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加藤ほのか「スラムダンクはなぜ人気があるのか」
1.はじめに
この漫画大国日本には数えきれない程の漫画があふれている。その中でも一際人気を集めている漫画といえば”スラムダンク"(スラダン)ではないだろうか。皆さんも一度は聞いたこと、読んだことがあるだろう。スラダンは日本の漫画人気ランキング1位となっており、単行本1億1400万部を突破している。また、完結してから何十年経った今もなお各世代、男女問わずたくさんの人に愛読されている。私もその中の一人だ。今まで読んだ漫画の中で三本の指には入る。様々なジャンルの中で、また数あるバスケット漫画の中でなぜこんなにも人気を誇っているのか。
ここでは、スラムダンクの中身を紹介しながらスラムダンクが与えた影響とともにその真意に迫っていこうと思う。
2.スラムダンクとは(あらすじ)
桜木花道という不良がひょんなことがきっかけで湘北高校バスケットボール部に所属する。ド素人であり、最初はふざけていた花道だがいつのまにかバスケットマンになっていく。スポーツ(バスケットボール)を通して主人公たちの成長とともに仲間との問題や暴力問題、敗北などを部員みんなで乗り越えて全国大会へ向かうところが描かれている。笑いあり涙ありとはまさにこのことだと示している漫画である。ちなみにスラムダンクとはゴールがこわれるんじゃないかというほど激しくたたきこむダンクのことをいう。
3.キャラクター設定
スラダンの人気の理由の一つとして挙げられるのはそれぞれが濃いキャラを持っているからだと考える。メインキャラクターだけでなく、サブキャラクターまでもがいいものを持っている。そのため、サブキャラクターのファンも少なくない。ここでメインキャラクターの紹介をしたいと思う。まず、部長の赤木憲剛。ゴリラのような顔つきでごついが頭はいい。ポジションはセンターでまさに縁の下の力持ち、チームを精神的に支える存在。誰よりも全国制覇を夢見てきた。メガネ君こと小暮公延は副部長であるがスタメンではない。だがつらい練習で多くのひとがやめてく中やめずに残り、赤木と全国を夢見てきた。性格は優しく、面倒見がいい。三井寿、通称みっちゃんは中学時代県MVPをとるほどの上手さを持っていたが怪我で挫折し、一時期不良になってしまった。しかし更正しまた安西先生のもとでバスケがしたいと言って戻ってくる。ポジションはシューティングガードで3Pが得意。宮城リョータは背は小さいがその分電光石火のような走りで、ドリブルなら誰にも負けない。ポジションはポイントガード。喧嘩っ早いが実は恋に一途でいいやつ。流川楓はバスケットセンス抜群で女の子にモテモテだが、バスケ以外一切興味がない。キレると怖い。高校生bPプレーヤーを目指していてポジションはスモールフォワード。桜木花道はド素人だが身体能力はずば抜けていて成長が早い。問題児だがだんだん立派なバスケットマンとなっていく。ポジションはパワーフォワード。この人たちが中心的な人物であり、湘北のスターティングメンバーである。みんなバスケに対する思いは熱いが、問題児の集まりのため、喧嘩っ早いのが短所である。しかし読者はまたそんなところに惹かれてしまうのかもしれない。近年流行した”ルーキーズ”というドラマを知っているだろうか。このドラマもまた不良たちが更正し、甲子園という夢に向かうというのが描かれている。なぜか不良と青春という設定には惹かれてしまう。不良というのが自分とは違うものを持っているのに加えて、青春(高校の部活)というものには必ずといっていいほど感動がついてくるためついつい読みたくなってしまうのだと考える。また、不良だったがスポーツに対して真剣に向かっていくというギャップにやられてしまうのも理由の一つではないだろうか。サブキャラクターについていえば、対戦高校の相手がほとんどである。少ししか出る場面がなくてもその中で凄く心に残る言葉や行動を残していくため愛されているキャラクターがたくさんいる。また、最初は敵同士でにらみ合っていたメンバーたちが後々仲良くなっていくという男らしい、スポーツマンらしい、あっさりした関係にこちらも気持ち良くなる。
