110622 八巻いづみ

 

Twitterから見る情報速度の変容と今後の情報』

 

 近年、TwitterFacebookMyspaceなどといったソーシャルネットワーキングサービスの普及により、情報の流れる速度がこれまでとは変化してきている。また、スマートフォンやiPadなどといったユーザインタフェースも年々進化を遂げ、これも情報速度の変化に多大な影響を与えているのではないかと考えられる。このようなインターフェースの変容や、情報を扱うツールといったものの変容によって、これまでの情報とこれからの情報はどのように変わってくるのであろうか。今回は、2011311日に起こった東日本大震災において、その真否に関わらず、膨大な量の「情報」が世に広まるきっかけとなった原因の1つであるとも言えるTwitterに主に焦点を当てながら、変わりゆく情報を我々はどのように扱っていくべきか、そして、どのように扱われていくのかということについて考えていきたいと思う。

 

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)についての定義は、広義的なものと狭義的なものに分類することができる。広義的な定義としては、社会的なネットワークをWeb上で構築することができるサービスのことである。この定義から考えると、コメントやトラックバックといった手段をとることができるブログなどのサービスも、ソーシャルネットワーキングサービスに含まれると考えることができる。狭義的な定義としては、人と人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型の会員制のサービス、もしくは、そのようなサービスを提供するWebサイトのことを指す。もともと、SNSは人とのつながりを重視していた点から、既存の参加者からの招待がないと参加できないというシステムをとっていたものが多かったが、最近では招待なしに誰でも自由に登録できるサービスも増えている[1]

 

 Twitterとは、自分専用の「ホーム」というページに、自分が「フォロー」した人物のツイート(呟き)がリアルタイムで見ることができるというシステムから成り立っている。その時々で自分が思ったことを140字以内で呟いたり、時には人の書いたツイートに対し、返信をしたりということが可能である。また、今現在何についてのツイートが一番多いのかということを検索することができるキーワード検索や、特定のトピックに関する投稿を、公式のTwitter検索から一覧して見ることができるようにするハッシュタグといった機能も備わっている。これらのことから考えると、Twitterというシステムは、上記で挙げた広義的定義、狭義的な定義のちょうど中間に位置づけられるのではないかと考えられる。

 

Twitterはそのリアルタイム性というシステム上、様々なメディアと連動がなされている。ここでは、ニッポン放送内の番組について取り上げる。ニッポン放送で201014日に放送が開始された『ミュ〜コミ+プラス』(毎週月曜日〜木曜日24時から放送)という番組は、ラジオ上で生放送で放送されている番組とは別に、番組の公式アカウントで行われるTwitter上の番組がある。生放送中のラジオ番組と同時に、番組公式アカウントにてパーソナリティと放送作家が番組内企画やその時々に起こった出来事等に関してのツイートをし、また、同時にハッシュタグ(#mc1242)を付けて投稿されたリスナーから寄せられたツイート等を番組内で紹介、反映している[2]。これをパーソナリティは「テキスト生放送」と呼んでおり、ラジオ番組とTwitterでの番組が同時に連動する「ダブルワイド方式」をとっている。この方式は、視聴者にとってもパーソナリティにとっても、反応がすぐに返ってくる、すぐに反映されるという点で利点になっていると考えられる。

 

東日本大震災が起きた311日には、Twitterにおけるツイートの数が約3300万件にのぼっていることがわかっている[3]。また、震災後1週間も、2500万件を越える日が続いていた。これは、電話がつながりにくい中で、ツイッターによる被害状況や避難所情報の確認、安否確認などにも数多く利用されたことも1つの要因であると考えられる。震災前の1日のツイートの平均数は1800万件であったことから考えると、2割以上増えているという計算になる。しかし、この数字は一体どこから発信されたものなのであろうか。311日以降、地震、および津波の被災地では停電が相次ぎ、携帯電話やパソコンといった電子機器の充電も不可能であったことから考えると、この数字は被災地以外の場所からのツイートであることが十分に考えられる。事実、ツイッターでは避難場所や救援物資等のツイートが数多く投稿されていたが、それらは被災地の人々にとっては「自分たちが知ることができなかった情報」であることが多数の新聞やニュースなどからわかっている。

