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高橋奈津美「自然と触れ合うこと―エコツアー・ボランティアの魅力―」

 

1.はじめに

 「余暇」と聞くと、私はこれまで良い印象しか持っていなかった。私にとっては、旅行、音楽、映画などアルバイトや勉強から解放されて、自分の好きなことができる時間であるからだ。余暇の過ごし方は様々であり、家でゆっくり過ごす人もいれば、海外旅行にいく人もいる。余暇について考えてみた時、どこかへ出かけるには移動手段が必要になってくるが、ある時、車や飛行機が排出するCO2はどれくらいなのだろうか、という疑問を抱いた。そこから、私達の余暇が環境に与える影響について調べ、その上で私が関心を持っていることでもある、エコツアーやエコボランティアといった、余暇を利用して環境に関わる活動について調べ、余暇を通した環境と私達との関わりについても考察していきたいと思いこのテーマを設定した。

 

2.移動手段から考える余暇と環境

 まず初めに、私達が利用する移動手段から環境に与えている影響について考えてみたい。

移動手段として、徒歩、自転車、車、新幹線、飛行機、船が考えられるが、今回は私達にとって最も身近である、車に着目して考察する。

ここでは、現在進行中でもあり、自動車の所有者にとって関心事であろう高速道路無料化を例にとってCO2排出量について考えてみる。

 

「民主党が衆院選のマニフェスト(政権公約)に掲げた高速道路の無料化と自動車関連の暫定税率の廃止が実施された場合、二酸化炭素(CO2)の排出量が年980万トン増えるとの試算をシンクタンクがまとめた。」[]

 

2008年度の日本のCO2総排出量は約121400万トンであり、1人当たり9.51トンである。」[]

 

これら2つの数値から計算をすると、高速道路無料化によって増えるCO2は約100万人が1年間に排出するCO2量と同じであることが分かる。

高速道路は仕事など、余暇以外の目的でも利用されるため、一概にこの高速道路無料化によるCO2排出増加量から余暇の環境に対する悪影響を考えることはできないが、ゴールデンウィークなど長期休暇の際の渋滞などを考えると、多少はこの数値から、私達の余暇活動における移動手段が環境に影響を与えているということを知ることができるだろう。

 

ここでは余暇の私達の行動が環境に影響を与えている可能性について述べた。

このような負の側面があることを踏まえた上で、今度は私達が余暇を通して環境にどのようにして関わっていくことができるか、また今後の課題などについて考察していく。

 

3.環境をテーマにした余暇の過ごし方

ここからは、私達が余暇の時間を通して環境に関わるということに着目して、余暇と環境の関わりを見ていきたい。

最近私が興味を持っていることの1つに、エコツアーやエコボランティアというものがある。近年、エコツーリズムが注目されており、エコツアーやエコボランティアが多くの旅行会社から売り出されている。

まず、エコツーリズムとは何であるか。これについての定義は国、団体、会社によって様々であるが、日本エコツーリズムセンターの定義では、「地域の特色ある自然・文化・暮らしへの理解を深める旅行や交流活動によって、地域の環境保全や産業振興につながる、仕組みづくりのこと」[]となっている。

 ではなぜ人々は自分達の余暇を、「環境」のために費やすのだろうか。

私は、地球温暖化問題への関心が高まったことにより、人々がエコ、環境といった言葉や、それに関連する活動に対しても以前より関心が高くなっていることが1つの大きな要因であると思う。加えて、ただ旅行に行くよりも、何かプラスαの経験をしたいという人が増えてきているのではないだろうか。

しかしまだまだ課題も残されているのが現状である。身近な自然に触れる機会が多く、かねてより子供向けの環境教育プログラムが充実しているオーストラリアでは、自分が「絶対エコツーリスト」であるという考えを持つ人が27.6%、「たぶんエコツーリスト」が29.0%に達し、エコツーリズムへの理解が浸透している一方で、日本でのエコツアー「参加経験率」は、2002 年では6.3%であり、経験はないがエコツアーのことは知っている、をあわせた「認知率」は約50%[]と、他国と比べるとまだまだ発展段階であるように感じる。

 

4.自らの経験から

 私は小学校5年生まで沖縄県に住んでいた。今インターネットなどで調べてみると、沖縄にはエコツアーやボランティアがたくさんある。しかし実際に住んでいた時にそのようなツアーやボランティアに参加したことはほとんどなく、耳にする機会もなかった。

