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折笠貴紀「人々が好む映画と産業としてのこれから」[i]

 

初めに

人々にとって余暇活動は人生を過ごすための重要な要素となっている。その中で私は映像コンテンツの中の一つ「映画」に焦点を当てて、人々の余暇にどのような影響をもたらしめるものなのか見ていこうと思う。映画はその産業規模は地域主体で行われるものや国際的な権威を持つものなど数は多い。日本だけでも小規模におこなわれているのを含めると、その数は多く存在し、映画に対して熱心に取り組んでいると考えてよいのではないだろうか。

 

日本での映画産業

そんな日本における映画産業は平成22年には174,358千人にのぼり、平成21年の169,297千人よりの増加していることがわかる。このことから映画というコンテンツに人々が興味を抱いている傾向が増加しており、産業としてその規模は大きなものである。

人の増加に伴い、興業収益も平成22年には220,737百万円で前年の平成21年の206,035百万を超える収益を上げた。そして金銭的収益の目安となる興行収益は観客が興行会社(劇場)に支払う入場料の合計金額と定義され、平成22年を中心に見ると、邦画の最高興行収益は「借りぐらしのアリエッティ」で 92.5億円を上げている[ii]。このタイトルは世界的賞を受賞した経歴を持つ有名なスタジオジブリが製作したもので、そのブランド力は折り紙つきである。これを含めアニメ作品が4作品を占め、他5作品はドラマから継続して作られたもの、さらにアニメ作品でもテレビ放映やシリーズものがほとんどで完全に映画のみとなる作品は1作品のみである。一方の洋画では、1位は平成22年から公開されたアバターの156億円である。ランキングの中で4作品はシリーズと言っていいだろうが、映画オリジナルが6作品を占める。

注目するのは洋画の方が最高興行収益を上げているが全体を見ると、邦画・118,217億、洋画・102,521億円に昇っている。作品公開数は100本の違いがある中で前年の21年との比較で邦画が横ばいであるのに対し、洋画は14,000億近い増加を見せた。[iii]

傾向として日本映画の収益は、洋画には一部が多額の収益を上げるが、邦画ではコンスタントな収益であると言えるのではないだろうか。

 

アメリカでの映画産業

日本の場合を上記にあげたが、他国では同様になっているのか。映画の本場といわれ、日本にも多くの映画を配給しているアメリカを見ていくこととする。

アメリカ映画産業は2009年では北米(カナダを含む)の興行成績が107億ドル(99510万円)と、100億ドルを突破し、2008年の994000万ドルを上回る結果となった。[iv]

アメリカにおける2010年の映画興行成績の1位はトイストーリー3であるのを筆頭に映画でのシリーズものとアニメ分野は約半数ずつ含まれている。[v]そしてこのほとんどが日本でも上映されており、20位まで見ると上映されてないものは少なく、アメリカがいかに日本に映画輸出国であることがわかる。

日本と同様にブランド力というものは存在していると感じ、その証拠がシリーズものの4本の存在や該当したアニメ映画は有名な制作会社により作られていることだと思う。

アメリカは映画輸出国とあらわしたが、その規模は日本と桁違いである。過去のデータから見るとアメリカの国内収入は少ない傾向に対し、海外収入では大きな利益を上げている一方で、日本では国内収入の方が大きく、海外収入は微々たるものである。単純な計算はできないがアメリカがいかに海外映画市場でシェアを取っているかがわかる。

公開本数も2006年比較だとアメリカ・821本、日本・607本と日本が意外に多いが、上記の収益の差が存在している[vi]

余暇の中にも国の文化、経済や風習の違いが存在していることを表しているのではないだろうか。

 

両者の違い

日本とアメリカでの映画分野における違いというものは何があるのだろうか。

まず挙げられるものはその料金である。日本での映画料金は平均で1500円であるのに対し、アメリカでは700から900[vii]という安価で見ることができる状況である。

この金額の差には市場調査によるものなどがあるが映画自体を安くし、グッズなどで売上げを伸ばす・TV・(DVD)時代に劇場にお客さんを来させるために入場料金は抑え、グッズ・飲食物で稼ぐ映画興行の確立を行ったということが大きい。さらに撮影方法に関しても細かい違いがあり、日本が丁寧に撮影するのに対し、アメリカはどちらかというと大雑把に撮影する傾向にあるという。

私が注目した点は、日本において、映画はドラマからの派生やシリーズものなどが興業収益のほとんどを占めるように固定ファンが多く、確実に収益を上げられると考えられ、作られているのではないだろうか。このことを考えるとテレビから映画へとつながる余暇活動となり得る。一方のアメリカでは、ドラマから映画となった作品は少なく、私はあまり知らない。ドラマと映画は分けて考えられた余暇である側面が強いと推測できる。

