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中村真也都「オリコン上位の新たな常連‐その秘められた可能性とは‐」
1、
はじめに
近年のオリコン[1]やMステ[2]といった音楽情報誌、或いは音楽番組にある種の変化が起きつつある。それらのランキングにはアニメソング所謂アニソンが多くランクインするようになってきた。アニソン自体は90年代からあるものの、そのランクインする位置が重要で、その多くがTOP10にランクイン、果ては1位2位と独占するから[3]驚きである。筆者はそういったことを踏まえ、近年のアニソン事情と音楽業界について、独自の視点から考察していこうと思う。
2、近年の音楽事情を読み解く
近年では音楽CDは売れない、売れないと再三言われている。では何故そのように言われている中で、アニソンがJ-POPを押さえて堂々の1位2位にランクインするといった快挙を成し遂げることが出来たのだろうか。様々な視点から、このアニソンが持つ力と影響力について考察していきたいと思う。
まず始めに注目したいのが、メディアミックス展開という戦略である。例を挙げて説明すると、現在TBS系で深夜に放送中の「けいおん!![4]」がある。作中に登場する主人公達のガールズバンドこそが近年のランキングを大いに賑わせているのだが、ここで注目したいのは、原作が漫画であるということと、作中に登場するガールズバンドという点である。最近では「アニメはアニメ」「漫画は漫画」「CDはCD」といった単一の広告の仕方ではなく、アニメのOPやEDだけでなくアニメの劇中歌をCDとして販売する、ゲームの続編を映画として上映するといった多方面的な商戦、メディアミックス戦略が見られる。これによって普段CDを買わないような人でも、作中に出てくるからということでCDを買う理由が生まれる。更には、アニメを見て良いと思ったから原作も購入してみたい、といった購買意欲にも繋がるのである。
次に、着うた[5]の誕生が与えた影響にについて考えてみたい。最近の音楽番組を見ていると「ミリオンセラー」という単語はまず聞かなくなってきている。その代わりに聞くようになっているのが「○○ダウンロード」である。これは主に楽曲の着うた、着うたフルのダウンロード件数を表している。携帯電話の技術が進みシングルCDを買ったりあるいはレンタルしなくても手軽に、しかも安く楽曲を手に入れることが出来るのである。さらにはダウンロードしたお気に入りの楽曲を、メールなどの着信音に設定できるのである。今では電話をかけた際のコール音までもが設定可能(待ちうた)とあってその人気は衰えることを知らない。
次にMP3プレイヤーの流行についてである。カセット、MDと音楽保存用の媒体は変化してきたが、ここ最近ではもっぱら「フラッシュメモリ[6]」である。このフラッシュメモリを搭載しているのがデジタルオーディオと言われているMP3プレイヤー、その代表とも言えるのがiPodである。iPodは独自の楽曲提供の場であるiTunesを持っており、これも上記の着うた同様手軽で、かつ安く楽曲を手に入れることが可能となっていて、消費者のCD離れの一因を担っていると考えられる。
そして注目すべき点がキャラクターならではの戦略である。アニソンは「いかにも」といったCDジャケットが売りで、実に目を惹くものが多くある。そのジャケットには初回限定版と通常版ではジャケットの絵が異なるものもある。そこにはキャラクターとしての戦略があり、そこには純粋に「聴く」だけではなく「見る」価値や人によっては「飾る」価値がある。またジャケットが異なることから、コレクターアイテムとしての付加価値までもがつくのである。しかしこれは、そのキャラクターが成り立っているからこその戦略でありメディアミックス展開の良いところでもある。元々成立しているキャラクターが漫画や小説から枠を越え、CDを発売する。ファンにとっては嬉しい限りであると思う。更にはこれらの楽曲はただキャラクターが歌っているから無条件にファンが喜んでいるではなく、歌詞によってそのキャラクターが生きている世界やその心情を上手く表現していて、それらの歌詞を解釈しようと楽曲と向き合えるのもアニソンのキャラクター戦略として功を奏していると言える。
とは言ってもまだまだ社会的には関心度も認知度も高くはないアニソンである。インターネットではこのような状況を打破しようと、某掲示板で購買者を集ってMステといった音楽番組にランクインさせようといったファン自らの広報活動も行われている。彼らはこのような一連の動きを「祭り」と称して、各々楽しんでいる。中には複数買いと称して「○○枚買った」と言って証拠のレシートをネット上にアップするなどの行動も見られる。このようにただ単にCDを買うだけでなく様々な事柄が1つになっているからこそ、その結果が購買運動に繋がるのではないだろうか。
3、アニソンは音楽業界の救世主たり得るのか
紹介してきたように、アニソンと一口に言っても実に奥が深い世界である。CDが売れない、売れないと不景気な話題を続けているのではなく、アニソンが売れるという事実にもっと着目してみてはどうだろうか。上記の「けいおん!!」はオタクと呼ばれているその道の人々だけに留まらず、様々な人に認知され受け入れられている。[7]もはやその人気ぶりは留まる事を知らないのではないだろうか。インターネットが普及していて様々な情報体系を取っている昨今、音楽業界もまた様々の商業展開をしている。その中で、今後注目すべきコンテンツの一例にアニソンはあることだろう。今までの、アーティスト自身が認知されてきて初めて関連のCDが売れると言った状況だったのに変わり、すでに原作の漫画であったりアニメで知っている既存のキャラクターがCDを発売し、そして売れる。更には関連の書籍までもが売れる。これこそがレコード会社、出版社のやりたかったことではないだろうか。アニソンが秘めている可能性というのは計り知れない。不況と言われている今の日本経済を立て直すのは案外アニソンだったりするのかも知れない。
[1] 「オリジナル・コンフィデンス」というチャート専門誌の略称 http://www016.upp.so-net.ne.jp/zatsugaku/geinou/oricon.html 10/07/07/参照
[2] テレビ朝日系「MUSIC STATION」の略称
テレビ朝日|ミュージックステーションhttp://www.tv-asahi.co.jp/music/ 10/07/07/参照
[3] 異様なランキング
1 GO! GO! MANIAC 放課後ティータイム
2 Listen!! 放課後ティータイム
3 魔法の料理 〜君から君へ〜 BUMP OF CHICKEN 4/30 Mステシングルランキングより
[4] TBSアニメーション・けいおん!!公式ホームページ http://www.tbs.co.jp/anime/k-on/
[5] MP3やAACなどのフォーマットで符号化された30秒程度の長さの携帯電話の着信音
[6]データの消去・書き込みを自由に行なうことができ、電源を切っても内容が消えない半導体メモリの一種
IT用語辞典http://e-words.jp/w/E38395E383A9E38383E382B7E383A5E383A1E383A2E383AA.html 10/07/07/参照
[7]「週刊文春」池田暁子のコミックエッセイに「けいおん!!」登場!
http://www.su-gomori.com/2010/05/post-485.html 10/07/07/参照
けいおん!がYahooトップに
http://autumntone.blog66.fc2.com/blog-entry-417.html 10/07/07/参照