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飯干 舞「現代社会においての駄菓子屋の存在価値〜子供の居場所を守るためには〜」

 

 

1.はじめに

 

私は、駄菓子屋「飴ん坊」というサークルに所属している。主に毎週水曜日に駄菓子屋を開き、年に数回、夏祭りや地域のイベントへの出張出店を行っている。

 

現在、デパートやスーパーの一角に駄菓子やコーナーはあるが、昔ながらの一店舗での駄菓子屋はほとんど見かけない。かつて、子供のたまり場であった駄菓子屋が減少した今、子供たちはどこでどのように余暇を過ごしているのだろうか。本レポートでは、子供の居場所について駄菓子屋を通して考察していく。

 

 

2.遊ぶ場所がない今の子供たちは遊びをしらない?

   

   611日の日経新聞に、「小学生の4人に3人は「缶けりをしたことがない」――その理由は?」という記事があった。20代以上の人は92.4%の人が「したことがある」と回答したのに対し、今の小学生はわずか25.0%にとどまっていることがUCCの調査で分かった。また、その理由として、「場所がなかった」と答えた子供がもっとも多く、子供たちが集まって自由に遊べる場所が失われている。さらに、缶けり自体知らない子供たちも多い。[]

 

子供たちにとって集団で遊ぶことは成長していくうえでとても大切なことではないだろうか。子供のこうした居場所がないからこそ、テレビゲームや一人遊びが主流になっており、協調性やコミュニケーション能力の低下につながっているのではないだろうか。

 

 

3.子供の居場所を守る〜飴ん坊〜

 

   「飴ん坊」は2004年にスタート。当時、教育学部の陣内雄次教授の研究室の女子学生が卒業論文のテーマで「子どもの居場所」を取り上げ、文献などから究極の子供の居場所とは「駄菓子屋」ではないだろうかという一つの答えをみつけた。

 

実際に自分の研究フィールドとして駄菓子屋をはじめることに決め、たまたま大学前に空き店舗があり、オーナーのご好意により、家賃無料で始めることができた。

 

現在では、宇都宮市の青少年の居場所事業の補助を受けている。運営する学生が少ないことや、来てくれる子供たちの減少など、存続の危機が何度かあったが、子供たちによる口コミのおかげにより、毎週たくさんの子供たちが来てくれ、賑わっている。

 

 

4.「駄菓子屋」の存在価値とは

 

  駄菓子屋は、単にお菓子を売り買いするだけでなく、子供たちが集まって遊べる場であり、また学ぶ場でもある。小銭を握り締めてきて、何を買うのか一生懸命考え、自分で選び、お金のやりとりを行う。

 

宿題が終わってからでないと行っては駄目という親との約束をしっかり守って「飴ん坊」に行くことを楽しみに宿題を頑張ってくれる子供がいる。

 

  時には子供たち同士けんかをしてしまうこともあるが、自然と仲直りし、何事もなかったかのように仲良く遊ぶ姿もよく見かける。また、飴ん坊では子供たちが考えた「サービス券」という物も取り入れている。これは、50円分買ったら1枚貰え、10枚貯まったら100円分のお買い物ができるという券である。

 

子供たちが考えたアイデアを取り入れ、子供たちの世界を作り出していく。子供たちは、私たちが考えるよりもよりクリエイティブでユニークな発想を持っている。

 

  このように、駄菓子屋という空間の中で子供たちは社会性を身につけ、人と人との付き合い方を学ぶ。[]ルールを守ること、友達と仲良く群れて遊ぶこと、思いやりをもって分け合うことなど様々な経験ができる。たくさんの経験を通して子供たちは成長する。

 

  また、医学的な面から、「集団での遊びの中から健全な脳が育っていく」とされている。集団で遊ぶことで脳の自我を形成する部位が健全に育つのだという。子供たちが自ら考え、行動し、“生きる力”を身につけていく。[]デパートやスーパーなどの駄菓子コーナーでは、お金のやり取りは学ぶことができても、このような友達同士の交流はできない。

 

 

5.地域を活性化させるコミュニティ

 

駄菓子屋は、子供たちだけでなく、地域コミュニティの活性化にもつながっているのではないだろうかと考える。私は、お祭りなど地域のイベント出張出店をしてみて、駄菓子屋は、子供たちは勿論のこと、保護者やお年寄りの方たちにも喜んでもらえる場であると感じた。

 

お年寄りの方は、子供のころによく食べていた駄菓子が今も変わらずあるという懐かしい気持ちになり、自然と笑顔になっていた。幼い子からお年寄りまで、気軽に来やすい場である駄菓子屋は、そのような子供と大人の交流の場でもある。また、お母さんたちの情報交換の場でもあるようだ。

 

子供たちを取り巻く環境がよりよくなれば、もっとのびのびと成長できるのではないだろうか。ニュースや新聞等で子供たちを狙った事件が多い現在の世の中で、自由に遊ばせることは、保護者からするととても不安で心配であろう。だからといって、子供たちから遊ぶ場を奪うことは、子供たちの成長を妨げることになる。地域全体で子供が育っていく環境を作り出し、守っていくことが今後の課題ではないだろうか。

 

 

 

 註



[]日経新聞 2010611日 

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1006/11/news065.html  (2010/06/29現在)

 

[] 京都新聞 2005223

http://www.kyoto-np.co.jp/ad_tokusyuu/ad_sanka/2005_news/050223.html (2010/07/05現在)

 

[] FNSドキュメンタリー大賞 『失われた子供王国〜駄菓子屋空間が育てる脳と心』

 http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/backnumber/back/02-283.html (2010/07/05現在)