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宇佐美 咲季 「ボランティアとシニアの余暇活動」

 

1.      余暇としてのボランティア活動

  私は現在、「Resource Network」という学生が主体となったボランティア団体の所属し、ボランティア活動を行っている。その活動の一環で、主にフェアトレード商品を取り扱った販売イベントによく出店するのだが、そこでの経験は今回私が「余暇」というものを考えるうえで比較的大きな影響を与えているのである。販売イベントはたいてい土日に行われ、訪れる客そして客に限らず出店者の年齢層も子供から大人までさまざまだ。商品の販売を通して、人との新たな繋がりを感じる瞬間は非常に多い。新たな人間関係を作ることが出来た時や、自分たちと同じ目的意識を持った人の話を聞いて視野が広がった時など、販売イベントを終えるたび、私は大きな満足感や喜びを感じる。このような経験をもとに、「余暇」と「ボランティア」を結び付けるに至ったのである。そもそも「ボランティア」という言葉の語源は、「自由意志」という意味を表すラテン語ボランタス(Voluntas) にある。つまり、他から強制されることなく自らの意志で行う自発的行動のことなのだ。そもそも余暇とは自分で自由に選んだ好きなことをする時間であるから、自らの自由意志で行う「ボランティア活動」は余暇の1つの分野に含まれるのである。加えて「ボランティア活動」は、それを通して社会との連帯感や自らの社会的存在感を得ることもでき、時には自己実現にも繋がる余暇である。

 

 2.シニアのボランティア活動

  先に述べた販売イベントにおいて、出店者のなかには、仕事を定年退職したような高齢者の姿も見られる。残された「余暇」を楽しむように、子供たちに遊びや学びの場を提供したり、伝統工芸を販売したりする姿は、まさに余暇の時間を第二の人生として有意義に使っているように思える。現代の若い世代は、不景気や就職難の影響も受けてか、自らの老後の余暇について真剣に考える者はなかなか少数であろう。しかしながら、私はここで数あるボランティア活動の中でも、あえて日本における「シニアのボランティア活動」に注目したい。「シニア」というと人によってその考え方は異なるかもしれないが、ここでは“定年退職者を含めた高齢者”を「シニア」として話を進めたいと思う。私がなぜ「シニアの余暇」に焦点をあてるのか、その理由を以下に述べる。

 

まず、シニア世代とは、多くの人にとって仕事や子育てなどの義務から解放された、ある程度ゆとりの持てるライフステージである。また、医療制度の改革の進んだ日本の平均寿命は「男性79.19歳、女性85.99歳」[i]であり、多くのシニアは長くて自由な時間を持つことになる。したがって、これからのシニアはますますこれらの時間をいかに有効に使い自由な生活を享受するかを考える必要があるといえるだろう。

 

そのような中、シニアの余暇活動の1つとして注目されているのが「シニアボランティア」である。具体的には、掃除・洗濯・買い物等の家事支援、在宅寝たきり老人の介護などの「老人のための支援活動」や、地域の歴史ガイド、博物館のガイド、道路清掃ボランティアなどの「地域社会への貢献活動」、そして伝統工芸・ふるさとの味の伝承活動、レクリエーション指導、おもちゃの病院ボランティアなどの「次の世代との共生、伝承活動」などがある。[ii]これらの活動はシニアが比較的気軽に参加できるものである。また、今回の東北関東大震災の影響を受けて、これらの「シニアボランティア」のニーズはよりいっそう高まった。現在、被災地では津波をかぶった住宅の泥だしや家財道具の片づけ、がれきの撤去はもちろん、高齢の一人暮らしまたは高齢の夫婦の生活支援や話し相手・配食などの、人々の生活のサポートのボランティア活動も多く求められている。[iii]このような、人々の生活のサポートボランティアは、シニア世代も十分参加しえる領域である。実際に、“被災地の支援活動の担い手としてシニア世代の手を借りよう”という声も上がっている。[iv]このようにさまざまな活動の領域が存在する「シニアボランティア」だが、このようなボランティアという社会貢献を行うことの意義は、たとえその活動が社会に及ぼす影響が多大なものであったとしても微々たるものであったとしても、その活動を通して生まれた新たな人間関係や繋がりは時にお互いの生きがいにもなりうるということである。また、シニアが積極的にボランティア活動に参加することで、若者と触れ合う機会が増え、互いに良い影響を与えあえるという点でも意義のあることではないだろうか。

