110622劉
日中の結婚事情の変容及び比較
一、はじめに
結婚は私達にとって、人生における重要なテーマである。しかし、近年,結婚についての観念と社会環境が大きく変わってきた。特に、社会学者、山田昌弘が考案、提唱した造語「婚活」(結婚するために、結婚活動、略称は婚活)現象が日本だけではなく、海外にも行われている。本文は中国に焦点を当て、日本と中国の結婚事情の変容及び比較をしたい。
二、日本における結婚事情の変容
先進国の中では、日本は結婚率の高い国のひとつだといわれている。日本の正式婚の数は、1978年以降、現在に至るまで年間70万件台を維持しているとされた。しかし、近年日本人の未婚率は年々上昇しており、30代前半で未婚の男性の割合は1960年の9.9%から2005年には47.1%まで上昇した。生涯未婚率も上昇し、2005年時点で男性15.4%、女性6.8%となった。日本の未婚人口が増えると同時に少子化も進んでいる。
現在日本の男女は何故結婚難問題が起きるのか、その原因は4つあると考えられる。第一、女性の高学歴化や社会進出(賃金労働者化)が進んでいると考えられる。女性の社会的地位が高くなると同時に、女性も男性と同じく働き、同じく給料をもらえることによって、自活できる状況になった。第二、近年、男性は日本の不況により、収入が不安定になり、経済的の不安が結婚しない、或いは結婚が難しい大きな原因となった。第三、日本で社内恋愛禁止は常識になったことは結婚難の原因である。以前のように、社内恋愛は大切な出会いの場であった。ところが、就職氷河期が原因で女性社員も採用が減り、インフォーマルな付き合いも減ることにより、社内恋愛の機会が減少、機会の減少に伴い、社内結婚も減少したとした。第四、お見合い結婚に関する意識の変容も未婚化の原因であると考えられる。戦前に約7割を占めていた見合い結婚は一貫して減少を続け、1960年代末に恋愛結婚と比率が逆転した後、90年代半ば以降は1割を下回っているという。[i]若者はお見合いしなくなり、結婚相手と出会うチャンスが減った。しかし、近年、日本の結婚相談やお見合いパーティなどが流行し、お見合い結婚の割合が増える見込みがあると考える。
また東日本大震災やそれに伴う原発事故で不安になり、結婚したいという女性が増えている。結婚相談所では、女性からの資料請求が増加、百貨店では婚約指輪や結婚指輪を買い求める人が多いという。結婚相談所大手のオーネットでは、2011年4月に入ってから資料請求の件数が前年同月比15%も増加しているという。
三、中国における結婚事情の変容
中華人民共和国成立以前は、親が縁談をまとめており、デートや自由恋愛といったものはなかった。中華人民共和国成立(1949年)後は、中国共産党が党への忠誠心などを勘案しながら結婚の許可を行うこととなった。改革開放(1978年)後は、自由恋愛により結婚することができるようになった。なお、1966年からの文化大革命の際には、多くの知識人が地方へと下放され、そこで地元の女性と結婚することとなった。そのため、改革開放後に離婚が自由にできるようになると、こうした夫婦が離婚するケースが各地でみられた。[ii]
しかし、90年代以来、経済成長が著しくなる中国は結婚難問題が社会現象として捉えている。中国の若者の結婚が難しくなるのは経済発展と共に、人々のお金に関する考え方が結婚に影響を与えると考えられる。2011年テキサス大学オースティン校のディビッド・バス(David. M.Buss)教授らの研究によると、中国の若者が配偶者を選ぶ際、「お金」に関する条件がますます重視されてきていることが分かった。83年のデータのうち、比較対象として採用したのは中国人男女500人を対象にした調査結果。結婚相手に求める条件についての項目では、「性経験の有無」「経済力」「健康」などを挙げている。一方、08年の調査データは、同じく中国人の若年層1060人に対して行ったもので、結婚相手に求める各種条件をランクづけしたもの。
「経済力」が重要と考える回答者は、83年のデータで33%に過ぎなかったが、08年の調査では89%となっており、結婚相手の経済力に対する関心が大幅に上昇していることが分かった。
経済面に厳しく要求する中国の若者は結婚難に陥り、日本のような婚活が中国でも始まった。中国の大手婚活サイト「世紀佳縁」の調査によると、最近の中国の若者は「お見合い」にかなり肯定的であることが分かった。調査は同サイトが全国16地域の23〜35歳の独身男女を対象に行ったもの。最近の若者の結婚観はかなり変化しており、これまで少数派だった「女性からの猛烈アタック」や「女性が年上のカップル」といった現象も珍しくなくなっている。また、社会問題と化している「拝金女」(拝金主義の女性)についても、半数以上が寛容な見方をしていた。中国では今一番流行の番組は婚活番組であり、婚活ブームの全盛期到来といわれている。
四、日中比較
日本と中国は従来同じく儒教の影響を受け、文化や習慣において共通点が多い。結婚についての考え方も共通点が多くある。従来の「男尊女卑」や「男は外で働く女は家で家事」など考えが共通であった。しかし、近代になると共に、日本では女性の社会地位が高くなり、女性は高学歴で男性に養うことなく自活するという社会に成ってきた。日本より女性の社会進出が高く、既婚女性の働く割合が高い中国でも同じである。こうした社会変化によって、男性も女性も結婚相手に求めるものが以前よりも基準が高くなり、日本と中国の若者はますます結婚難に至った。
また、「高学歴(高卒ではなく大卒または院卒)」、「高収入」、「高身長」の男性のこと。1980年代末のバブル景気全盛期に、女性の主流層が結婚相手の条件にこの三高を求めた。おそらく現在の中国はバブル景気全盛期にあるだろう。中国の結婚相手の条件も同じく三高である。中国では結婚する際、相手の学歴、収入、家柄、不動産を持っているかどうかなど条件がある。日本のバブル時代と共通であると思う。
しかし、現在日本は不況だといわれる中、3つのCは結婚相手に求められるという。comfortable・・・「快適な」だが、意訳すると「充分な給料」。今の生活水準を落とさないで、子育てができる程度。一般に年収700万円以上。communicative・・・「理解しあえる」だが、意訳すると「階層が同じかちょっと上」。価値観やライフスタイルが一緒。cooperative・・・「協調的な」だが、 意訳すると「家事をすすんでやってくれる」。三高と異なる条件が今日本の女性が男性に求める条件である。おそらく、中国の経済発展が停滞すれば、人々の結婚に関する考え方も変わるだろう。[iii]
したがって、結婚と言う個人的な行為だが、社会全体的な生活様式や人生についての考えが見られると思う。近代化が進んでいる現在、新興国といわれるインド、中国は経済成長と共に変化した結婚観は以前日本のような多くの先進国にも見られた。結婚観の変化は全ての原因は経済発展であることは言えないが、あくまでも経済発展が結婚観の変化を促す、或いは影響を与えるといえるだろう。結婚に関する考えの変容について私は日本、中国に留まらず、世界規模で見てみたいと考えている。そのため、これからはさらに調べて行きたいと思う。
参考文献:
『日本人の性生活』 著者:篠崎信男 氏 文芸出版(昭和28年10月25日発行)
厚生省「人口動態統計」http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
13回出生動向基本調査http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou13/point13.asp
結婚と出産に関する全国調査http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou13_s/Nfs13doukou_s.pdf
夫婦調査の結果概要http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0630-4f2.pdf
国立社会保障・人口問題研究所http://www.ipss.go.jp/