見つけられなかった。そのため、インターネットの情報や実体験をもとにした考えなどを中心に、このレポートを書いていく事をはじめに断っておきたい。それでは以下で、オンラインゲームの簡単な説明をしつつ、オンラインゲームによって起きている問題について考察をしていきたい。
2. なぜ今オンラインゲームが人気を博しているのか
オンラインゲームが普及するようになった背景としては、冒頭で触れた通りインターネットの普及が考えられるが、インターネットの普及だけでは、オンラインゲームがこれほどの人気になるということはないだろう。そのため、オンラインゲームが人気となっている要因について簡単ではあるが考えてみたい。
現在人気が高まっているオンラインゲームだが、一口にオンラインゲームといっても様々な種類があるため、どのようなものがあるのか簡単に紹介したい。テーブルゲームやスポーツゲーム、ロールプレイングゲームやシミュレーションゲーム等などの様々なジャンルがあり、暇つぶしにやるようなものから、本格的にプレイすることのできるものまで幅広いゲームがあるため、男女問わず、幅広い年齢層に受け入れられやすいものとなっている[2]。また、これらの種類に加え、チャットと呼ばれる友人や見知らぬ人との間でもやりとりができることや、アバターと呼ばれるインターネット上での自分の分身の服装を変えることができたりなども、人気を博している要素の一つであると考えることが出来る[3]。
3. 現在オンラインゲームはどういった点で問題があるのか
老若男女問わず人気を博しているオンラインゲームであるが、利用者が増加していくにつれてさまざまな問題点が浮き彫りになって来た。オンラインゲームには、リアルマネートレードやチャットでの暴言などの様々な問題があるが、ここでは代表的な問題点である、「コンプガチャ[4]」を始めとする課金問題およびオンラインゲームの中毒性について考えていきたいと思う。
オンラインゲームは前述の通り、どこにいても、いつでも全国の人と一緒にプレイすることができるという点で人気がある。しかし、全員が同じタイミングでログインしていないと一緒に遊ぶことができないため必然的にプレイ時間が長時間化し、いわゆる「廃人」と呼ばれるオンラインゲーム依存症になる人を生みやすい[5]。
また、多くのオンラインゲームでは、現金を電子マネーに変えたり、クレジットカードを利用したりすることで、ゲーム内通貨へと交換することが出来る。このことを「課金」と呼ぶのだが、近年では、オンラインゲームに熱中しすぎて生活が困難になってしまうほど課金してしまう人が増えてきている。その原因のひとつとして、現金を直接ゲーム内通貨へと変えるのではなく、クレジットカードや電子マネーなどを利用して変えることによって、金銭感覚が正常ではなくなってしまうということが考えられる。また、前述の中毒性とも関係があるが、「ガチャ[6]」を一度やってしまうとどんどん課金していってしまう大きなきっかけになるように感じる。ガチャ自体は他のプレイヤーと差別化することができ、それこそがオンラインゲームの醍醐味と言っても良いのかもしれないが、直接現金を使うわけではないので、利用者の金銭感覚を狂わせてしまうこと、また購買意欲を過剰に促進してしまうことが問題である[7]。私の体験として、数万円課金したとしてもそれが数分でなくなってしまうことも少なくなかった。一度ガチャを回してしまうと、「途中で諦めると今まで課金したお金が無駄になってしまう」という考えが頭をよぎってしまい、目当ての景品が出るまでなかなかやめることができない。その結果として、いつの間にか大金を使ってしまっていたということが多い。一度夢中になってしまうと、自分で制御することは難しくなってしまい、「コントロールの喪失」をまねくことになる[8]。
オンラインゲーム運営会社も、こうしたガチャの中毒性というものを認識しているが、運営会社側としては、商売として事業を展開しているため、「どれだけアイテムを買わせるか」、「廃人課金者にいかに長くゲームを続けさせるかが決め手だ」というような見解なようだ[9]。実際にオンラインゲーム運営会社2社に、課金の中毒性についてどのように認識しているか、また、購買意欲を過剰に促進してしまうようなシステムで搾取しているのは問題ではないのか、課金の中毒性を減らす具体的な改善策は何か考えているのか、という趣旨のメールを送り、見解を聞いてみようとしたのだが、2012年7月現在、回答は得られていない。
4. 余暇としてのオンラインゲームとの付き合い方を考える
オンラインゲームの問題点について、その中毒性と課金問題について意見を述べてきたが、本来オンラインゲームとは、冒頭で触れたように、様々なジャンルのゲームがいつでもどこでも遊ぶことができ、コミニュケーションツールとしても利用できることから、余暇をオンラインゲームを利用して過ごすことは、非常に有意義であるように思う。オンラインゲームの各運営会社は、未成年者による課金問題やコンプガチャの規制などを受けて、未成年利用者の過度な課金の防止を明記した「オンラインゲーム安心安全宣言」を作成したり、コンプガチャを廃止したりするなどの対応を行なっている[10]。