 

 3.余暇生活に求められる積極性

  ここで、現代のシニアに見られる余暇に対する意識における課題について触れる。上で述べたように、現代のシニアには若者と比べより多くの余暇の時間が与えられている一方で、主に男性において、余暇を積極的に活用し楽しもうとする意欲が低いという傾向がみられる。ここで一例を挙げると、定年退職を迎えるまで仕事に一筋で生きてきた男性の多くは妻への依存思考が高く、妻のほかに余暇をともに過ごす相手があまりいないというケースがある。これは一般に「ぬれ落ち葉現象」と呼ばれる。「ぬれ落ち葉」とは、定年退職後の夫のことで、仕事人間だった夫が家では邪魔な存在であるということを表現した言葉である。[v]このような状況をうけて、シニア自身の余暇活動への積極性はもちろん、シニアへの余暇機会を提供する団体や、自治体などの地域レベルでの活動、そしてシニアへボランティアの機会を提供する活動や団体はより一層重要なものになってくるといえるだろう。

 

4.シニアへの余暇生活支援ボランティア活動

 シニア向けの余暇機会を提供する団体として、日野原重明先生が主宰している「新老人の会」、岡本行夫氏主宰の「新現役の会」、企業が後押ししている「ナイスライフの会」等があるが、何れも全国的な組織である。また、地域単位で活動するグループとしては、首都圏の12団体で構成している「ヒューマンネットワーク研究会」という特異な組織がある。それらの団体は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県に所在し、それぞれ独自にシニアの余暇活動の受け皿として機能している。[vi]また、シニアへボランティアを提供する団体としては、JICAのシニア海外ボランティアがあり、自分の元の職種を生かしてボランティア活動を行うこともできる。[vii]そのほかにも、ネット上ではさまざまなシニアボランティアの募集がある。[viii]

 

 5.最後に

 ここまで、シニアの余暇としてのボランティア活動について述べてきたが、私がこのようにシニアの余暇に注目した理由には、やはり私自身が自分の老後の過ごし方について考えることが多い、ということも挙げられるだろう。もしも自分が将来余暇の時間を十分に持てるのだとしたら、何よりも他者に役立つことにその時間を使いたい、という思いが私にはある。他者のためになること、または他者にとって良い影響を与えられるような行動をすることが最終的には自分の自己実現に繋がるのだ。そのようなことに時間を割くことが自分の生きがいとなるような人生を送りたい。また、現代のシニアがボランティアとして活躍できる場は今被災地に多くある。ネット上でも人々の生活サポートを中心とした支援仲間を募る団体は数多く見られる。しかし、そのような場で活躍が求められているのは決してシニア世代だけではない。私たち学生にも同じことが言えるだろう。若い世代もシニア世代も一体となってボランティア活動を行うことは、シニア世代にとってはまた新たな生きがいとなるかもしれないし、若い世代にとっても非常に良い学びとなるかもしれないのだ。私自身、これからもボランティア活動を続けると同時に、シニアとしてボランティアを行う人々と接する機会を少しでも増やし、将来の自分の余暇生活がより有意義なものになるよう若者としてのシニアボランティアへのかかわり方を考えたい。

 



[i] http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life07/01.html

厚生労働省「日本人の平均余命平成19年簡易生命表」(2011530日現在)

[ii] 「余暇社会参加の近道、シニアのボランティア活動」(2011531日現在)

[iii] http://kyoudounet.jugem.jp/?eid=105

 「東北関東大震災・共同支援ネットワーク」(2011620日現在)

[iv] http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2011062002000010.html

「ボランティア 被災地とともに歩もう」(2011621.日現在)

[v]  http://zokugo-dict.com/23nu/nureochiba.htm

 「日本語俗語辞書」(2011530日現在)

[vi] http://orange.zero.jp/hnw.boat/mon2/mon2.html

  門口 泰宣「余暇の多様性を求めて」(2011531日現在)

[vii] http://www.jica.go.jp/volunteer/application/senior/

 「JICAボランティア」(2011530日現在)

[viii] http://allabout.co.jp/gm/gl/4789/

 「シニア世代のボランティアAllabout(2011620日現在)