120710murakawas

 

村川静香「青森ねぶた祭りを本当に楽しむために」

 

青森ねぶた祭りとは、青森県青森市の伝統的な祭りである。曜日に関わらず、827日の間に開催され、1980年には国の重要無形民俗文化財に指定された。青森ねぶた祭りは七夕様の灯篭流しの変形と言われているが、起源は定かではない。七夕祭りとは77日の夜にけがれを川や海に流す行事であるが、それと同様にねぶた祭りも7日目にはねぶた人形を川や海へと流す習わしがある。ねぶた祭りの始まりは、1593年京都にて津軽為信が秀吉候の御前で「津軽の大灯籠」を紹介したのがきっかけであり、それ以後年中行事となった[1]

 

 現在では国内だけでなく海外からの観光客も多く訪れるようになり、青森県内の経済効果は約497億円[2]である。その内訳は観光客の消費支出、主催者経費(広告宣伝費、会場経営費など)、参加者費(衣裳費、飲食費など)である。

 

 このねぶた祭りに参加するにあたっていくつかマナーがある。しかしそれを無視して傍若無人な振る舞いをする者たちがいる。彼らは指定されたハネトの衣装とは異なる黒装束で参加しており、それがカラスのように見えることから「カラスハネト」、または「カラス族」と呼ばれる。彼らの行為はねぶたを運行する上で非常に困ったものである。

 

今回はねぶた祭りの観光面におけるアプローチと祭りにおけるマナーとを踏まえて、青森ねぶた祭りを楽しむことができるよう考察していく。

 

 

1.青森ねぶた祭りと観光

 

 青森ねぶた祭りは上記でも述べたように、国内だけでなく国外からの観光客も多く訪れる祭りである。以前私が参加した時も、県外の人や海外の人が多く見られた。そのためねぶた祭りの振興に市の観光業も力を入れており、青森市のホームページでもねぶた祭りについて取り上げ、さらに青森ねぶた祭りのオフィシャルサイトも存在する[3]。そこではねぶた祭りに関する基礎知識、運行日やスケジュール、観覧席の購入案内、制作風景、出陣ねぶたの紹介などの閲覧、ねぶた囃子の視聴ができるようになっている。

 

 ねぶた祭りの時期が近くなると青い海公園内に「ねぶたラッセランド」が作られ、そこでその年に出陣する大型ねぶたの制作が行われる。青森市ではより多くの観光客にねぶた祭りの魅力を伝えようと、ガイドがラッセランド内で青森ねぶたの歴史や制作工程、祭りの仕組みなどの案内を行っている[4]。また2011年には青森市文化観光交流施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」を建設された[5]。そこではねぶたの歴史や過去に賞を受賞したねぶたの紹介を見ることができ、金魚ねぶたの制作体験や初心者向けのねぶた囃子の体験教室も開かれている。他にもねぶた関連のグッズや市の工芸品や物産の販売も行なっていたり、カフェ・キッチンでは市の特産品を使用したメニューなどを中心に青森の食文化や食材を紹介している。そしてワ・ラッセはねぶたの魅力を観光客に伝える役割の他にも郷土芸能やコンサート(ねぶた囃子の生演奏)など市民活動の発表の場としても利用可能である。

 

このように、観光面における青森ねぶた祭りへのアプローチは積極的なものであることがわかる。そのため観光客が絶えず毎年訪れると考えることができる。ねぶた祭りだけでなく青森のことを他県や海外の人に知ってもらうきっかけにもなっているとも考えられる。

 

 

2.参加する上でのマナー

 

ねぶた祭りに参加する上でのマナーがいくつか存在する。青森ねぶた祭りのオフィシャルサイトで出されている参加方法[6]としては、正装を着て運行スタート前までに運行コースに待機しているねぶたの団体へ入る、その団体に所属していなくても参加可能で事前登録や当日の受付も必要なく、正装を来ていれば誰でも自由参加できる、というものである。

 

それに加えてハネトとしてのルールがいくつかある。同じく青森ねぶた祭りのオフィシャルサイトで挙げられているハネトのルール[7]とは、みんなが楽しめる明るい祭りにする、ねぶた出発30分前までに待機場所に集合する、花笠を被って正装で参加する、運行委員の指示に従う、ねぶた囃子と関係のないホイッスルの持ち込みはしない、行列の中で花火の打ち上げや爆竹、一升瓶の持ち込みや空き缶の投げ捨ては危険なのでしない、運行中の逆戻りや途中からの参加はやめる、消防車や救急車が出勤した場合は速やかに道路を開ける、というものである。ハネトの衣装に関しては、青森市内のデパートなどで購入でき、貸出もしている。

