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伊藤楓「スターバックスという空間で」

 

1.スターバックスとわたしたち

 余暇を考える時に、余暇自体がどういったものを指すのか定義する必要がある。ここでは本業や仕事以外の自由な時間とする。(本業=学業、本職など。仕事=アルバイト、パート)アルバイトやパートを余暇活動に含めない理由として、好きでそのような時間を割いているかもしれないが、就業中は仕事である以上自分の好き勝手に活動出来るわけではない

(自由ではない)ためである。

 余暇活動において私自身何をしているかと考えたときに、大好きなスターバックスで過ごしていることが多いことに気が付いた。買い物のついでに、読書をしに、新しいフレーバーを試すために、グッズを買うために。ある時ふと周りを見渡すと、私だけではなく友達や家族、カップルで会話を楽しんだり私と同じように過ごしたりと他にも様々な人がいる事に感動を覚えた。スターバックスを利用する人はそのブランド性や落ち着いた空間、商品などに惹かれ愛着を抱いているように思える。少なくとも私はそう感じるため利用する。よって様々な年代から親しまれるスターバックスの取り組みについて調査することにした。

 

2.生活と密着した事業

スターバックスとは、1971年にアメリカ合衆国のシアトルで開業し世界規模で展開しているコーヒーチェーン店である。現在は世界43か国にまで発展し、日本国内だけでも955店舗を展開している。駅、SA、空港、デパートのなかで見かけることが多いが工夫を凝らした店舗も中には存在する。それはドライブスルーやテラスを併設している店舗、オリジナルフードのある店舗、書店と併設している店舗、1ブラックエプロンが実演でコーヒーを淹れ、コーヒー豆や抽出器具を豊富に取り揃えたワンランク上の店舗などだ。これらは私たちの生活に密着していながらも魅力的な空間として存在しているように思われる。

 

スターバックスは事業内容としてコーヒーストアの経営、コーヒー及び関連商品の販売と定義している。季節ごとのしいメニューやグッズの変更・追加(平均して1か月〜2か月のサイクル)2地域限定のタンブラーの販売はスターバックスの人気の秘訣だと考える。特にスターバックスのタンブラーはデザインが豊富でこれまでに数多く販売されている。タンブラー購入時には好きなドリンクをサイズ関係なく1杯無料でオーダーできるチケットが付き、タンブラーを持参するたびに20円割引になるためファンにとっては非常に魅力的である。それがリピーターの獲得にも繋がっているとも考えられる。

 

他にも各店舗では様々なイベントを開催している。例えば季節おすすめのドリンクやフードを提供したりコーヒー豆のローストや産地の話をしたりするテイスティングパーティー、各店舗のオープンを記念した周記念イベント、ミュージックライブ、アート展などである。またコーヒーセミナーといって、よりおいしいコーヒーの淹れ方の講座を有料で行っている。アイスコーヒー、フードペアリング、エスプレッソ、ハンドドリップ、カスタムブレンドなどコーヒーの種類事に内容や日程が分けられておりブラックエプロンから本格的に楽しく学ぶことができるスターバックスならではの魅力的なイベントだ。

 

3.心地いい接客

 工夫を凝らした事業以外に様々な年代から親しまれている要因を考えたとき、一番に思い付いたのが接客だ。私自身も飲食店でアルバイトをしていることから接客には気を使うし、出掛けに行った時も何よりも接客を重視してしまう性質がある。

 

店内では勉強をする人もいれば読書をしたりパソコンに向かったりする人もいる。中には長い間おしゃべりを楽しむ人もいるだろう。実際私も長居することが多いがそんな時でも店員の温かく迎え入れてくれる接客は、気持ちの良い笑顔や一つ一つの声掛けなど細かな気遣いから汲み取ることが出来る。どんなに忙しくても安心して利用できるその接客には心地よさを覚える。それに加えて行く度に学ぶことの多い接客態度はどのようにして生まれるのか非常に気になった。実際にスターバックスでアルバイトをしている友人にいくつかインタビューを行った。

 

