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佐藤佳奈「女子会の流行と女性の余暇」
1.女子会の流行
女子だけが集まる「女子会」。2010年の新語・流行語大賞でトップテン入りするなど話題をよび、その勢いは今年さらに加速しているように思う。テレビや雑誌などで頻繁に取り上げられ、さまざまな分野の企業が注目している。なぜ今女子会がこれほどまで人気を博し話題になっているのか。これを探ることで、現代女性の余暇の過ごし方と女性が余暇に求めるものについて考察していきたい。
2.女子会の実態
女子会流行の発端は、人気モデルたちによって開かれた女子会がブログやメディアで紹介されたことや、30代の女性4人が主人公のアメリカのテレビドラマ『Sex and the City』の流行が、女性たちに影響を与えたと言われている。
Yahooリサーチの調査[i]によると、20〜40代の有職女性の過半数が1か月に1回女子会に参加しており、特に若い年代で頻度が高いことがわかった。女子会の内容としては、飲食しながらの情報交換(おしゃべり)が主で、趣味・ファッション・恋愛・家族・仕事など幅広い話題で盛り上がる。同性視点で本音の相談や話ができる、趣味や考え方、価値観の共感から悩みを分かり合える、ストレス発散や気分転換になるという利点が挙げられている。メンバーとしては「高校・大学時代の友人」が最も多く、女子会には気心の知れた仲間との情報交換が求められているようだ。
また、ANAが20〜30代の女性を対象に行った調査[ii]によると、91%の女性が女子会をしたことがあると回答していることがわかり、女子会は女性にとってかなり身近で重要な存在であることがわかった。
女子会ブームは有職女性のものだけではなく、中高生の間にも浸透しているようだ。中高生の女子会としては、「ファーストフード店やファミリーレストランでひたすらおしゃべり」や「友達とお菓子を持ち寄ってパーティー」というものが多く行われている[iii]。
大学生の女子の間でも女子会は一般化しており、私はサークルの仲間や高校の友達と定期的に女子会を開いている。いっしょに食事や飲み会をするのが主で、友達の話に共感したり自分の意見に共感してもらえたり、友達の話から刺激を受けたりと、気分転換できるのと同時に自分自身を見つめ直す機会となっている。
3.女子会の多様化と企業戦略
女子会のブームに乗った、“女子会ビジネス”が各業界からで出てきている。居酒屋チェーンでいち早く女子会プランを導入したのが、モンテローザの展開する「笑笑」である。ここで展開された「女子会プラン」が、居酒屋での女子会を定着させたと言える。ここでは新たに女子会プランのメニューやコンセプトを一般女性から公募し、最優秀プランが商品化されるという企画も行われた。笑笑では流行語大賞受賞後、約3割増ペースに売り上げが伸びているそうである[iv]。女子会プランを導入している居酒屋では、スイーツやノンアルコールカクテルを充実させているのが特徴である。
また、ホームページの「女子会.com」[v]では、女性向けにお得感のある食事や旅行のプランを紹介しており、地方情報誌の「ホットペッパー」では“女子会完全ガイド”と題し女子会の場所を豊富に紹介している。
そして、飲食店での女子会がすっかり定着した今、次のブームを生むものとして注目されているのが「女子旅」である。ホームページや旅行ガイドブックを見ると、JALやANA、近畿日本ツーリスト、JRなど各旅行業界ではこぞって女子旅プランを推していることがわかった。JTBでは「姫様シリーズ」[vi]として女子旅プランを出しており、プランのネーミングにも女性の心をひくようなものが使われている。これら「女子旅」の特徴としては、宿泊所のアメニティの充実やエステやマッサージサービス、デザートバイキング、温泉、ショッピングなどの特典が多く、どれも女性同士だからこそ気兼ねなく楽しめるものだと考えられる。
化粧品メーカーKaneboのコフレドールでは、2011年春の商品シリーズを「もっと、メイクを楽しもう メイクで女子会」と題し、女性に人気のモデルたちが新商品の使用感や仕上がりについておしゃべりする様子を、ホームページ上に取材形式で取り上げたり、テレビCMで放映したりしている[vii]。憧れのモデルたちの女子会をのぞき見するような印象を視聴者に与え、商品への興味を与え、消費者の購買意欲をかき立てている。
4.女子会の人気の秘密
それでは、なぜここまで女子会がブームをよんだのか。その理由について、女性の持つ特性という面から考えていきたい。
