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笹本 芽郁「自然とかかわる余暇の過ごし方」

 

1.            余暇のとらえ方の変化

 『余暇』〜日本の生活思想〜から近代での余暇のとらえ方が変化したきっかけとして、第二次世界大戦がある。1つ目としては関心が国家から私的な物事へ移ったことである。戦争によって国家が第1とされた時代から、戦争が終わることによって個人の自由が増え、個人的に余暇を楽しむ傾向が増したといえる。2つ目としてはアメリカニズムがあげられる。戦争が終わり、アメリカ兵が日本に及ぼした影響は大きい。現在私たちが着ている服ももちろんだが、そのほかにも食生活の変化などが挙げられる。3つ目としては生活の合理化意識がある。科学技術の発達によって、電化製品がブームとなり、さらにインスタント食品のブームも起こり、主婦が今までの家事労働が軽くなり、自由な時間が増えたことで余暇の過ごし方の意識も変化してきた。これらの要因によって余暇の時間や過ごし方の選択肢が変化した。さらに近現代になると、所属している会社の規模、労働時間や給料、また保障によって余暇の過ごし方が変わってくる。さらに電子機器の発達によって就寝時間や起床時間の変化が起こった。加えてマスメディアや交通機関の技術の進歩によって余暇の多面性が実現されたと考えられる。[]



 

2.            現在ある自然体験活動

 余暇の時間が変化することによって家族で長期の自然体験活動をする家庭も増加した。文部科学省の平成19年5月のデータによれば平成13年は青少年教育施設の利用者数が403万人であったが、平成17年には489万人と緩やかではあるが増加傾向にある。[]


さらに、自然体験活動を推進する団体も増え、様々なプログラムを企画する団体も増えている。とくにキャンプについては様々な種類があり、ただテントを張り、野外で生活するだけではない、工夫を凝らした活動がたくさん企画されており、夏休みなどの長期休暇を利用して参加する人も多いようである。実際、私も小学校高学年の夏、近くの青少年自然家に学校のプログラムとしてキャンプに参加したが、その時期から考えると種類が増えていることがわかる。

 

3.            自然体験の効果

 自然体験の影響は主に4つあると考える。まず、精神的な側面から焦点を当てると、自然に対する理解を深めることによって、命の尊さを学べる点である。自然体験活動は刻々と変化する多彩な自然環境の中で行われることから、自然の持つ不可思議さ、生き物の生命力を実感する場面がたくさんある。また自然の中で生活し、学ぶことで動物や植物に対する知識を深めることで、自然の摂理や関係性を学ぶことで、今日の地球規模の環境問題に対する問題意識のきっかけとなりうることもできるだろう。

 2つ目としては自然に対する感性、興味を引き立てることで、創造性や知的好奇心を高めることである。変化し続ける自然の営みの中で、様々な現象に触れ合いながらの自然体験活動は、ふだんの授業や家庭ではなかなか実感することができないであろう解放感や、予測のできない未知の世界を体験することにもなる。予測不能であり不可思議な出来事、物事から興味・関心が生み出され、そこから五感を通した発見や気づきを得、自然に対する感性を高められることができると考える。今日の科学技術や、便利さが重視される日々の生活に慣れた人々にとって、自然の中で暮らすということは、不便であり、思い通りに快適に過ごせるというわけにはいかない。しかしこういった環境の中で生活をしていくことによって、工夫すること、忍耐を持つこと、その生活の中に楽しみを見出すことの重要性を実感することになるだろう。工夫をし、実践し、反復することによって、生きていくうえでの心構えも学び取ることができるだろう。

 3つ目は自然体験活動を通して行われる集団活動によって、仲間との協調性や社会性を身につけられる点である。集団やグループで、達成目標の実現に向け、多くの不安や困難に仲間と協力して乗り越えることを学ぶ。こういった中で、仲間との関係をどうやって作っていくか、自分をどうやって表現していくかなどの、将来社会へ出た時の基本となる力を養う。自分の考えを伝えつつグループの仲間と協力し、目的を成し遂げる過程で、仲間と相談しあうこと、弱いもの、遅れているものを助けることなどの体験は私も小学校、中学校で体験している。この体験は青少年の協調性、自主性、社会性を育てることにつながる。

