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斯波侑子「3つの“間”を与える場」

 

1、はじめに

 わたしは「ネイチャーフレンド」というサークルに所属している。ネイチャーフレンドは宇都宮市の市民団体である「自然教室ネイチャーフレンド」に帰属し、その中の学生部という形で活動している。自然教室ネイチャーフレンドは小学校4年生以上の子供に環境教育[1]を行うボランティア団体だ。宇都宮市内の自然公園で行われる月1回の活動(ジュニアレンジャーススクール)と年4回のキャンプの中で、自然体験やレクリエーションを通して環境教育を行っていく。また、環境教育を行うことだけでなく、「3つの“間”」を提供する場としての役割を果たそうとしている。

 

2、子供の成長を見守る

 自然教室ネイチャーフレンドは会員制になっており、小学校4年生から小学校6年生までの子供が新規入会できる。その後は1年毎に「更新」という制度をとっている。入会1年目の子供たちを「初級」、2年目を「中級」、3年目を「上級」、4年目以降を「アドバンスドコース」とし、まとめて「ジュニアレンジャー」と呼ぶ。また、中学校を卒業すると「ジュニアリーダースクラブ」となる。初級からアドバンスドコースにはそれぞれ「楽しむ」「感じる」「学ぶ」「実践する」といったコンセプトがあり、より発展的な活動ができるようになっている。また、ジュニアリーダースクラブは「挑戦」を掲げ、初級からアドバンスドコースとは違った活動を行っていく。更に高校を卒業すると「レンジャー(大学生や社会人など、プログラムを提供する側)」となる。昨年で創立10周年を迎えた現在、2名ほどジュニアレンジャーからレンジャーとなっており、彼らが初級のころから成長を見守っていたレンジャーは、同じレンジャーとして共に活動することに一際大きな喜びを抱いている。私は大学に入ってからレンジャーとして活動しているが、私が1年生だった時に初級だった子供たちが現在上級として活動している様子を見ると、やはり子供の成長が感じられ、とても嬉しく思う。今ジュニアレンジャーとして活動している子供がいつかレンジャーとして、それまで培ってきたものをまたジュニアレンジャーに還元していく。それが何よりも楽しみであり、そうした成長を近くで見守っていられるということを幸福に感じる。

 

3、「先生」ではない大人

 環境教育を行っているが、レンジャーは決して「先生」ではない。自然教室ネイチャーフレンドでは自然が「先生」であり、レンジャーはただ自然と子供たちを繋ぐ場を提供する役割を果たす。また、私が子供の頃は近所に住むお姉さんやお兄さんが一緒に遊んでくれた。お姉さんやお兄さんは親でも先生でもなかったが、よく面倒をみて、色々なことを教えてくれた。現代の子供にはこういった交流があるのだろうか。親でも先生でも、また先輩でもない年上の存在。私は子供の成長には必要な存在であると思う。よくも悪くも手本となり、道筋を示す。レンジャーは近所のお姉さんやお兄さんといった、現代の子供に欠けた身近な年上としての役割を担う。このことは子供に何かしらの影響を与えるという点で責任があり、そのため少なくとも子供の前では手本となるような行動を心がける必要があるのだ。

 

4、3つの“間”

 3つの“間”とは、“時間”・“空間”・“仲間”の3つのことである。現代の子供たちは「習い事などで時間がない」、「思い切り遊べる場所がない」、「一緒に遊べる友達がいない」という。子供は遊ぶことにより、ルールを守ること、協力しあうことなど社会で生きていくために必要な様々なことを学ぶ。それは学校では学べないこともあるだろう。仲間(同級生だけでなく、年上や年下の子)と共に遊ぶことは、子供にとって必要なことなのだ。自然教室ネイチャーフレンドでは、子供たちが思い切り遊べるような“時間”・“空間”・“仲間”の3つの“間”を提供する場として活動を行っている。それは子供に限られたことではなく、私自身、自然教室ネイチャーフレンドの活動を通して3つの“間”を与えられている。高校に入った頃からは、普段の生活の中で広い自然豊かな場所に行くこともなければ、年齢の違う人と共に同じ活動をすることもなかった。自然教室ネイチャーフレンドで活動することで、私が子供だった頃を思い出す。近所の子供たちと日が暮れるまで遊び、時には泥だらけになって親にしかられたり、暗くなっても帰らないので親が心配して探しにきたり。外で遊んでいると、暗くなっていることに気がつかないことがよくあった。現代の子供にはそういった経験はあるのだろうか。私たちが子供だった頃のように、遊具やゲーム機がなくても遊びを作り出し、自然の中で楽しむことを知ってもらいたい。

 

5、“仲間”

 自然教室ネイチャーフレンドで提供する3つの“間”のうち、最も重点を置いているのは“仲間”だろう。人は1人では生きていけない。1人ではできないことも、“仲間”がいればできるようになる。自然教室ネイチャーフレンドでは環境教育を通して自然との共生を学ぶと共に、様々な活動を通して協力し、信頼し、競い合える“仲間”の育成を目指す。私もまた、自然教室ネイチャーフレンドの活動に参加し、企画していく中で“仲間”の大切さを実感している。企画をする際にはお互いの意見を交換することで新たなアイディアが生まれ、プログラムを進める際も各々自らの役割を果たし、協力しあうことで活動を無事に終わらせることができる。年上の人からのアドバイスは時に厳しいものもあるが、それを真摯に受け止め実行することで成長できる。“仲間”と向き合うことで、新たな自分を発見できることもある。子供たちに“仲間”の素晴らしさや大切さを伝えていきたい。

 

6、未来を育てる

 現代はものが発達し、便利なものが増えているが、それに反して無くなっているものもある。無くなりつつあるものの中には、無くしてはいけないものもあるだろう。それは例えば近所付き合いであるとか、子供の遊び場・時間であるとか、心から信頼できる仲間、自然とのふれあい、季節感など様々なものがあるだろう。私たちは今、未来を担う子供たちにそれを託そうとしている。活動を通して私たちの経験、発見、感じたことを伝え、彼らがそれについて何かを感じ、考え、行動していくことで、今無くなりつつある大切なものを未来に残せるのではないだろうか。自然教室ネイチャーフレンドでは、今の子供たちに3つの“間”を与えるだけでなく、その子供たちが成長し、次の世代の子供に与えることで3つの“間”を未来に残そうとしているのだ。

 

http://ncnf.web.fc2.com/「自然教室ネイチャーフレンド」

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[1] 環境教育…人間も地球に生きる多様な生物の一種であるという認識に立ち、環境について自然や地理・歴史などの総合的な学習を行うこと。「持続可能な社会」形成の担い手育成が目標とされる。(スーパー大辞林、三省堂)