 

このようにマナーが存在するが、それに従わないカラスハネトが存在する。彼らは正装ではなく黒装束を身に纏い、マナーを無視した傍若無人な振る舞いをするのである。青森県迷惑行為等防止条例[8]の第2条、危険器具等における迷惑行為の禁止、の制定の理由で違反の例[9]として、カラスハネトが一升瓶を振り回したり、暴走族風の旗を振り回したり、花火を人に向けて発射する、ということが取り上げられていた。他にもこの条例ではカラスハネトを違反の例として取り上げている。このことからもわかるように、彼らは伝統的なねぶた祭りにおいて迷惑な存在であると言える。

 

カラスハネト対策として、1か所の出発地点からねぶたが順次繰り出していく吹き流し方式であったねぶたの運行方法を、2001年からは一斉スタート一斉解散方式に変えている。そうすることによってカラスハネトが運行の途中で入り込んで邪魔することは無くなるのだ。さらに警官を多数配置するなど徹底した対策をとっている。それらの対策等により、喜ばしいことに現在カラスハネトは減少傾向にある。

 

 

3.祭りを本当に楽しむために

 

 青森市はねぶた祭りの振興に対して積極的であると考えられる。それと同時に青森ねぶた祭りという国の重要無形民俗文化財を守るためにも積極的であると考えられる。青森県迷惑行為等防止条例の他にも青森ねぶた保存伝承条例[10]が制定されており、正しい姿で保存、伝承していくことに努めていることがわかる。

 

 青森ねぶた祭りを本当に楽しむためには、正装で参加するなどしてマナーを守る他にも、上記で述べたことも含め、事前に青森ねぶた祭りのことを下調べしておくとよいであろう。そのために青森ねぶた祭りのオフィシャルサイトを見て学ぶだけではなく、ラッセ・ランドへ足を運んでガイド案内を受けたり、ワ・ラッセにて様々な体験をしたり歴史を学ぶことによって、実際に青森ねぶた祭りに参加したときにその魅力を身をもって理解し、楽しむことができるだろう。

 


 



[1] 青森ねぶた祭実行委員会事務局(社)青森観光コンベンション協会「ねぶたの由来・変遷」(20127月現在)http://www.nebuta.or.jp/kiso/yurai/index.html

[2] (株)荘銀総合研究所「東北6大祭の経済効果」(20127月現在)http://www.f-ric.co.jp/report/research/2007/festival0822.pdf

[3] 青森ねぶた祭実行委員会事務局(社)青森観光コンベンション協会「青森ねぶた祭オフィシャルサイト」(20127月現在)http://www.nebuta.or.jp/index.htm

[4] 青森市HP「青森市 –Aomori City-」(20127月現在)http://www.city.aomori.aomori.jp/view.rbz?nd=139&ik=1&pnp=137&pnp=139&cd=2099

[5] 青森市文化観光交流施設HP「ねぶたの家 ワ・ラッセ 青森市文化観光交流施設」(20127月現在)http://www.nebuta.or.jp/warasse/index.html

[6] 青森ねぶた祭実行委員会事務局(社)青森観光コンベンション協会「ハネトの参加方法・ルール」(20127月現在)http://www.nebuta.or.jp/sanka/2012sanka.html

[7] 青森ねぶた祭実行委員会事務局(社)青森観光コンベンション協会「ハネトの参加方法・ルール」(2012年月現在)http://www.nebuta.or.jp/sanka/2012sanka.html

[8] 青森市HP「青森県迷惑行為等防止条例」(20127月現在)http://reiki.pref.aomori.lg.jp/reiki_honbun/ac00121831.html

[9] 青森県警察HP「青森県迷惑行為等防止条例制定について」(20127月現在)http://www.police.pref.aomori.jp/keimubu/kouhou/jyouhou/3%20seian_t.pdf/1.130330%20meiwaku_bousi_jourei.pdf

[10] 青森市HP「青森ねぶた保存伝承条例」(20127月現在)http://www.city.aomori.aomori.jp/soumu/reiki_int/reiki_honbun/ar18002541.html