・スターバックスとしての接客の方針はどのようなものか

 「お客様の日常に心豊かで活力をもたらす瞬間を創り出す」を目標にしている。これは「3Our Starbucks mission」という6つの柱をベースにしている。

 

・個人的に接客で心掛けていることは何か

 お客様のサインを「察する」。これはパートナー同士にも言えることである。例えば何か探していそうなお客様を見かけたら「何かお探しですか?」「プレゼントですか?」というように伺ってみる。「また来たい!」と思っていただけるように、お客様との繋がる瞬間を共有できるように心がけている。

 

・今まで働いていた中で接客において印象に残っていることは何か

 自分の勧めたドリンクを美味しいと言ってくれたり、ちょっとした会話から仲良くなれたりしたこと。ごちそうさまです、また来ますという言葉も大切にしている。

 

・なぜ従業員同士をパートナーと呼ぶのか

 MissionOur Partnersにもあるように、新人さんもベテランさんも全員をパートナーと呼ぶことで多様性を受け入れて、働きやすい環境を作るため。

 

・パートナーと呼ぶことによってどのような影響があるか

普段意識することは少ないが、パートナーと呼ぶことで親近感が沸く。他店の人が来た時に「パートナーだから!」と言われて親近感が沸き緊張が解けた。

 

 以上のような質問から心地いいと思っていた接客が、お客様とより近い存在でありながらさりげなくも心地いい接客というように私の見方が変わった。しつこくない接客だからこそ、自然と店員と話せる安心感。従業員同士パートナーと呼ぶことで、楽しく働くことができ接客にも余裕ができるのではないか。

 

4.魅きつけるキャンペーン(PR活動)

 飲食業であるとはいえ企業である以上、売上=顧客の獲得は絶対だ。いくら事業に工夫を凝らし丁寧な接客を行っていても、これらを売り込む宣伝がなければより多くの顧客収得は難しい。スターバックスに限らず最近では、FacebookTwitterを利用した広告が目立ち最新情報やおすすめのメニューの紹介、期間限定クーポンなどを配信している。特にTwitterの拡散力は大きく、リツイート、返信、閲覧の数でその効果を測ることも可能だ。Facebookでは今のところクーポンの配信は行っていないようだが、海外の店舗でしか使えないクーポンに惹き付けられて「いいね」ボタンを押してしまったユーザーが多かったという例もある。

 

こうしたSNS以外にも雑誌を出版しその中にメッセージカードにもなる無料クーポンを特典として付けるといった例も見られた。若者向けのSNS、誰でも手軽に手に取ることが可能な雑誌の販売など、あらゆる面からのPRは人々を魅きつけている。スターバックスファンの私は飛びつくように情報を欠かさずチェックするが、情報を知らない人にもどんどん繋がってみんながお得になることは私にとってもうれしい限りである。メッセージカード一つにしても、スターバックスのお洒落なデザインにメッセージを書くことが出来てクーポンも付いているとなると二重の喜びが沸いてくるのではないだろうか。

 

5.繋がり

 以上から、スターバックスという空間の中であらゆるもの同士の「繋がり」が見えてきた。個人とスターバックス、従業員とお客様、プライベートに関わる(個人と個人の間の)スターバックス。目立たないようでしっかりと腰を据えて私たちを心地よくさせてくれるスターバックスの取り組みは、私たちの余暇空間に何らかの形で繋がっている存在だとわかった。

 

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1スターバックスのバリスタが身につけるエプロンのひとつ。コーヒーマスターの中でも、より豊富な知識を蓄えた者に与えられるエプロンとされている。

2主要都市や観光地、空港などを合わせて13種類のデザインがある。タンブラーだけではなくマグカップも販売している。(2012710日現在) 世界規模ので展開しているため、海外にも多くの国や地域で独自のタンブラーがある。

3人々の心を豊かで活力あるものにするためにスターバックスが定めている6つの原則。詳細は公式HP参照のこと。

 

【参考資料】

スターバックスコーヒージャパン 公式HP

http://www.starbucks.co.jp/ (201272日 閲覧)