120710Akutsum
阿久津美也「動画投稿サイトにおける問題点と今後の有用性について」
1、 どうして今、動画サイトがみられているのか
動画投稿サイトを利用すると、知らない事柄、特に固有名詞(流行のアイドル、曲など)を調べる場合には、文章のみのサイトや書物よりも明確に姿形を理解することが出来る点で便利である。また、単に「娯楽」として動画サイトを楽しむ人が増えてきている。最近は芸能人・政治家・あるいは一般人などの発表・発言の場としても使われ、新しい使い方が模索されているように思う。ここでは、世界中でよく見られているサイトYouTubeについての問題点を考えながら、そのような新しい使い方に着目して考えていきたいと考える。
2、 動画投稿サイトYouTubeの問題点
問題点としてまず挙げられるのは、やはり著作権の問題だろう。この問題はアメリカに拠点を置いているYouTubeだけでなく、他の国のどこの動画投稿サイトにおいても問題となっており、ジャンルにおいても映画・TVアニメ・TV番組・プロモーションビデオなど多岐に及ぶことが明らかになっている。[1] また、著作権の行使される楽曲がBGM音楽として使用されている動画や、MAD(またはMADムービー)と呼ばれるTVアニメや映画の一部を改編した動画も著作権侵害に当たる。こうして見てみると、著作権被害にあたる動画の定義というのはあまりにも広いことが分かる。さらに、もしYouTubeに探している動画の続きがなかったとしても、他の動画投稿サイトに移動すれば簡単に視聴することが出来てしまう。特に問題であるのは、このような違法の著作権侵害動画を目当てに動画投稿サイトを訪れる人々が利用者の大半を占めるという点だと考える[2]。
また、このような動画投稿サイトは無料であり、会員登録も必要ないため、中高生も簡単に利用することができる。確かに便利ではあるが、弊害として中高生がいじめや喫煙、その他問題行為を行っている動画を安易に投稿したために、非難のコメントが殺到(炎上)する、という事件が起きていることも忘れてはならないだろう。例として今年の5月24日、相模原市内の中学生が小学生とみられる児童に因縁をつけ、泣かせるまでの様子を撮影した、いわゆる「いじめ動画」がYouTubeにアップされているということが発覚し、関係の小中学校などに約450件の問い合わせや批判が殺到した事件について取り上げたいと考える[3]。この動画がYouTubeにアップされたのは5月の中旬のことであるが、それらは権利の差し止めが行われない限り、キーワードを検索するだけでいつでも見つけ出して視聴することが可能であり、真偽は誰にでも確認できる(現在はこの動画自体は削除されている)。また、そのような問題のある動画を見つけ出すのには、「2ちゃんねる」と呼ばれる大型掲示板の住民が一役買っていることも分かっている。彼らは常にTwitter、YouTube やその他のインターネットサイトからそのような話題性のあるトピックを見つけ、取り上げ、祭り上げることに長けている。この一連の流れはTVニュースにもなり、下手をすれば全国的にその名が知れわたり、最悪の場合当事者を自殺に追い込む可能性もある。中高生にも簡単に扱えるということは、このような被害をもたらしやすいということである。
3、 今後の有用性
上で挙げたように、動画投稿サイトにおいてはたしかにいくつかの問題点がみられる。しかし同時に、芸能人や政治家、また一般人が個人的意見を主張することのできる場として、動画投稿サイトは貴重な場である。例としてここでは、福井県福井市で6月17日に行われた脱原発デモ『いのちが大事 今なぜ再稼働?ふくいにあつまろうパレード』を挙げることとする。マスコミで放送されなかった数々の脱原発デモを、私たちは動画投稿サイトによって視聴することが出来る。そして、これらをインターネットの各種動画投稿サイトにおいてさらに投稿し、TwitterなどのSNSサイトのつぶやきに動画をリンクし、フォロワーに拡散してもらうことで多くの人の目に行き届き、共感を得たり反論したりすることが出来る。
また、動画を使って公式に商品を宣伝することも可能となっている。2012年6月23日に任天堂から発売となったニンテンドーDSソフト「ポケットモンスターブラック2・ホワイト2」においては、発売日前の早い段階から商品の魅力を伝える公式のPVが数回に分けてYouTubeに投稿された。今年の5月16日に投稿されたバージョンのPVにおいては、発売日を過ぎた6月26日の段階で200万再生を達成しており、この動画は商品の売れ行きに大きく貢献していると考えられる[4]。このように、商品をより理解してもらい、販売につなげるために、動画投稿サイトが活用されつつあることが窺える。さらに商品の売り上げ向上や知名度向上を図る企業・団体にとっての広告掲載の場として、YouTube 公式チャンネルが定着しつつある。YouTube 公式チャンネルとは、「YouTubeブランドチャンネルともいい、GoogleがYouTubeに500万円以上出稿した大口広告主に対して提供している特設チャンネル」のことを言う 。このチャンネルは料金こそ非常に高いものの、自社の製品や楽曲の動画を投稿し宣伝できるだけでなく、その動画に対して広告バナーを設置することができ、自社のHPに誘導することが可能である。また広告を受け取る側の人々としては、このチャンネルに登録することによってお気に入りの人物や企業、政党の最新情報をいち早く手に入れることが可能となり、双方にメリットのある場所となっている。
4、 さまざまな問題点の解決策
これからは上に挙げた問題点を改善するとともに、新たに生まれてきた使いみちを有効活用していくべきであると考える。著作権問題に関しては、「動画サイトの運営者は著作権管理団体と著作物利用に関する包括的契約を結んで著作物の利用に応じた著作権使用料の支払いや、著作権者による公式の動画アップロード」[5]を促していくことが重要であると述べられている。中高生の問題では、年齢によって動画の投稿を制限する、動画投稿サイトの危険性についての教育を整備するなどの手だてが考えられる。前者の例としては18歳以下の児童・生徒の動画サイトへの投稿を禁止すること、後者の例としては中学校や高校に動画投稿サイトの危険性を訴えかける人をお呼びし、講演会を開くであるとか、パソコンを使っての技術の授業などの際に、実際の事例の新聞記事や動画を見せて呼びかける、などが挙げられる。
著作権侵害を行っている投稿者も勿論問題であるが、著作権被害を受けている企業やTV局側においても、動画サイトの有用性に気付き、意見主張や商品宣伝に活用していけるような新たな視点を設けていくことが、今後の動画投稿サイト利用者にとっての幸せにつながると考える。
[1] 武蔵工業大学 環境情報学部 情報メディアセンタージャーナル 2007.4 第8号70
「動画共有サイトにおけるマルチメディア著作権問題の検討」吉松綾子・山田豊通
http://www.yc.tcu.ac.jp/~cisj/08/08_09.pdf#search='動画サイト 問題点'
(2012年7月現在)
[2] NTT東日本「動画共有サービスの裏側」てれこむWhat’s up?
http://www.ntt-east.co.jp/whats_up/36/02.html
[3] msn 産経ニュース「「おい、いてえんだよ」 ネットに児童を泣かせる動画投稿 相模原市の中学生聴取、友人の笑い声も」2012年5月24日 (2012年7月現在)http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120524/crm12052408330005-n1.htm
[4] YouTube「【公式】『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』紹介SPムービー」http://www.youtube.com/watch?v=lwhnt4ytE3k (2012年7月現在)