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丹野裕太「ベリテンライブに見る地域活性化〜日本最大のフェスROCK
IN JAPANと比較して〜」
1、二つのロックフェスを通して
近年、夏になると日本各地で開催されるようになった夏フェス。日本の四大フェス『FUJI ROCK FESTIVAL』『SUMMER SONIC』『RISING SUN
ROCK FESTIVAL』『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』をはじめ国内50を超えるフェスが毎年行われている[i]。ここ栃木でも毎年夏に開催されているロックフェスがある。それが『ベリテンライブ』だ。RADIO BERRY(FM栃木)が主催し、真岡市を中心に開催される野外コンサート形式のこのフェスは、2003年にスタートし、今年でちょうど10回目を迎える[ii]。毎年徐々に規模を拡大していき、観客も増えてきているが他のフェスと比べるとやはりまだ見劣りしてしまう。私は昨年、『ROCK IN JAPAN FES』と『ベリテンライブ』という二つの夏フェスにスタッフとして参加した。この『ROCK IN JAPAN FES』は地域との連携度が高く、開催地のひたちなか市に大きな経済効果をもたらしている。『ベリテンライブ』も栃木や真岡市との連携度を高めより栃木全体に貢献できればさらによいものになるだろう。なぜ『ROCK IN JAPAN FES』は日本最大のフェスになりえたのか。そしてベリテンライブは今後どうすればもっとよい夏フェスとなれるのか。実際に両フェスに参加して感じたことをふまえ考察してみた。
2、ひたちなか市と『ROCK IN JAPAN FES』
『ROCK IN
JAPAN FES』が夏フェスとして成功している舞台裏には大きな要因がいくつかある。その中でも第一に考えられるのが、開催地である茨城県やひたちなか市との積極的な連携だ。それらの自治体が夏フェスを積極的に誘致し始めたことが成功に大きくかかわっていると考える。『ROCK IN JAPAN FES』の開催地、茨城県ひたちなか市では夏フェスの誘致を積極的に行ってきたという。というのも実は十数年前、隣接する東海村の原発事故のあおりを受け、ひたちなか市は観光客が減少した。そのため夏フェスで地域を活性化したいとの思いがあり、全面協力することとなった。
3、地域と連動したイベント制作
昨年行われた『ROCK IN JAPAN FES 2011』の会場にはひたちなか市内外の業者30店舗以上が軒を連ねた。地元の特産品をアピールするため常陸牛のカレーライスや、取れたての魚介類、野菜、果物などを原価すれすれの値段で数多く提供していた。日本最大のフェスということもあり日本中から足を運ぶお客様がいる。そういった遠くから来たお客様たちに地元のおいしいものを食べてもらい、ひたちなか市のことをよく知ってもらいたいというのが市の願いだ。それに比べると会場自体の規模が小さかったとはいえ『ベリテンライブ2011』では出店の数も少なく地域色も目立って濃かったとは言いがたい。そういった点でも地域と連携し、より地域色を濃くしていくべきだ。そうすれば食という面で、再び真岡市だけでなく栃木に足を運ぶお客様が増える可能性が高まる。
また、『ROCK IN
JAPAN FES』の期間は三日間。日本中から14万人もの観客が押し寄せる。そのため市内のホテルや旅館は部屋が足りず自治体が協力している。自治体では会場内にテント用のスペースを確保。テントを持参すればそこで一夜を過ごすことができるというシステムだ。そして通常は深夜には閉店する地元の温泉も夏フェス期間中は朝まで営業。食堂を開放して夏フェス客のための素泊まり施設となっている。さらには市内の中華料理店までも、夜になると普段は宴会用のお座敷を期間中に限り有料で臨時宿泊施設として開放しているのだ。そういった宿の確保のしやすさもフェスへの参加をよりいっそう簡単なものになるよう配慮しているのだ。
4、今後の『ベリテンライブ』と栃木
そういった地域の貢献もあり『ROCK IN JAOAN FES』は毎年観客動員を増やし、昨年は三日間で17万人以上動員した。このフェスが地元ひたちなか市へもたらす経済効果は三日間で3億円以上にも及ぶという[iii]。昨年の『ROCK IN JAPAN FES』の会場に来ていたひたちなか市市長はこう言っている。
「ロックフェスが若い人に注目してもらえることはひたちなか市にとっても大きい。若者にそのうち住んでもらうことも考えている。」
ロックフェスを目的にその町を訪れる観光客は数多くいる。それらの観光客をロックフェスだけにとどめて置くのではなくそこからその街自体の魅力を感じ、また訪れたいと思わせるそういったイベントづくりが求められる。ベリテンライブも職などを通しそういった点でさらに地域と密着していければさらに栃木、真岡全体が豊かになるだろう。
[i] Wikipedia HP「ロック・フェスティバル」(2012年7月現在) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%90%E3%83%AB
[ii] 株式会社ロッキングオン HP「rockin’ on inc」(2012年7月現在) http://rock-net.jp/
[iii] 「150組が熱演!17万人興奮の「ROCK IN JAPAN FES」」(2012年7月現在) http://natalie.mu/music/news/54458