このように、オンラインゲーム運営会社もオンラインゲームの問題性を改善するべく対策に乗り出しているということは、オンラインゲームが抱えている問題改善に向けて大きな一歩となるだろうが、十分ではない。なぜならば、オンラインゲーム運営会社の対策として、未成年者の課金できる金額が制限されたとしても、利用者側が、登録の際に年齢を偽って登録するなどすれば、制限をすり抜ける事ができ、コンピガチャは廃止されたが、新たなガチャが次々と登場するなどして、ガチャの中毒性は依然保たれたままとなっているためである[11]。
しかし、運営会社にばかり対策を求めるのではなく、オンラインゲーム中毒にならないためにも、利用者の意識改革を行なっていく必要も当然求められてくるはずである。特に自分で判断することの難しい低年齢層の利用者においては、保護者などがオンラインゲームのやりすぎにしっかりと目を向けることや、過度な課金ができないように、クレジットカードの番号を子供には教えないなどの注意が必要であると思う。また、学校などで、オンラインゲームの危険性などを知らせる講習などを開くことも未成年者のオンラインゲーム中毒者を減少させることが出来ると思う。
もちろん低年齢層の利用者だけでなく、一般の利用者も、オンラインゲーム中毒にならないように、一日のプレイ時間の上限を決め、きちんと守ることや、ひと月に課金する上限金額を予め決めておく、あるいは課金する前に一旦時間をおき、一度冷静になった上で課金するかどうかを判断することなど、夢中になってしまうと守ることはなかなか難しいことではあるが、これらのことを意識して、オンラインゲームにのめり込み過ぎ無いように、うまくバランスを取り、付き合っていく必要がある。
以上でオンラインゲームについてその問題性を確認し、オンラインゲームとうまく付き合っていくために必要なことについて述べてきたが、私が主張したいことは、オンラインゲームに夢中になってはいけない、課金をしてはいけないということではなく、適度にオンラインゲームを楽しみ、無理のない範囲内で課金をすることでオンラインゲームを楽しむべきである、ということであることを、誤解のないように最後に示しておきたい。
[1] プロゲーマーの現状「オンラインゲームが発展した理由」http://gamer00.web.fc2.com/onlinegame.html (2012年7月現在)
[2] 3Dオンラインゲーム用パソコンの選び方「オンラインゲームの種類と特徴」
http://www.gamepc.tank.jp/syokyuu/syurui.html (2012年7月現在)
[3] ネトゲ・オンライン「オンラインゲームの魅力」http://www.tadage.org/merit.html (2012年7月現在)
[4] コンプガチャとは「コンプリートガチャの略語。ソーシャルゲームを有利に進めるためのアイテムは、「ガチャ」と呼ばれる有料の電子くじで入手できる。コンプガチャは2つ以上の特定のアイテムをそろえることで、希少性のより高いアイテムを入手できる仕組み。該当するアイテムが当たるまで利用者が繰り返しガチャを使うことになり、射幸心を過剰にあおるとの指摘が出ていた。」(「コンプガチャとは」2012年5月9日付 日本経済新聞より引用。)
[5] ITmedia Gamez 「コンテンツデフレの時代に、ソーシャルゲームが急成長を見せたわけ」(2012年7月現在) http://gamez.itmedia.co.jp/games/articles/1002/18/news054.html
[6] ガチャとは「中に景品が入ったカプセルトイの呼称の一つで、Yujinの登録商標。転じてソーシャルゲームの課金アイテムに使われる手法。お金と運でレアアイテムを手に入れるギャンブル性がユーザーの心をくすぐり、ソーシャルゲーム人気に一役買っている。」(はてなキーワード「ガチャ」http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%C1%A5%E3 2012年7月現在 より引用。)
[7] 「コンプガチャとは」(2012年5月9日付 日本経済新聞)
[8] 廣中直行『人はなぜハマるのか』(岩波書店、2001年)
[9]「コンプガチャ、カギはネトゲ廃人・搾り取り加減」(2012年5月14日付 読売新聞)
[10] 一般社団法人 日本オンラインゲーム協会HP「オンラインゲーム安心安全宣言」http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA120420.pdf (2012年7月現在)、「グリーとDeNA、コンプガチャ廃止」(2012年5月9日付 日本経済新聞)より作成。
[11] ITmedia「コンプガチャを失った、ソーシャルゲームの次の一手は」http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1205/21/news089.html (2012年7月現在)