 

Twitterは、リアルタイムで情報を得ることができるという点で、他のSNSより利便性が高い。しかし、そのリアルタイム性ゆえに、大きな問題を含んでいるということもまた事実である。まず、誰でも情報を発信できるというその容易さから、その情報の真偽に関わらず、一瞬にして多くの情報が不特定多数に流れ過ぎてしまうという点である。これは先日の東日本大震災が起きた際にも大きく取り上げられた問題でもある。また、同じような問題として、発信源が不明確なまま、その情報が拡散してしまうという問題もある。311日の震災時には、情報の出所がわからないまま、虚偽の情報が独り歩きしてしまったという事実も確かにあった[4]。だが、そのようなリスクがあることを差し引いても、情報の速報性が人々に与える影響は計り知れない。それは、震災時、「Prayforjapan.jp」が開設され、その翌日には秒単位で日本国内のみならず、海外からもメッセージがTwitter上に投稿されていたという事実からも想像することができる。

 

Twitterの強みは「リアルタイムで自分をフォローしている人に情報を伝えられる」ということであることは確かな事実であると考えられる。今現在、Twitterの使い方は人それぞれである。例えば、ブランドや店、アーティストの公式アカウントであれば、新作の情報やイベント等の情報を流すために利用しているし、他には、Twitterで同じような志を持った人を集め、何らかの運動をする人もいる。さらには、先述したような方式で、番組と同時連動し、視聴者の反応を逐一チェックするということに使われることもある。これらに共通することは「つぶやき」であると同時に「不特定多数の誰かに見られている」ということでもある。つまり、Twitterというソーシャルネットワーキングサービスは、ソーシャルライティングサービスであるとも言えるのではないであろうか。

 

去年と今年を比べて見ても、情報の流れる速度はまったく違うということは日々感じることである。Twitterというツールは情報の流し手であり、同時に受け手でもある。この情報速度の違いは、同時に、去年と今年では同じ「情報」という単語でも、最早別の種類の意味になるのではないであろうか。これまでの「みんなが知っている」情報から、「知らなくて当然」という情報が多数を占めてしまうかもしれない。Twitterの持つ情報の速報性とデータ量は、簡単に国境をも越える。だからこそ、自分に必要な情報の取捨選択、そして、情報に踊らされないための知識が必要不可欠になってくるのではないであろうか。

 

【参考文献】

・コグレマサト・いしたにまさき『ツイッター 140文字が世界を変える』毎日コミュニケーションズ (2009109)

・吉田尚記『ツイッターってラジオだ!~ナンバーワンツイッター番組のパーソナリティがつぶやくあなたの味方を増やす59の方法~』講談社 (201094)

 

【参考URL

Twitter

http://twitter.com/

・読売新聞オンライン『311日のツイート3300万件』(2011612日閲覧)

http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20110518-OYT8T00528.htm

・ニッポン放送『ミュ〜コミ+プラス』番組公式アカウント(2011613日閲覧)

http://twitter.com/#!/mc1242

 



[1] IT用語辞典 e-words 「SNSとは」(2011613日閲覧)

http://e-words.jp/w/SNS.html

[2] ニッポン放送『ミュ〜コミ+プラス』番組公式アカウント(2011613日閲覧)

http://twitter.com/#!/mc1242

[3] 読売新聞オンライン『311日のツイート3300万件』(2011612日閲覧)

http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20110518-OYT8T00528.htm

[4] 産経ビジネス『東日本大震災 ツイッターやSNS情報は? 出所見極め、発信は慎重に』(2011613日閲覧)

http://www.sankeibiz.jp/econome/news/110328/ecc1103280943004-n1.htm