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菊池華香「日本を盛り上げ、活気づく居酒屋」
1、はじめに
私達の余暇の使い方や過ごし方は人それぞれであり、楽しみ方もさまざま存在する。その中で誰もが身近に感じられる余暇の一つとして、居酒屋という場所がある。居酒屋は、社会人など世の中で仕事をしている人達の一日の疲れを癒すための空間の役割を果たすだけではなく、学生や友人同士でも気軽に訪れ利用できる居場所として存在している。また今日では更に幅を広げ、女性だけのグループや家族連れで訪れる顧客も増え、より広い層に定着してきているといえる。そこで、今回余暇ということからこれらの居酒屋について焦点をあて、調査を進めていきたいと考えている。
だが、居酒屋といっても日本全国どこにでもある身近なものであり、チェーン店で経営されているものから個人で経営されているものまでさまざまな分野がある。そのため、今回の調査ではもう少し分野を絞って調査をしていきたい。その中で今回特に「日本を元気にしていこうとする居酒屋」というものに着目してみようと思う。そして、居酒屋が今日人々にどのような影響を与えるかということについて調査を進めていきたいと思う。
2、なぜ人々は居酒屋に集まるのか?
居酒屋は宇都宮にも数え切れない位あるように、日本全国どこにでも存在し、現在ではどこの地域にでも存在する身近なものとなっている。お店の数と同様にその経営方針や、お店が作り出す雰囲気というのも多種多様である。たとえば、しっとりとした雰囲気を楽しみながらお酒を飲むことができるお店や、活気あふれる従業員の中で日ごろの疲れやストレスを解消するお店など、利用する人々やお店の持っている雰囲気もそれぞれ異なるものがある。それでは、なぜここまで居酒屋というものが日本に浸透し、人々は訪れるのだろうか。
確かにお酒の種類も豊富であり、食事も気軽にできるという面で居酒屋は訪れやすい場所となっているが、それだけが居酒屋に人々が訪れる理由ではないはずだ。上司や同僚との付き合い、歓送迎会などのため利用することや、日ごろの出来事やストレスや悩み事を解消するために訪れる場合ももちろんある。また、それだけではなく、その場のお店の雰囲気を味わいながら、楽しく飲み食いすることを求めて訪れる人々も多くいるのではないか。だからこそ、お店によってお客さんのジャンルや層が異なり、今日では、ただ単にストレス発散や日ごろの疲れを癒すための場所としてではなく、一種の楽しみやリフレッシュをする、そして元気を与えてくれる場所へと変化し、幅広い層の人々が居酒屋に訪れるのではないかと考える。
3、今までにない活気ある居酒屋
日本の不況に伴い、居酒屋も顧客が減ることによって経営が悪化しているお店もある。そんな中で、「日本に元気をもたらそう」という目標をもとに、現在、『居酒屋甲子園』[1]というものが注目されている。
居酒屋甲子園とは、“居酒屋から日本を元気にしたい”という想いを持つ全国の同士により開催された、外食業界に働く人々が、最高に輝ける場を提供する大会として2006年に始められた新たな取り組みである。全国からエントリーされた居酒屋のうち、独自の選考基準で選ばれた優秀店舗が、年に一回、数千人が集う大会場に集結する。そしてステージで自店の思いや取り組みを発表し、居酒屋甲子園における日本一の店舗を決定し、外食業界で働いている人が夢や誇りを持てる大会にすることを目指している。[2]
『料理を作るのも、サービスを行うのも「人」、生産者、お客様、全て関わり合うのも「人」である。そこで、外食で働いている「人」が誇りを持ち、夢を持ち、いきいきと輝いている状況をつくれば、お客様に元気を与えることができ、そのことによってお客様が輝き日本を元気にしていく。その為には、まず、居酒屋という飲食業界の人々が誇りと夢を持ち、「共に学び、共に成長し、共に勝つ」』という理念をもとに開始された、現在広まりつつある新しい取り組みである。
4、魅力をあふれる居酒屋
