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岩崎芽依 「学食で世界とつながる〜余暇としての食事とTABLE FOR TWO〜」

 

1.はじめに

 私とTFTTABLE FOR TWO)の出会いは、宇都宮駅構内のNEWDAYSだった。いつもの陳列棚に見慣れないおにぎりが。“野沢菜しょうが昆布”というなんとも健康重視な商品名の横を見ると、“アフリカに価格の3%が送られます”とある。多くの企業が自社の商品を買ってもらおうと付加価値をつける中、「アフリカ支援」と「健康」をリンクさせたこの商品と団体に大いに興味が湧いた。本レポートでは、TFTの取り組みを通して、現在の食と余暇の関係を考察していきたい。

 

2.TFTTABLE FOR TWO)とはなにか

 TFTとは、貧困状態にある人々と、食べ過ぎによる肥満のどちらも解決し、“食の均衡”を図るために発足したNPO団体である。具体的には、「社員食堂を持つ企業や団体と提携して、通常より低カロリーで栄養バランスのとれた特別メニューを提供」[1]し、そのメニューに20円を上乗せすることで、「寄付金としてTFTを通じてアフリカに送られ、現地の子どもたちの給食費」[2]となる。現在241の企業や団体が社員食堂にTFTメニューを取り入れたり、店舗で商品を販売するなどの協力をしている。集められたお金はウガンダ・ルワンダ・マラウィの「5歳未満の子どもの20%以上が基準体重未満の深刻な貧困状況が生じている」[3]地域で使われている。

 

3.TFTとのコラボ商品の例

社員食堂導入以外の方法として、TFTとのコラボ商品を提供していた企業もある。その例として大手ファミリーレストラン“デニーズ”が挙げられる。デニーズは南アフリカでワールドカップが開催されることを記念し、アフリカに届け!“熱いエールとあったかランチ!!”キャンペーンに参加した。期間限定で販売された「南アフリカ風レッドトマトビーフカレー」と「ドライカレーと卵のオーブン焼き」を私は試食することが出来なかったが、デニブロによると「南アフリカを意識したホットな仕立て」[4]だったそうだ。

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[1][2] 小暮真久(2009)※

“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド「20円」で世界をつなぐ仕事』

[3] TABLE FOR TWO公式サイトhttp://www.tablefor2.org/countries/countries.html

201076日現在)

[4]デニーズブログhttp://www.dennys-jp.com/blog/2010/06/tft_1.php

201072日現在)

またNEWDAYSもその一つである。“カラダにいいこと×ココロにいいこと”キャンペーンと銘打ち売られた商品のポイントは、「ヘルシー志向の女性向けに、『カラダが喜ぶ4STEP!』と称し、女性の美容と健康を専門にした女性管理栄養士が監修した特別メニュ

ーを開発したこと」[5]である。実際に私が食べたのは“野沢菜しょうが昆布”と“ライ麦くるみ&チーズ”の2種類だ。特におにぎりは、しょうがの風味と歯ごたえがクセになり、常時置いてほしいと思える商品だった。どちらも他のおにぎり、パンと値段は変わらず、夜7時を過ぎると売り切れていることがほとんどだった。

 

4.大学の学食にTFTを導入する

TFT42大学でも受け入れられている。そして今回、新たに学習院大学に導入しようと活動している近藤俊君に話を聞くことができた。彼には学食導入までの流れを聞いた。

まず4月にTFTについて研究し、学習院大学では可能なのかについて調査したそうだ。学食の業者が生協だと利益重視ではなく柔軟なのだが、本大学はセブン&アイだということで長期戦になることが予想された。また、本大学は保守的なものを重んじることから、学生部には相談せずに行う事を決定。5月、学食に提案書を提出した。提案書がめぐり巡って学生部に渡り学生部に呼び出されたが、思いのほか協力してくれることになった。しかし、学食の業者が変わるから後期まで待つという展開に。活動停止かと思われたが、TFTを知らない生徒がほとんどということで、学生への周知を目標に6月から、10月の学祭導入へ現在も奮闘中である。

もし宇都宮大学に取り入れるとしたら、と考えてみた。宇都宮大学の学食は生協が運営している。また本校には国際学部を中心に、世界の飽食と飢餓に関心がありTFTに理解を示す学生は多いと見られる。実際この話をサークルの代表などにしてみると、いくつもの団体が「協力したい」と回答してくれた。またこの仕組みは、“募金”など財布を出すのに抵抗がある人も、自分がランチを購入するだけで自動的に寄付金を支払えるため、従来よりも参加しやすい。アフリカや支援に興味がなかった人も巻き込めるという利点もある。

しかし問題点もある。まず支援先だが、TFTは経費削減のため、給食室を作って実際に調理するという方法を取らないため、「既に給食を配るしくみを持っている現地の団体と組」[6]んでいる。よって貧困問題の対処には選ばれた地域の、特定の小学校という制約が生まれてしまう。また導入にあたり、TFTは決まったメニューを持っていないため、生協に新メニューの提案とその調理をお願いしなければならない。学生主体で導入できる分、何名かの学生は導入前、後共に関わっていく必要がある。

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[5]gooニュース NEWDAYS」の商品を買うと誰でも手軽に社会貢献ができる

/山田 美帆 http://news.goo.ne.jp/article/insightnow/business/insightnow-5328.html2010615日現在)

 [6] ※同文献

5.余暇と食事の関わりを考える

TABLE FOR TWO『2人のための食卓』、それは私たちの余暇としての食事を変える可能性を秘めている。

カロリーオフである、野菜を中心としたランチを食べることで健康になれる。余暇としての食事に“ダイエット”や“メタボ対策”が含まれるとしたら、多くの企業や大学が協力しているという“話題性”も含め、TFTはまさに余暇としての食事ではないだろうか。

さらにアフリカ支援もできる。先に問題点を記述したが、今よりさらに参加団体が増えれば、支援先も広がる可能性も考えられる。

 

世界のどんな国の食材も料理も手に入る今。食べ物で世界と繋がることもできるが、「食べることで」、世界と繋がってもいいのではないだろうか。