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三須小紋「世界と日本のディズニーリゾート」
1.
はじめに
私たちに親しみがあり、日本一のテーマパークとも言える東京ディズニーリゾートは、まさに現実から離れた「夢の国」である。その理由の一つとして、ディズニーリゾートならではの細やかなサービス、完璧とも言える雰囲気作りが挙げられる。しかしその行き届いたサービスは、東京のディズニーリゾートだけに当てはまるものなのか。現在世界4カ国、5ヶ所に存在するディズニーリゾートには、その国やその土地ならではの何か特徴的な違いがあるのか。世界各地のディズニーリゾートの特徴に焦点をあてて、その違いを比較する。
2.
世界のディズニーリゾートとその歴史
世界初のディズニーリゾートは、1965年7月にカリフォルニアで誕生したディズニーランド・パークであり、世界的に有名なキャラクターのミッキーマウスの生みの親であるウォルト・ディズニーによって創設された。1966年にフロリダにウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート、1983年に東京ディズニーランド、1992年フランスのパリにユーロ・ディズニーランド(後にディズニーランド・パリ)、2002年には東京ディズニーシーが創設された。そして世界で最も新しいディズニーリゾートが、2005年に創設された香港ディズニーランド・リゾートである。
その中でも東京ディズニーリゾートだけが唯一、ディズニーの資本が全く入っていない。ディズニーが株式会社オリエンタルランド及び同社の関連会社で構成される「OLCグループ」とのライセンス契約を結び、この会社が所有・運営を行っている。これは東京ディズニーランドの建設計画当時、ウォルト・ディズニー・カンパニーが海外投資に消極的であったためである。ディズニー側はパークの設計、版権及び運営の指導・クオリティー管理を行い、その全ての費用をOLCが負担する方式をとった。
(2010年6月15日現在)
3.
共通点
現在世界4カ国、5ヶ所に存在するディズニーリゾートには、その世界観だけでなく、夢を持つことを大切にするための共通の決まりがある。お客様を「ゲスト」、従業員を「キャスト」と呼び、従業員の制服にもこだわって、一人ひとりが物語の登場人物になりきって接客をする。また、9歳以上の利用客が仮装をしていると、入場を拒否されることがある。実際に、2010年4月22日に、ディズニーランド・パリを訪れた35歳のイギリス人女性が、自分で購入したドレスを着て入場しようとしたところ、警備員に止められるということがあった。これは、子供が仮装したゲストと本物のディズニーキャラクターとを間違えて混乱しないようにするためである。
http://ディズニーオフィシャルホテル.com/001/(2010年6月15日現在)
http://rocketnews24.com/?p=30955(2010年6月15日現在)
4.
各地の特徴
カリフォルニアのディズニーランド・パークの一つであるディズニー・カリフォルニア・アドべンチャー・パークは「カリフォルニア」をテーマにしていて、カリフォルニアのさわやかな気候と豊かな自然を体験できるアトラクションが多い。また、子供は参加できないが、有料でディズニーランドの裏側を見ることのできる大人に向けたツアーがある。
フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートは、敷地面積がJR山の手線内の1.5倍もあり、世界最大級の規模である。その中には、4つのテーマパークのほかに、2つのウォーター・パーク、2つのエンターテイメントエリア、20以上のホテル、5つのゴルフ場、キャンプ場や牧場などが存在している。広いパーク内の移動には、バス、ボート、モノレールを利用する。また、クリスマスやハロウィーンなどの恒例のパーティに加えて、世界中からスターウォーズ・ファンが集まるイベントや、リゾート内を一周するフルマラソンなど、アメリカならではのユニークなイベントが開催される。
香港ディズニーランド・リゾートは、香港国際空港と香港市内の中間に位置する最近注目のランタオ島という便利な場所にある。パークは、風水の要素を取り入れて、富を表す水、パワーを表す山に囲まれている。さらに、1月中旬から2月頃に中国の旧正月を祝うイベントがある。中国伝統のダンスショーやチャイナ服を着たミッキーが中国太鼓を叩くパフォーマンスを行うなど、香港ならではの要素を盛り込んだイベントを開催する。また、香港は国際的な国であることから、アトラクションによっては、広東語、北京語(普通中国語)、英語の三ヶ国語の解説が楽しめる。日本でもおなじみの「イッツ・ア・スモール・ワールド」では、英語、広東語、北京語のほかに、新たに韓国語やタガログ語が追加され、世界初の9カ国バージョンでテーマソングを聴くことができる。
http://disneyparks.disney.go.com/dpj/ja_JP/index?name=DisneylandAboutDisneylandPage(2010年6月15日現在)
http://disneyparks.disney.go.com/dpj/ja_JP/index?name=DisneyworldAboutDisneyworldPage(2010年6月15日現在)
http://disneyparks.disney.go.com/dpj/ja_JP/index?name=HKDLHomePage
(2010年6月15日現在)
5.
考察
今回、世界4カ国にあるディズニーリゾートについて調べてみた結果、どの国も「夢を大切にする」という根本的なテーマや徹底的な雰囲気作りは変わらないものの、その国の文化や土地柄を生かしたさまざまな工夫や特徴があることがわかった。特に、アメリカのディズニーリゾートは、アメリカの広大な土地と自然を生かしたアトラクションや、マラソン大会、スターウォーズファンのためのイベント、パークの裏側を見ることのできる大人向け有料ツアーなど、「子供のための夢の国」だけでなく、大人も楽しめるエンターテイメント性に富んだ催しを開催している。そのようなアメリカのディズニーリゾートの特徴は、私が訪れたことのある夢の国、東京ディズニーリゾートと比べて、どこか現実的であるように感じた。また、アメリカや香港のようにその国ならではの特徴が見られる中で、日本の東京ディズニーリゾートにはこれといって日本独自の目立った特徴がないように思われる。しかし、日本最初の東京ディズニーランドが開園してから27年という月日が経った今でも、変わらず愛され続けているその魅力とは、いつ訪れても完璧なまでもの「夢の国」であること、そして、変わらないだけでなく、訪れるたびに新たな発見があることであると考える。日本人がディズニーリゾートに求めているのは、ゴルフ場でも、マラソン大会でも、パークの裏側ツアーでも、日本の文化を尊重したイベントでもなく、現実離れした夢の世界を体験することなのではないだろうか。それゆえに、東京ディズニーリゾートが愛され続けるためには、おとぎの国のような、夢のような「ディズニー」の世界観を失わず、保ち続けることが最も重要なポイントとして挙げられるのだろう。
東京ディズニーリゾートは、世界で唯一ディズニーの資本が全く入っていないディズニーリゾートであるが、ディズニー側がそれを悔やんだほど、これまで成功を収めている。その成功には、日本人の欧米に対する憧れ、そしてそれを象徴するディズニーの世界観に対する憧れ、更に、その世界を完璧に再現しようとする日本人の細かさ、丁寧さが表れているのではないかと感じた。