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上野真由美 「安くて手軽なおしゃれ」
1.おしゃれとは学校や会社などの制服や決められた服装にとらわれることなく流行のものやブランド商品などで自分を思うように着飾ったり、個性を表現したりして、余暇を楽しむ娯楽の一つである。人々のおしゃれへの関心は強いものに感じられる。
しかし、最近ではただおしゃれを楽しむのではなく、かわいい服を手軽に安く手に入れることができる「ファストファッション」というものが人々の注目を集めている。2000年代半ばころからファストファッションの登場によって、高価なブランドの服ではなく、安くてかわいい服をたくさん買うというおしゃれのスタイルが女性を中心に見られるようになった。また、インターネットの普及などにより、雑誌に載っている服がパソコンや携帯から購入することができたり、ファッションショーを見ながらその場で気に入った服を購入することができるようになったりと人々のおしゃれの楽しみ方が変化してきている。
このように、現代でのおしゃれの楽しみ方やその価値観、方法などは変化してきているように感じられる。そこで、私はファストファッションやネットショッピングの実態を調査すると共に、人々のおしゃれへの関心や価値観がどのように変化しているのかを考察したい。
2.まず、ファストファッションの実態である。ファストファッションとは、最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態のことである。日本でのファストファッションの登場は、2000年代にH&MやForever 21、ZARAなどの外資系ブランドが日本へ進出してきたことからだと考えられる。これらは、トレンドを重視しながらも売れ筋のベーシックな商品と組み合わせることで誰にも受け入れられ、常に人気を把握し、ロスを最小限にすることで、手軽で安い商品の提供を可能にしている。そのようなファストファッションが、不景気とデフレによる消費不況と呼ばれる現代において百貨店などとは反対に人々の興味関心の対象となっているのは理解できる。実際に、これらの外資系ブランドの一つであるH&Mは、ファストファッションについて、今の時代だからこそ求められる、低コストでおしゃれができる民主的なファッションと述べており、そのコンセプトは、あまりお金をかけずに誰でもおしゃれをたのしめることである。さらに最近では、ただ安いだけでなく、有名デザイナーとのコラボレーションも見られ、もはやブランド商品の必要性は薄れているように思われる。
このファストファッションブームはユニクロやしまむらのような日本の衣料店にも注目を集めた。ユニクロと同じグループのブランド、g.u.ではジーンズを990円で購入することができ、しまむらでは普段着だけでなく、フォーマルな服やよそ行きの服までも手ごろな値段で手に入れられる。さらに、デパートや百貨店の中にも、ファストファッションへの参入を試みるものがあるように、その人気と実績はすごいもので、もはや「ファストファッション」の服を着ること自体がトレンドとなっている。
3.次に、ネットショッピングについてである。インターネットの普及により、家にいながらにして買い物を楽しむことができるようになった。ネットショッピングの利用実態調査では、人々のネットショッピングの利用頻度が増加していることを示す結果がでている。ネットショッピングを利用する理由には「24時間いつでも購入できる」ことや、「出かけなくても購入できる」こと、「価格が安い」ことなどがあげられている。また、ネットショッピングは多くの店の商品の価格を比較できることや、簡単に商品の検索ができることも利点の一つだ。しかし、やはり家にいながら買い物ができるというシステムは一番のポイントであろう。このように、自宅にいながら金を消費する現代の人々の様子を「巣ごもり消費」といい、この形態は広がりつつある。また、ここで私は、ネットショッピングのさらに新しい方法として、東京ガールズコレクションに注目したい。東京ガールズコレクションとは、2005年から年2回開催されているファッションショーのことであり、旬のモデルたちが流行のファッションに身を包んで観客たちの前を行き交う。それだけでも充分話題となっているが、このショーでは、さらに、モデルたちが着用している服を携帯を使ってその場でリアルタイムで購入することができるという特典があるのだ。このシステムを人々が利用しているのか疑問に思うかもしれないが、実際、東京ガールズコレクションの運営者によると、ショー開始から24時間以内の携帯とパソコンの販売連動、会場ブースでの売り上げ実績の合計は5700万円に及び、東京ガールズコレクションには携帯が必須アイテムとなっているとのことである。さらにこのシステムは、一度に2万人もの消費者を相手にできるという点において、観客側だけでなく、売り手側にとっても好都合なシステムなのだ。
4.ファストファッションにおいても、ネットショッピングにおいても、共通して手軽さと安さという利点が上げられている。そういった便利さが現代の人々に「安くて手軽なおしゃれ」の実現を可能にしていることは言うまでもない。消費者が高価な服を買うために努力するのではなく、生産者側が消費者が手軽に買えるような価格の服を売るという点において、ファストファッションは消費者の等身大、あるいは消費者目線のおしゃれを展開しているといえる。そのことがファストファッションが民主的なファッションといわれる理由なのではないか。
また、ネットショッピングにおいても同様である。例えば、今回紹介した東京ガールズコレクションでの新しい試みのように、消費者が直接ショーを見て、その場ですぐに服を購入できるというシステムは、従来の「バイヤーやメディアに向けたファッションショー」から「消費者に向けたファッションショー」というように、私たちのファッションショーに対する概念を変えた。そして、実際にネットショッピングを利用する消費者は増えているということからもわかるように、ネットショッピングもやはり、消費者に近い存在になっているといえる。つまり、ファストファッションもネットショッピングも共に民主的なファッションへの取り組みなのだ。こうした生産者が消費者を対象としたファッションやその購入方法のあり方には、生産者と消費者を互いに活気付けるという相乗効果のようなものが期待できるだろう。
だが、一方でファストファッションやネットショッピングは私たちの衣服への価値観をも変えつつある。日本には「もったいない」の精神があり、最近では「エコ」への取り組みが盛んである。そういった精神により、従来の衣服への価値観は高価で品質の良い服を長く着るというものであったと思われる。しかし、ファストファッションやネットショッピングの登場により、流行のおしゃれな服を手ごろな値段で簡単に購入することができるようになったので、人々は品質よりも値段やトレンドを重視するようになった。今では、高価な服を着ることがステータスだと思う人は少なくなり、次々と移り変わる流行とその安さ、手軽さから、人々にとって衣服は使い捨て感覚になっている。実際、私自身も新しい服を買ったとしても1シーズンしか着ないということがよくあるが、このことは、最近注目されている「エコ」、「もったいない」の考えに反しているように感じられる。ファストファッションが流行する一方で、人々は「もったいない」を主張するという矛盾が生じているのではないだろうか。
http://www.tokyoindicator.com/2/20080211fastfashion.html Tokyo IN dicator
http://www.asahi.com/fashion/topics/TKY200812190295.html 朝日新聞社
http://www.trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20081202/1021501/?P=2
日経トレンディネット
http://www3.nhk.or.jp NHK
ニュース
http://www.macromill.com macromill ネットショッピングの利用実態調査
http://gw.tv 東京ガールズコレクション