4.名言集
スラムダンクが人気の理由として名言が多く出されていることも挙げられるだろう。ここでいくつか心に残った名言を紹介したいと思う。
「あきらめたらそこで試合終了だよ」安西先生が中学時代の三井に言った言葉。このおかげで三井は県優勝した。
「歩けなくたっていい。やっとつかんだチャンスなんだ」赤木が怪我をしてまで試合に出たいと思う勝利への執念からでたセリフ。
「俺たちは強い」チームが一気に団結する合言葉。
「オレは・・・オレは今なんだよ!!」試合中に背中を痛め、交代を言われたが、安西先生に抵抗して放った言葉。
「大好きです!スポーツマンですから。」桜木花道が晴子からバスケットは好きですか?と聞かれて答えたセリフ。
「バスケがしたいです」三井が安西先生に言った言葉。スラダンの名言といったらこれっ!というほどの名台詞。
「左手はそえるだけ」桜木花道が山王戦、最後のシュートを放つ際にシュートのコツを口にした。これで山王戦に勝った。
この他にもたくさんの名言がごろごろしている。ここまで名言が盛り込まれている漫画は珍しいと思う。一言、一言が読者の心に響くのである。それが日常生活の中でふと思い出され、影響されることがある。読んだだけで終わらない漫画である。(http://www.geocities.jp/suradanfreaks/)
5.漫画での絵の効果
スラムダンクは単行本では全31巻、完全版全24巻が出ているが話自体は3カ月しか経っていない。これは試合の1個1個、1場面1場面が詳しく大きく描かれているからである。話がスムーズにいくところはいくが、瞬間的に止まってしまう場面の感じが読んでいる側にまで分かる描き方をされていると思う。こちら側にまでハラハラとした緊張感が伝わるのである。このように話に緩急があるとおもしろく、飽きずに読める効果があると思う。
6.スラムダンクが与えた影響
中国ではスラダンをきっかけにバスケ人口が増え、タイミングよく始まったプロリーグが観客動員を増やし、そこに経済政策の転換という条件が重なり、10年以上経った今は世界に通用するバスケ大国になったという。(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/foxx/article/104)
日本の漫画がここまで他国にまで影響を与えるなんてもう世界のスラムダンクと言えるだろう。
また、アメトーーークという番組では”スラダン芸人”といった企画がもちかけられた。これはスラダンが大好きな芸人が集まり、熱く語るというものである。視聴率も高かったようだ。この収録はDVDとしてもだされている。
7.まとめ
今回、「なぜスラムダンクは人気があるのか」についてキャラクター、名言、描写効果、の面から考えてみた。まず、一番惹かれているのはキャラクターの良さだと思う。主要メンバーだけでなく周りのメンバーにもそれぞれ個性の強さが与えられているところに注目である。いろんな人にスラダンで好きなキャラを聞いても比較的被ることは少なく、様々なキャラが挙げられる。他の漫画では脇役のキャラはあっさり流されているイメージがあるため、スラダンの脇役は余計濃く見えてしまう。さらに、不良がスポーツに熱くなるという設定がなんともいえない。不良に変な憧れを感じ、スポーツを頑張っている人に対して感動を覚えてしまうのはもはや自然の感情であり、スラダンにはそれがある。次に名言や描写から見てみる。名言はまるで自分に言われているように胸に深く突き刺さる。私は小学生から高校までバスケをしていて、試合前にはみんなでボルテージを上げるためによくスラダンを読んでいた。これのおかげで不思議と頑張れたのを今でも覚えている。描写ではバスケをやったことがない人までがその一瞬一瞬の緊張が味わえたり、おもしろさが共有できるようなところに多くの人に愛されている理由があるのだろう。
スラムダンクはこれからも国民的な漫画として読み続けられるに違いない。さらに世界に広く、未来の人たちに長く浸透してほしい。本当にお薦めする漫画である。