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新垣花苗「余暇におけるカフェ〜その魅力と可能性〜」

 

1.    カフェをテーマに選んだ理由

 

 私は、余暇をカフェで過ごすことが多い。一人暮らしを始めると同時にできたたくさんの時間を使い、遠くのカフェを探しに出かけ、長い時間居座っていたり、カフェをはしごしてみたり。カフェは普段の生活から離れて、落ち着けるゆっくりとできる場である。本を読んだり、絵を描いたり、友達とおしゃべりをしたり、ぼーっとしたり。カフェは空間的に、独特の雰囲気をそれぞれが持っており五感が刺激されるので、新しいアイディアを考えるときにもよく使う。また、店員さんとの話を楽しみに、カフェを訪れることもある。私にとってのカフェは、魅力的な空間であり、余暇の時間やそれ以外の時間をも豊かにしてくれる大切な要素である。また、カフェは人々の憩いの場となり、安らぎの場となる。宇都宮にもたくさんの素敵なカフェ[1][2]があるが、その雰囲気や形態はさまざま。広々とした明るいガラス張りのカフェや、薄暗く落ち着いた雰囲気の小さなカフェまで、そのあり方は多種多様。その中から今回私が焦点を当てたいのは、「カフェ」としての機能だけでなく、さまざまな要素・目的を組み合わせたカフェである。事例を紹介し、新しいカフェ形態の提案をしながら、カフェの持つ魅力と可能性を探っていく。

 

 

2.    「さまざまな要素・目的を組み合わせたカフェ」とは

 

 「さまざまな要素・目的を組み合わせたカフェ」とは、固定した店舗を持ったお店の名前というより、人が集う空間の名称として「カフェ」と呼んでいるものとして定義づける。そこでは、お客さんはそれぞれ好きなことをするというよりも、同じ目的を持った人たちが集まり、珈琲やお菓子を食べながら皆で同じことをしたり交流したりする。オシャレな印象や飲食による場の和みやすさといった、カフェの持つ魅力を活用することで、人々を集めるという効果をもたらしている。また空間においては、一般のカフェのようにお客さん同士のつながりは生まれないようなテーブルの配置や、椅子の向きになっているのではなく、そこに集まった人同士の関係づくりを手助けするような、全体で一つのまとまりとして交流できるような空間が多い。こういった既存のカフェの形態にとらわれない点は、カフェの可能性を示していると言える。

 

 

3.    事例紹介1『読書カフェ』

 

 今年の4月に栃木県日光市で開催されたチャリティ読書カフェ[3]は、友人の知り合いが開催しているということで、その紹介で参加することになった。読書を通じた仲間づくりや、今まで興味を持たなかった著者や分野の本と接することにより、参加者の教養を深めることなどを目的としている。開催場所は一般的なカフェを使うのではなく、古民家のような建物の畳が敷かれてある一室で行われた。内容は、持ち寄った本の中でそれぞれが心に残った部分を読み上げたり、印象に残ったことなどを発表しあった。参加者には、サラリーマンや主婦、アーティスト、私のような学生まで様々な世代の人々が集まっていた。それぞれ持ち寄った本も異なり、詩集や小説、ビジネス書から絵本まで、多種多様であった。

 

私はこの「読書カフェ」を通して、素敵な本や人と出会うことができた。「読書カフェ」は、人と人、人とモノをつなぐ場所になり、その出会いによって生まれる刺激や新しい発見、気づきを与えてくれる場所になった。それに加えて、人を和ませる、落ち着かせる、気軽に参加できるといった「カフェ」の持つ魅力も十分に発揮されており、よい空間が作れていると感じた。

 

 

4.    事例紹介2『キャリアカフェ』

 

 宇都宮大学峰キャンパスの校舎の一角にある、キャリアカフェ[4]は、就職活動や卒業後の進路を考える、もしくは調べるという共通の目的を持った人たちが集まる場所となっている。職種、就職関係の資料はもちろん、日本経済新聞やPRESIDENT、日経ビジネスといった雑誌、大学院募集要項も置いてある。予約すれば、キャリアアドバイザーやキャリアカウンセラーに相談にのってもらうこともできる。訪れる人のほとんどが一人か、二人である。学校が開いている間は開いているため、休み時間や空きコマなどに、学生が自由に使うことのできる場所となっている。

 

「キャリアカフェ」は特定の情報を得るという限定された目的のためのみにある。しかし、ただの資料室ではなく、ソファを置き、珈琲や紅茶を飲めるようにすることで、自ゆっくりと調べることができ、また自由に出入りできる空間となっている。これは、カフェの持つ魅力を活用した結果である。

 

 

5.    『森カフェ』の構想

 

 新しいカフェの構想として「森カフェ」を紹介する。これは以前、私が森林について学んだ時にグループ活動の一環として考えたものである。「森との関わりを感じる」ことを目的とし、森と人、森に興味がある人同士がつながる場となることを目指している。開催場所は森に触れ合うことができる場所。たとえば、実際に森の中を散策し、少しひらけた場所で、ピクニック感覚で珈琲を飲んだりお菓子を食べながらお話する。もし近くに森がなく、直接触れ合うことができなければ、山菜等を使った料理を作り、木のぬくもりが感じられる器を使って食べながらお話するのもいいのではないかと考えている。来てくれた人には、少しでも森のめぐみや癒しを感じてもらえるような空間にしたい。

 

 

6.    「カフェ」の持つ魅力と可能性

 

 「カフェ」には、人を集める魅力がある。カタチは異なっても、それぞれの持つ特色や雰囲気は来た人をよろこばせ、楽しませる。そういった魅力を活用し、「カフェ」としての場所だけでなく、何を目的とするか、どのような場所にしたいか、お客さんにはどうなってほしいか、という部分を変えることで、さまざまな空間を作り出すことが可能である。今回の事例のように、カフェは、人と人、人とモノをつなぐ場、また、何かを知ってもらう場、伝える場ともなりうる。むしろ、「カフェ」であることが付加価値となっているようなカフェが増えてきていることは、カフェの持つ可能性がさらに広がっていくことを示していると言える。

[5][6]



[1] 食べログ「栃木カフェランキング」(201279日現在)。http://tabelog.com/tochigi/0/0/lst/?LstCat=CC01&LstCatSD=CC010101&sa=%E6%A0%83%E6%9C%A8%E7%9C%8C&LstCosT=0&Cat=CC&LstCatD=CC0101&vs=1&sk=%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7&cid=top_navi1

[2] ぐるなび「宇都宮 カフェ」(201279日現在)。http://cat.gnavi.co.jp/x/ag/32/CATAC0270/CATGB210/p/10/1/

[3] レインメーカー「チャリティ読書カフェin日光5/12」(201279日現在)。https://www.facebook.com/events/258018237628625/

[4] 宇都宮大学キャリア教育・支援センター「センターの概要 キャリアカフェ」(201279日現在)。http://www.career.utsunomiya-u.ac.jp/center.html

[5] 朝日新聞社・VOYAGE GROUP「カフェとは−コトバンク」(201279日現在)。http://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7

[6] 他、私自身の経験による(201279日現在)。