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大森由貴「ライブが与える影響力、価値」
1.テーマ設定の動機
私にとって一番の余暇の楽しみは好きなアーティストのライブに行くことである。ライブに行かない限り、生で歌声を聴いたりパフォーマンスを観たりする機会はないのでライブの価値は相当高い。周りの友達にもアーティストは違っていても、年に何回かのライブを楽しみに日々の生活を頑張っているという人が少なくない。そこで、今年初めて参加しようと思っている、国内最大の野外ライブイベントと呼ばれる夏の風物詩“a-nation”を例に挙げつつ、独自で行ったアンケートを基に、ライブが与える影響を自分なりに分析してみようと思う。そこから“余暇”の本質を見抜いていくというのが本稿の最終的な目的である。
2.a-nationの魅力
まず、a-nation[1]とはエイベックス[2]が1990年代より行っていた夏のイベントを、2002年からこの名称で本格的に発展させたもので、毎年7月から8月下旬にかけて全国各地の野外会場で行われるライブである。協賛企業は、初回から2009年まではファミリーマートであり、2004年まではトヨタ自動車も特別協賛していたが、2005年以降は降り、代わって森永製菓がウイダーinゼリー名でタイトル協賛している。 2010年にファミリーマートがチケットぴあとの提携を解消したのに伴い、特別協賛はセブン&アイホールディングスに代わった。参加アーティストは倖田來未や浜崎あゆみなど、エイベックス系列プロダクション所属が大半である。オープニング開始から公演終了までの時間は、2002年のスタート当初は約4時間半だったが、2005年には約6時間にも及び、現在は約7時間まで延びている。また、今年11年目を迎えるa-nationはこれまでにない新しいイベントとして生まれ変わるようで、a-nationの大きな特徴であった全国各地を回るサーキットのスタイルを“定住”スタイルに変更した。夏休みの渋谷を舞台に、10日間に渡って繰り広げられるタウンフェス「musicweek」、東京と大阪の2大スタジアムで日替わりのヘッドライナーが集まる「stadium fes.」が行われる。
後述するアンケート調査では、a-nationに参加した人がいなかったため、参加経験のある知人に感想を聞き、次のようにまとめた。a-nationはエイベックス系のトップアーティストが大勢でるため、特定の好きなアーティストがいる場合も、特に好きなアーティストがいない場合、もしくはライブに行くのが初めての人でも楽しめるものである。また、自分の好きなアーティスト目当てで行っても、それ以外のアーティストでもかなり盛り上がることができる。a-nationにはトップアーティストだけでなく、まだ知名度の低いアーティストもいる。これは、有名どころを目当てに来たお客さんにも知名度の低い彼らを知ってもらうという、企画者側の作戦でもあるのではないかと考えた。一方で、夏の野外なので非常に暑いということ、5万人以上を収容できるスタジアムで行うため会場が広く、ほとんどの人は席が遠くなってしまうという悪い意見も挙げられている。
3.アンケート調査からみえてくるもの
次に、特定のライブに限らず、身の回りの人が行っているライブではどのようなことが求められているのかということについて疑問を抱いた。そこで、私だけでなく、それぞれが思うライブの価値や影響力を知るために、宇大の国際学部の生徒を中心として30人にライブに関するアンケートを行った。項目は全部で10個設け、質問の内容は次の通りである。@好きなアーティスト、Aライブに行ったことがあるか、B初めてライブに行った年齢とその感想、C1年にどの程度ライブに行くか、Dライブファッションにこだわったことがあるか、Eフェスに参加したことはあるか、F野外ライブの必需品、Gライブの後の気持ち、Hライブに求めているもの、Iライブの最大の良さについてである。
Aの質問では、30人中26人がライブに行ったことがあると答え、ほとんどの人がライブ経験者であるということがわかった。Bは人によって様々であり、最も年齢の低い人は5歳、最も年齢の高い人は20歳という結果が出た。最も多い回答は、15〜18歳の間で高校生になって初めて行くというケースが多いということがわかった。Cの回答も個人差があり、ここ何年も行っていないという人もいれば、6回と答えた人もいたが、平均は1〜2回である。Dでは、ツアーグッズにあるライブTシャツを着る、タオルを買って身に着けるという回答がほとんどであった。特定の好きなアーティストがいる人の場合はマスコットやキーホルダーなど装飾物を手作りで作ったり、会場で目立つためや最大限にライブを楽しむために、友達とおそろいのコーディネートをするという回答もみられた。Eは、はいと答えた人が一人だけで、今回取り上げた“a-nation”ではなかった。Fについては、熱中症予防のための飲み物、汗ふき用のタオル、雨天時に使うレインコートという一定の回答が得られた。Gは、幸せ、爽快感という答えが多い一方で、幸せだけど少し寂しいなど複雑な感情を抱く人もいた。Hでは、一体感という答えが圧倒的に多く、次いで、感動、楽しさ、ストレス発散という順である。最後にIであるが、この項目は好きなアーティストによって回答が異なるという興味深い結果が得られた。例えば、aikoや絢香など基本的に歌のみで活動しているアーティストが好きな場合は、生で歌声が聴けるという回答が多く、EXILEのような歌だけでなくダンスもあるアーティストが好きな場合は、会場全体を使ってパフォーマンスをするせいなのか、生の歌声に加えて様々な演出に感動できるという回答があった。アーティストの種類に限らず、共通した答えはエネルギー源になる、ファンと交流ができるという回答であった。
4.余暇とは
人気の高いフェスであるa-nationについて調べ、アンケート調査を行った結果、ライブをひとつの楽しみに学校や仕事の課題を乗り越えているという人が、少なからず私以外にもいるということがわかった。ライブに着ていくファッションにも気を遣うという事実は非常に興味深いものであり、ライブを一種のお祭りのような感覚で捉えていると言っても過言ではない。アーティストによってライブの魅力は様々であり、ライブが最もそのアーティストの良さを引き出せるものなのではないかと考える。エンターテインメントを通して人々にやる気やエネルギーまでをも与えてしまうアーティストの素晴らしさに改めて気づかされた。その背景には、アーティストひとりひとりの努力があることは言うまでもない。その努力によって最高のステージが出来上がり、人々に幸せや活力を与えるという循環は、非常に夢があるものだと感じた。ライブに限らず、“余暇”というと、単なる遊びというイメージを持ってしまいがちであるが、学校や仕事などで溜まったストレス発散の場でもあり、生きていく上で必要不可欠なものであるということがわかった。人それぞれ“余暇”の楽しみ方は異なるが、“余暇”を楽しむことは、人生を豊かにする一つの手段なのである。