3で述べた居酒屋甲子園というものが始まる前に、このような居酒屋に対する感覚に変化を初めてもたらした人がいる。その人は「大嶋啓介」といい、現在人々に“夢とありがとう”で世界中を元気にしようという目標を掲げ、居酒屋「てっぺん」[3]を立ち上げ活躍している人物である。彼の立ち上げた「てっぺん」というお店は、普通の居酒屋とはまったく別世界であり、前向きになれるような一風変わった場所といっても過言ではない。というのも、定員全員がそれぞれ目標を持って夢に向かっている姿が接客からも窺うことが出来、今までに見たことない位、お店に活気があふれている。そして、「てっぺん」という居酒屋が人々から魅力を集める一つのきっかけになっているのが、他のどの居酒屋にも見られない「朝礼」というものである。この「朝礼」はお店の開店前に、お客様を迎える前にスタッフ一人一人の本気を引き出し、スーパーハイテンションな状態にし、最高の状態でお客様を迎えることを目標に毎日行われている。[4]この朝礼には、誰でも参加でき自分の夢について熱い思いを語ることもできるのである。これらのように、店員一人一人が目標を持ち熱い思いと感謝の気持ちで接客することは、訪れた人々を感動させ、夢と勇気を与える場所へと変化し居酒屋の新境地といえるような魅力あふれる空間となっている。では、そこを訪れる人々はどのような反応をし、お店は人々にどのような影響を与えているのだろうか。
5、そのお店に訪れる人々の反応とお店が与える影響
居酒屋「てっぺん」を始めて訪れた人は絶対と言ってよいほど多くの衝撃を受ける。その衝撃とは、今までに経験したことないような居酒屋という概念を越えた世界に感じられ、店員さんの思いの熱さや接客に対して多くの驚きをうける。私自身実際にそのお店を訪れたのだが、今までにない、熱心で頑張って接客している姿を見て、晴れ晴れとした気分になるような気持ちのよい接客を目の当たりにした。またそこを訪れたお客さんには全員に笑顔が見られ、人々は元気を与えられ、楽しい時間を過ごしながら帰っていくような気がした。このように私が感じた事や、また周りのお客さんが訪れて実際に感じる感覚は、他の居酒屋では体験することのない独特のお店の雰囲気があってこそだと私は思う。
私達にとって居酒屋は、従来、訪れた人と共に飲み食いをしながら時を過ごすのが当たり前であった。居酒屋で知らない人と話す機会などないことが当り前であろう。しかしこのお店では、全然知らなかった人々とも、違和感なく自然に一体感を味わうことが出来たり、日ごろの感謝の気持ちがどれだけ大切なものかを考えさせられたりするきっかけを与えてくれる。そして何より訪れた人々に夢と元気を与えてくれ、人々の心を動かす多くの影響を与えているのではないかと私は感じた。
人々の反応としては、ほとんどのお客さんが、感動を与えられ衝撃を受けるが、中には、元気すぎるお店であるが故に、静かにしっとりとして飲む雰囲気を求めている人にとっては不向きであるかもしれないと反応する人もいた。しかし、人それぞれ考え方が異なるように、お店の雰囲気を求めるのもそれぞれである。店員さんとも話すきっかけもあるので、訪れたグループ内だけで楽しみたいのであれば、求めている雰囲気としては違うかもしれない。しかし、この居酒屋では、だれしもが楽しめることには間違いはないであろうと私は感じる。
6、考察
今回「日本を盛り上げ、活気づく居酒屋」ということで、飲食業界に新たに開発されつつあるお店づくりや、接客を大切にしている居酒屋について調査をしてきた。不況が続き、混乱している社会の中で生活を営んでいる私達は、楽しいことばかりではなく多くの不安や悩みごとを抱え、日々ストレスなども感じているだろう。そんな中で身近なストレスや悩みを解消させる一つの余暇の場所として居酒屋が存在しているわけだが、ストレスの解消法や人々が居酒屋に求めるものは従来と大きく変化しつつあるのではないかと今回の調査をして考えさせられた。ただ単に、飲み食いや場所を提供するだけではなく、日ごろの自分を見つめ直すきっかけや、自分の夢、感謝の気持ちについて考えさせられる機会も提供するという居酒屋の新しい取り組みは、人々に多くの元気や勇気をあたえ、日常生活のリフレッシュになるだけではなく、これから生活を送っていく中での生きる活力さえも与えるような存在になっているのではないかと感じる。
居酒屋の存在の仕方はそれぞれであり、求めていることも多種多様ではあるが、今回とりあげた「居酒屋甲子園」などの取り組みによって余暇として訪れる人々に多くの影響を与え、前向きな気持ちにさせる独特の雰囲気を持ち合わせた居酒屋という存在は、これからも多くの人々のストレスや悩みを解消させ、ますます人々にとってなくてはならない特別であり、そして気軽に訪れる余暇の一種の憩いの場所へとなるのではないかと考える。そして、余暇というものが、人々にとってより有意義で充実した時間を過ごせるものへとなり、人々に広く良い影響を与えるものへと変化していけばよいのではないかと私は改めて考えさせられた。