この経験から思うことは、実際に自分の住んでいる街、地域に目を向けることは少ないのではないか、ということである。実際に私も自分の住んでいる地域での活動よりも、海外における活動に興味を持っている。

私達は、海外や沖縄、屋久島といった、きれいな森や海がある魅力的な場所でのボランティアやツアーに魅力を感じる傾向にあるのだと思う。

 

5.世界各地で体験できるエコツアーの魅力

 海外におけるボランティアやツアー参加の経験はとても貴重なものであることに加え、日本からは見えない視点で環境について考えることができる良い機会であると思う。現在は、エコツアーが発展しているオセアニアだけでなく、アジア、アフリカ、中南米などほぼ世界中どの国でも行われており、環境といっても森林に関わるものから動物に関わるものまで、それぞれの国によってどのようなツアーやボランティアが催行されているかが違うことも魅力的だ。さらにエコツアーの場合、費用も航空券などをすべて含めて1週間で15万円から20万円位と、一般のツアーに参加するのとあまり変わらない。むしろ、航空券、滞在費、食事代に加えて勉強ができることを考えると、お得なのではないだろうか。

そしてもう1つ、私自身が、海外でのエコツアー・ボランティアが魅力的だと感じる理由がある。ボランティアの場合、ボランティアをするだけでなく、日程の中に自由行動の日が設けられていて、世界遺産や国立公園などの観光地に行けるオプショナルツアーが選択できるものもあるのだ。

エコツアーでは、例えば現地発のエコツアーに参加するとすれば、自分で航空券を手配してツアー終了後に自分の好きな所で観光を楽しむことができる。他には、2つのツアーに参加するなど自分でいくらでもアレンジが可能である。

このような、たくさんの選択肢があることや自分流にアレンジできるといったことも、海外での活動が人々を惹きつけている要因ではないだろうか。

 

6.子どもに機会を

 私が一番エコツアーやエコボランティアに参加してほしいと思うのは、子どもである。小学生くらいまでであれば、夏休みなどの長期休暇を自由に使うことができると思う。小さい頃から自然と触れ合うことができるのはもちろん、勉強にもなり、子ども自身が何かを考えるきっかけにもつながると思う。中学、高校と進学するにつれ、部活や勉強に追われ、そのような活動に参加する機会が少なくなってしまう前に是非1度、親子でも、子どもだけでも、参加してほしいものだ。

 また、修学旅行の日程の中にエコツアーを盛り込むことも有効ではないかと思う。観光地やテーマパークに訪れることも素敵だが、修学旅行のように大人数だからこそできる活動もあるだろう。

 

7.今後の課題〜何ができるのか〜

 3.でも指摘したように、日本ではまだエコツアーなどに対して浸透率が低いのが現状である。これには4.で述べたような、人々が地元よりも他県や国外に活動の場を求めることにも原因があるように思う。もっと身近な所でできる活動に目を向けてみてはどうだろうか。日本にも保護が必要な環境はたくさんあるし、私達に自然を体験させてくれ、教えてくれる場所はたくさんある。小さな活動からでも、まずは活動自体を根付かせることが必要であると思う。現在は各自治体やNPO法人もエコツアーなどを催行しているので、地域の学校など教育機関を通して宣伝をするなど、参加者数が増えるようにする努力も必要だ。さらに、人々が是非行ってみたいと思うようなその土地ごとの魅力をアピールしていくことは、たくさんの人に参加してもらうという点において有効であると思う。

 また、日本国内からの参加だけでなく、VISIT JAPAN CAMPAIGNのようなキャンペーンを通して、日本の環境について海外の方にも知ってもらうような活動があればおもしろいな、と思う。

 1日でも1週間でも、私達は余暇を通して自然を知ることや、環境のために何かできることがある。今後、まずは知ること、そしてそこから何かを考えるということによってさらに活動の幅が広がっていくことを期待したい。

 

そして私も時間のある大学生のうちに、国内外問わず、エコツアーやエコボランティアに参加してみたいと思う。

 



[] asahi.com環境(2010613日現在)http://www.asahi.com/eco/TKY200908130136.html 

 

[] JACCCA全国地球温暖化防止活動推進センター(2010613日現在)   http://www.jccca.org/content/view/1045/785/

 

[] NPO法人日本エコツーリズムセンター(2010614日現在)http://www.ecotourism-center.jp/staticpages/index.php/ecotourism01

 

[] 資料 エコツーリズムにする国内外取組みについて2010614日現在)http://www.env.go.jp/council/22eco/y220-01/mat_03.pdf