このような文化的違いはほかにも存在し、それはアメリカでのリメイクの多さである。今から公開予定作品が確定しているもので25作品が存在する。吹き替え、字幕といった作法がある中でなぜリメイクが多いのだろうか。そこには識字率が関係しており、その点では日本は発展しており、成人の大多数が読み書きできるという社会的要因が存在しているからこそである。日本では個人的に昔のものをリメイクすることが多い気がするが、一方のアメリカにおいて話はできても字幕の映画を理解できる人は少ないのではないかという意見がある。ここにはアメリカが移民国家であり、日本ほどの言語を読み解く力がないと考えられ、関連してあらゆる言語に共通しているが、日本やその国独自のニュアンスで通じる言葉で翻訳していかなければならないという手間を考えると、あらかじめ自国を反映したリメイクという手法もとられるのであろう。

 

映画の魅力とは

そこまでしてでも映画として成立させ、見せたい・見たいと感じさせるものとは何なのだろうか。映画の魅力に関して、映画監督・成島 出氏は「テレビのドキュメンタリーでは[見た]なんだ。映画では[体験]したって言える。この違いが1800円払って観るか、無料でテレビを見るかの違いだと思う。」と語った[viii]

私は、映画も一つの映像コンテンツのひとつであるがテレビと決定的に異なっている点はCM・途中で邪魔するものが存在しないからこそ、映画作品そのものにずっと集中する状況ができ、閉鎖された空間であるがゆえに日常の世界から離れ、その作品の世界の中に入り込めることが容易になりやすいため、映画は非日常を楽しむ場と考えていいだろう。

もちろん、映画を観る前までは監督や出ている俳優・女優が誰なのか、予告で興味をそそられるなどのあらゆる要因が存在しているが、映画を見る、映画館に入るという行為にある程度の特別な環境にいるという感覚もあるのでないか。

 

映画のこれから

これからの映画はどのようになっていくのだろうか。

最近では3D映画の普及により新たな映画の見せ方が普及しつつある。上記のアバターは3Dでの上映によりその収益を伸ばした要因となっていることから、まさにより近くで体験

することが可能となった。

しかし、全てが3D映画化することにメリットはないと考えている。アクションや迫りくる状況がある映画ならその迫力を存分に体感できるが、落ち着いた作品において3Dのメリットというものは薄れてしまうのではないだろうか。

そして2005年度には日本だけで180億にのぼる映画のインターネット上への動画サイトにアップロードや、海賊版DVDなどによる被害額が計上[ix]されているため、それらの対策が必要となることは明白である。それでも映画という特別な空間、大きな画面、この特殊な状況があることが要因の一つとなり得るだろう。しかし、映画も一つの娯楽であり人々にとっては余暇に過ぎない。

どのように伝え、楽しめ、体感させられるのかを考え続けることが映画のこれからの課題と私は考え、余暇の中での映画とは、映画から何かを感じる媒体であり、普段からの脱却、非日常を味わうことにあるのではないかと考える。

 

 



[i]  この文面に関して、出典に関し、複数の情報元から一段落に取り込んだため、最後に参考資料としてまとめる。

[ii] http://www.eiren.org/toukei/index.html

一般社団法人日本映画製作連盟「日本映画産業統計」より 2011621日現在

[iii] http://www.eiren.org/toukei/index.html

一般社団法人日本映画製作連盟「日本映画産業統計」より 2011621日現在

[iv] http://news.walkerplus.com/2010/0104/3/

alkerplus 「不況に強いアメリカ映画界! 2009年度の総興行成績が初の9兆円越え」より 2011621日現在

[v] http://mysticriver.blog4.fc2.com/blog-entry-583.html

Fc blog 2010年全米映画興行成績」より 2011621日現在

[vi] http://blog.chinabe-cinema.com/?eid=535686

数字で比較 中国・アメリカ・日本映画市場より 2011621日現在

[vii] http://www.jva-net.or.jp/bulletin/jva-repo_138.pdf

一般社団法人日本映像ソフト協会(JVA 「日本映像ソフト協会会報 No.138」(PDF」より 2011621日現在

[viii] http://www.toei.co.jp/meister/vol11/detail/05.html

東映株式会社「成島 出監督、映画の魅力について」より 2011621日現在

[ix] http://news.walkerplus.com/2009/1025/11/

Walkerplus 「年間180億円の損害!映画館での違法盗撮を防ぐ新発明とは」より 2011621日現在

 

参考資料

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/kikaku2/2siryou4.pdf

「コンテンツ海外展開について」より 2011621日現在

http://www.hobieuropeans.com/

「翻訳会社の使い道」より 2011621日現在

http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20110227/p2

HALTANの日記」より 2011621日現在

http://gigazine.net/news/20070808_movie_money/ 

gigazine 「どうしてハリウッド映画は予算に何百億円もかけられるのか?」より 2011621日現在

http://himo2.jp/1096800

非モテタイムズ「ハリウッドスターが、日本へ積極的にキャンペーンに来る理由は?」より 2011621日現在

http://d.hatena.ne.jp/masaakib/20110116/1295183739

masaakibの日記「2010年 全米映画興行収入年間ランキング」より 2011621日現在