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武藤紫帆「東京ディズニーリゾートにおけるテーマパーク事業」

 

1.ディズニーに魅了される私たち

私は、もちろんディズニーのキャラクターや映画が好きであるが、特に東京ディズニーリゾートという「場所」が大好きである。まるで自分が夢の世界にいるような非日常性をその場所では感じることができ、大人になった今でも子供のころから変わらないワクワク感がそこにはある。どんな人でも楽しめて、幸せになれる空間。そんな空間づくりができる東京ディズニーリゾートが人々の余暇行動に挑戦していった戦略と、また、もともとはアメリカのテーマパークであるディズニーランドが日本で人気を博し、そして東京ディズニーリゾートという日本独自のテーマパークへと成長していったその成功と今後の課題について考察していく。

 

 

2.東京ディズニーリゾートとは

 東京ディズニーリゾートは東京ディズニーランド、東京ディズニーシーといったテーマパーク施設、パークに隣接したディズニーホテル、東京ディズニーリゾート・オフィシャルホテル、イクスピアリ、ボン・ヴォヤージュという商業施設、東京ディズニーリゾート内を運行するディズニーリゾートライン、そして舞浜アンフィシアターと呼ばれる多目的ホールから成る。ゲストの様々なニーズに答えてそれぞれの施設が様々な役割を果たしている。

 

 

3.なぜ舞浜なのか

 特に、東京ディズニーランド、ディズニーシーの2つのテーマパークは年間来場者数1000万を開園当初からキープし続けており[i]、日本国内の他のテーマパーク施設と比べて、1人勝ち状態の来場者数を誇っている。その理由の一つに、都心から近いという立地条件の良さが挙げられる。実際に、地域別来園者比率を見てみると全体の約6570パーセントが関東圏内からの来園者数を占めている[ii]。実は、このディズニーランドを創るにあたって、当初の予定では今の千葉県浦安市舞浜ではなく、富士山のふもとに建設しようとしていた。[iii]一見、日本のシンボル富士山を背景にすることによってより日本らしいテーマパークになると思われるだろうが、ディズニーランドが持つコンセプトには合わない、むしろ周りの風景が見えてはいけないという理由から、当時では全くの未開の地であったこの舞浜という地が選ばれたのである。

 

 

4.年間来場者数1000万人をキープし続ける成功の鍵

一度はパークに来園した人なら感じたことがあるだろうが、ディズニーランド、ディズニーシーは非日常性をコンセプトにパーク作りを行っている。例えば、トイレに鏡がない、パーク内に時計がない、敷地内から外部の風景(高層ビルなど)が見えないように周りを囲っているなどといった工夫が施されている。だから、パーク周辺にあるホテルはすべて12階以下建てと決められている。これらは、ゲストが鏡に映る自分の姿や時計で時間を見たり、そしていつも見ているような周りの風景によって現実世界に引き戻されてしまうのを防ぐためである。また、パーク内には落葉樹がない。ディズニーランド、ディズニーシーは夢の国というコンセプトを持っているので、桜のように、春に花が咲き、夏には青々とした緑、秋には葉っぱが散って、冬には枝だけ・・・という時の移り変わりを感じるものはふさわしくないとされている。

 

これだけ人気のディズニーランド、ディズニーシーなので、待ち時間の長さが短所として挙げられる。長期休み、GW、クリスマス時期になると人気のアトラクションでは最低1〜2時間待ちなど当たり前である。しかし、そんな短所をも長所に変えてしまうのがディズニーの力である。ゲストの行列を長く感じさせないように何回も折り返しをつけ、行列をジグザグに作ることによって、まるで進んでいるような気持ちにさせるという工夫を行っている。また、そのアトラクションがあるエリアに合わせた音楽が流れていたり、並びながら隠れミッキー(ミッキーマウスを模した小さなミッキーマークのこと)を探すなどして楽しむことができるので、ゲストは長時間並んででもアトラクションに乗りたがるのである。

 

また、日本のディズニーランド、ディズニーシーで最も特徴的で、世界に誇れる点は徹底したキャスト(従業員)の教育である。日本人らしい細かな気遣いや、素晴らしい接客態度もテーマパーク作りの大きな要となっており、東京ディズニーランド、ディズニーシーでは95%以上のリピーター率を誇っている。この「リピーター率」という言葉はテーマパークを運営する上でとても重要なポイントである。どんなに良いテーマパークでも1回行けば良いという考えや、何回か行くうちに飽きてくることがある。しかし、東京ディズニーランド、ディズニーシーではその問題に対して、開園当初からアトラクションを全て揃えるのではなく、徐々に増やしたり、新しいショーの展開などを行って、「テーマパークは生き物である」「永遠に完成しない」をモットーに日々進化し続けることによって、高いリピーター率を獲得することに成功しているのである。

 

 

5.ディズニーの魔法

 ディズニーの世界に子供の頃親しんだ世代が親になり、自分たちの子供もディズニーの世界に連れて行ってあげたいと思うようになる。彼らは子供を通して自分自身が子供の世界に、郷愁を感じる年齢になったのである。 社会が多様化、専門化し、語るべき共通の話題が少なくなる中で、ディズニーの世界は安心して語れる話題の一つとなっていたのではないだろうか。大人たちは当時に限らず、現在も、今働いている現世に疲れを感じ、これから社会に出る青年たちもそんな大人になることを嫌がる。いつでも、心の中で「子供の頃に戻りたい」と叫んでいる大人は少なくないであろう。一時的であるとはいえ、大人をやめることができるディズニーランドに人気が集まるのも、自ずと納得できるのではないだろうか。当然、「ディズニーランドに行って、夢や幸せを味わいたい」と思うのは、大人だけではない。子供が親に「ディズニーランドに連れてって」と頼むことも多いだろう。 その時、多くの親は地理的な条件を別にすれば、レジャー施設としてディズニーランドは悪くないなと思うだろう。自分たちが子供の頃から親しんできたものであるから「ディズニーなら安心」という気になってしまう。ディズニーは健全でかつ家族ぐるみで楽しめる娯楽というイメージが、その名前を聞くだけで浮かんでくるようになっている。ディズニーが作り上げたこのイメージこそ、ディズニーランドの最大の武器であり、それがディズニーの魔法ともいえる。私たちはそのような魔法にかかりながら、この夢のような空間で日常の柵から逃れようとするのである。それこそ人々が余暇を過ごす醍醐味と言えるのではないだろうか。

 

 

 



[i] http://www.olc.co.jp/tdr/guest/ オリエンタルランド「入園者数データ」(20127月現在)

 

[ii] http://www.olc.co.jp/tdr/guest/profile.html オリエンタルランド「ゲストプロフィール」(20127月現在)

 

[iii] 「海を越える想像力」 加賀見俊夫、講談社、2003