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川口優「青春18きっぷを利用した余暇とその課題」
1.電車での旅にお得な「青春18きっぷ」
私たちが日常よく利用する交通手段のひとつとして、電車での移動がある。私は長期休暇中など、時間に余裕のあるときに地元の新潟に帰省する場合は、決まって電車を利用している。片道約6〜7時間かかり、その間に乗り換えを4回する。これは決して楽な手段とはいえず、乗り換えのために走らなくてはいけないときもあるが、景色の移り変わりを眺めたり、考え事をしたりなど、私にとって有意義な時間となっている。
このことに関連して、より便利で有意義な旅のためにはどういった手段が考えられるか、ということに興味をもったのがきっかけで、研究テーマとして、電車での長旅に便利でお得な「青春18きっぷ」に焦点を当てていきたいと思った。電車利用者にとって、18きっぷは使い方次第では格安で、とても便利なものになる。しかし一方で、そこにはまた課題もあるのではないかという疑問を自身の経験のなかで感じたので、この点について考察していきたい。
本文の構成としては、まず18きっぷについての概要と自身の経験を示したあと、そこから気付く18きっぷの弱点を挙げていこうと思う。さらに、アンケート調査の結果からわかる周囲の人たちの意見や問題意識を取り上げ、18きっぷの今後の課題について考察を述べていくという流れで論じていきたい。
2.「青春18きっぷ」の使い方とその現状[1]
日本全国のJR線の普通列車が乗り放題の乗車券で、主に学生などの春季・夏季・冬季の長期休暇期間を利用期間として販売されている。その名前から誤解する人が多いようであるが、年齢に関係なく誰でも利用できる。その由来としては、高校生や大学生の青春時代に鉄道旅行に親しんでほしいという願いがあったからだといわれている[2]。5回分(1回分2,300円×5=11,500円)を1セットとして1枚の切符になっていて、切り離してばらばらに使うことはできない。「1人が1日乗り放題」=1回の利用になる。利用期間内であれば、1人で5日分乗ることも、5人で1日乗ることもできる。また18きっぷは、発売開始から20年以上が経ち、過去に一度値上げがされている。しかし、その売り上げは毎年50万枚以上にのぼり、学生を中心とした若者だけに留まらず、幅広い年齢層の人たちから指示を得ている。この切符の特長は、とにかく安いことにあるといえ、遠くに行けば行くほどお得になる。
3.実体験から見えた18きっぷの弱点
冒頭にも述べたが、帰省時に時間に余裕のある場合は、私は決まって電車を利用する。宇都宮〜柏崎(新潟県)まで片道5,250円、学割を利用しても4,200円かかる。18きっぷが5回分1セットだけではなく、2回分1セットでも売っていれば往復分だけとして使えるので、そうであればとても便利だろうと毎回思う。
また、春休み期間中に友人と9人でディズニーランドへ行ったときに、宇都宮〜舞浜間の往復分の電車移動に18きっぷを利用したことがあるが、その際にいくつか不便に感じたことがあった。まず、自動改札を通らずに駅員のいるところへ提示しなければならないことである。利用者の多い駅では、そこに並ばなくてはならないこともあるのは少し面倒だと感じた。次に、18きっぷの1回分は0時から翌日の0時までが有効であることについて
である。帰りの電車に乗っている途中で翌日の0時になってしまい、宇都宮駅に着いたときに1人1,000円近く追加料金を徴収されてしまった。また、人数が9人で18きっぷを2セット使用したので、1回分余ってしまったことである。ちょうどそのときは使いたい人が余りを買い取ったが、利用期間が限られているなかで5回分1セットをきれいに使い切ることはなかなか大変で、計画性が必要であると思った。
4.アンケート調査実施とその結果が示す問題意識
青春18きっぷについて学生を対象にしたアンケートを実施し、40人の回答を集計した。アンケートは、@18きっぷの存在を知っていたか、A利用したことがあるか、Bどのように利用したか、C利用する上で不便だと感じたことはあったか、D今後利用してみたい、または再び利用していきたいと思うか、Eその他意見、といった質問で構成した。
@に関してはほぼ全員が「知っている」と回答し、Aでは40人中16人が「利用したことがある」と答えた。Bについては、長期休暇期間中の東京首都圏や関西方面への旅行で友人と共有して利用するという回答が目立った。Cでは18きっぷを利用したことのある16人全員が、不便と感じた点について記入していて、大きく以下の4つの点について指摘があった。5回分1セットになっているので使い切りづらい、特急には乗れなく鈍行なので遅い、自動改札を通れない、1回分が1日と限られているので時間を気にしなくてはいけない、といった意見が挙がっていた。一方で、Dについては、利用したことがない人も含めたほぼ全員が、安くてお得だからというのが主な理由で「今後利用していきたい」と回答していた。最後に、Eでは「安くてお得」といった高評価がある一方で、「1回分ずつのばら売りにしてほしい」、「期間を延ばしてほしい」、「仕組みがいまいちよくわからない」という見や要望も多くあった。
5.「青春18きっぷ」の弱点から見える今後の課題とその展望
18きっぷの弱点として、実体験で感じたこととアンケート調査の結果から分かったことをこれまでに述べてきた。なかでも、5回分1セットという使い切りづらさ、1日という制限のなかで時間を気にしなくてはいけないこと、普通列車しか利用できないことといった点が弱点として挙げられる。使い切りづらいといった点に関して、実際にはネットのオークションや金券ショップで使いかけの18きっぷが多く取引されている。このことからも、よりコンパクトで気軽に利用できるような18きっぷの形態が利用者たちに求めてられていることがわかる。また、お得なきっぷはほかにも多数あり、それらやほかの交通機関をうまく組み合わせれば、18きっぷの使い方は広がっていくだろう。しかし一方で、18きっぷの仕組みは多少複雑であり、よく理解できないままの状態で利用する人もいることをアンケート調査でも知ることができた。販売側もその仕組みを変えないとしても、利用者へより分かりやすい情報やサービスの提供を行う必要性があるのではないかと思う。
18きっぷは格安でお得だが、その反面、弱点としての不便な部分もあると述べてきた。利用者がその仕組みをよく理解しうまく活用できれば、「青春18きっぷ」は旅という余暇を過ごすなかでとても有用なアイテムであるといえるだろう。
[1] 格安旅行ナビ「2012年・春の青春18きっぷまとめ」
(2012年7月現在)
JRグループ「青春18きっぷ(夏季・冬季)の発売について」を参考にまとめた。
http://www.jreast.co.jp/press/2012/20120605.pdf (2012年7月閲覧)
[2] マイナビニュース 「もっとおトクに! 賢い鉄道旅行術」(2009年12月掲載)
http://news.mynavi.jp/series/tips/011/index.html (2012年7月閲覧)