 4つめは、身体的な側面から見てみると、体を動かす動作がたくさん必要となることから、体力、健康の面でも効果があるといわれている。また、気分転換となることでストレス発散に、リラックスをそくしんさせるであろう。

 

4.            改善点

 改善点の1つ目は実施期間の短さである。やはり自然体験活動となると夏休みや冬休みなどの長期休暇期間中に実施することが多く、週末や数日の間に急に行くのはなかなか難しい。数日間の週末を利用して自然にかかわるものもいるが、やはり、醍醐味である、仲間との関係づくりや、自然との関わりあいの中で創造性をはぐくみ、命の大切さを学び取る点においてはなかなか十分な時間をとることが難しいのが現状である。

 二つ目としてはプログラム開発の不足がある。やはり様々な自然体験活動のプログラムが増えてきたといえども、まだまだ、テントを張り寝袋で睡眠をとり、飯盒で自炊するという典型的な活動に偏りがちになる傾向はいまだ存在する。またプログラムを通しての全体的な目標やその実現のための方法などがかすみやすい点である。どうしても野外教育は実施可能な活動種目を並べるだけの単発的な活動に陥りやすいのが問題である。一つ目の実施期間の改善点や、さらに自然体験活動を促進するためにも、プログラムの内容が重要になってくるのではないだろうか。

 最後の改善点としては、指導する側の養成が必要であるということだ。国や地方自治体、民間団体、施設の指導者など、活動を進める人材の育成を行わなければ充実した時間は過ごすことは難しいと考える。またいざというとき対応するためのスタッフがなかなかそろわないことも問題である。特に安全性についての詳しいスタッフは必要不可欠である。

 

5.            最後に

 私がこの分野に興味を持った理由は、自分の育ってきた環境があげられる。自然豊かななかで育った私にとって、都会に住むのは夢であった。しかし実際大学の近くで自然がほとんどない中で生活していると、やはり自然が恋しくなる。そういった気持ちを抱く中でこの分野に興味を持った。今回余暇のとらえ方の変化について学んだことで、自然体験活動の必要性を感じた。近現代に近づくにつれて私たちにとっては快適で便利な生活が気軽に手に入るようになった。このことによって得たプラスの面も確かにあるだろう。しかし同じように、この変化によって私たちが失ったものがあることも確かである。現在の生活の中では、時間をかけて何かを達成するための忍耐力であるとか、工夫・創造し生活することなどは、心がけない限りなかなか自然にはできることではなくなったと感じる。

 今日では、国際化、情報化、科学技術の発展、価値観の多様化など、これまでには見られない社会の激しい変化が起こっている。この環境の中で自分を見失うことなく、自らから考え、主体的に問題解決に取り組んでいく必要がある。この力を育てていくための方法の一つとして自然体験活動があるのではないかと考える。自然体験の効果で述べたように、命の大切さを知っていることや、協調性、自主性は社会に出るにおいては必要な基盤である。自然体験活動は社会で活動するにあたって必要となる身に着けるべきちからを得るための、きっかけとなっているのである。自然体験活動から得られるものはたくさんある。現代に生きる私たちに必要なものを得る機会として、また自分を見つめる機会のひとつとして、自然体験活動により積極的にかかわっていくことが現代の私たちにとって必要ではないだろうか。



参考文献・資料

[] 生活科学調査会編『余暇:日本人の生活思想』(1970) ドメス出版

[]http://www.mext.go.jp.cache.yimg.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo5/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2010/02/16/1283698_2_1_1.pdf

 文部科学省ホームページ「青少年の現状等について」(2011621日現在)

http://ejiten.javea.or.jp/content.php?c=TWpnd09ETTA%3D

 渋谷 健治「自然体験活動が少年の情意面に与える影響」(2011622日現在)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sports/003/toushin/960701.htm

文部科学省ホームページ「青少年の野外教育の充実について」(2011622日現在)

瀬沼 克彰『余暇と地域文化創造:余暇と生涯学習の推進』(1995)学文社

園田 碩哉、牧野 暢夫『余暇生活論』(1927)有斐閣