まず、一般的に女性のほうが男性よりもコミュニケーション力に優れているものだという指摘がある[viii]。また、口コミ情報の信頼性が女性において高いという指摘もあり、「女性は友人から得た情報を信頼し、さらにそれを「娯楽」として他者に伝達する傾向が男性より強い。」という[ix]。これらから考察すると、女性は、「おしゃべり・雑談・世間話」といったことを好み、自分のことを話すこと・他人から情報を得ることの双方を好む。つまり、これを目的とする女子会において、無意識にストレスを発散させたり、自分の価値観を広げたりすることが可能になる。また、企業側からすれば、話を盛り上げるための魅力的な空間や食事を提供するだけでビジネスになり得たわけだ。また、情報の発信・信頼をしやすい女性を顧客のターゲットにすることで、女子会参加者本人が店やプランの宣伝効果となってくれる。これらが企業の成功と事業拡大に貢献してくれたと言えるだろう。
また、場所に合わせたおしゃれを楽しむことができるのも女子会の醍醐味である。同性同士のほうが本当にしたいおしゃれを理解してもらえるという声は多い。その日のファッションや美容の話題で話はさらに盛り上がる。おしゃれな場所やおいしいものに囲まれることで、普段の仕事や単調な日常とは離れた世界観に浸ることができる。これによって気分転換や美意識の向上が可能になるため、年代問わず女子会が人気なのだと考えられる。
最後に、女子での集まりというものは以前から存在したと思うが、なぜ今この時代に改めて流行したのかということだ。これには、ブログやSNSの普及と一般化によって、知人・他人問わず、あらゆる年代・職業の人々による情報の発信・受信が可能になったことが関係していると考える。これらを利用することで、他者の「女子会事情」や余暇の過ごし方について、興味深い情報を容易に入手することができるのだ。また、女性の社会進出の高まりによって、女性の動向が多くの企業やメディアで注目されるようになったことも、この理由として考えられる。社会で活躍する女性が増えれば、その裏返しとしての余暇に心身共に休息や癒しを求める女性も増えるだろう。それをうまく形にしたのが女子会であったのではないだろうか。余暇にある女子会の充実こそ、現代の社会を活気づける原動力になるのだと考える。
5.まとめ
「女子会」は、女性の好きなもの・求めるものと、企業の戦略とがあいまった画期的なものである。女性は日常起こる様々なことを女子会でのおしゃべりによって発散し、自己の成長へもつなげている。まさに女子会は女性の余暇活動において重要な役割を果たしているのである。飲食業界に限らず、旅行業界、美容界など、その応用のされ方は様々であり、まだまだ発展の余地があると言える。また、その人気の秘訣は前述のように女性が本来持つ特性にあると考えられるため、「女子会」は衰退することなく将来も必要とされ好まれていくだろう。今後どんな「女子会」企画が打ち出されるのか注目である。
[i] http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000061.000000624.html
Yahoo!リサーチ、「女子会に関する調査」を実施 株式会社マイクロミルのプレスリリース (2011年6月6日現在)
[ii] http://www.ana.co.jp/pr/11-0103/pdf/11-041.pdf
ANA NEWS 第11−041号 (同上)
[iii] http://ran.peps.jp/rankin.php?seq=2150
@peps!のランキン 女の子の流行りモノNo.1(2011年6月21日現在)
[iv] http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/110117/cpd1101170947014-n3.htm
SankeiBiz 2011年1月17日記事(2011年6月6日現在)
[v] http://jo4-kai.com/ 女子会.com(同上)
[vi] http://www.jtb.co.jp/lookjtb/local/osaka/tour/1007_001/ JTB 姫様シリーズ(同上)
[vii] http://www.kanebo-cosmetics.jp/coffretdor/promotion/
「メイクで女子会」コフレドール(2011年6月21日現在)
[viii] http://www.ozmall.co.jp/joshikai/whats.aspx OZmall 女子会とは?(同上)
[ix] http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt1010.pdf#search=
「女子会が広げる「口告」効果」宮城由貴子(同上)