100623余暇政策論 hiratar

国際学部 国際文化学科 3

080541U 平田 龍司

 

奄美の方言と豊年祭

 

1、はじめに

   私の地元である奄美大島には、独特な方言と伝統行事が多く存在する。今回は「奄美の方言と豊年祭」というテーマで、方言と豊年祭という行事の2つの事柄に焦点を当てて考察していきたい。そこで、まず、方言についてであるが、方言といっても、方言自体を調べるとなると、莫大な情報量と時間が必要となるため、ここでは、「消滅の危機にある奄美の方言をどう次世代に残していくか」というのをテーマに考察していきたと思う。次に、伝統行事についてであるが、この点も方言同様、ひとつの行事に絞り、考察していきたいと思う。また、方言と伝統行事を考察していくうえで、2つの事柄を独立した別々のものとして考えるのではなく、2つの間に関連性を見出したい。

 

2、方言

   まず、奄美大島の方言についてであるが、奄美の方言は、大きく分けて、奄美大島の・喜界島・与論島・徳之島・沖永良部島の5つの方言に分かれる。しかし、今回は私の出身地である、奄美大島の方言についてのみ取り上げたいと思う。奄美大島は大きく分けて古仁屋を中心とする南大島と、名瀬市を中心とする北大島の2種類の方言に分かれ、アクセントが全く違う。また、名瀬市は奄美群島内の中心地であるので、各地域からの出身者が多く、トン普通語といわれる独自の方言がある。トン普通語とは、昔からの各地域の方言と、新しくできた方言と、新しくできた方言と標準語がごちゃまぜになってできた奄美独自の方言のことをいう。これを使うのは若い人が多く、昔ながらの方言(例えば“いらっしゃい”の意味のイモレなど)は年配の方が使うぐらいで、生活の中ではあまり使うことはない。では、ここで、奄美の島唄を一部紹介したいと思う。

   “キュウ ヌ ホコラサー ヤイチメリム マサリ イチムコウヌグートウ二 アラシタボレ”(きょうの誇らしいこと、いつもより誇らしい。いつもきょうのようにあってほしい)

   この唄は祝いの席で歌われる唄であるが、伝統行事の中で歌われることが多い。しかし、最近では、島唄を歌うことができない若者が増加している。私もその若者の一人であるが、なぜ、そのような若者が増えてきているのであろうか。私が考える理由の1つとして、若者の「島離れ」ということがあげられる。島には職がなく、都会に上京する若者が増加し、現在の奄美大島は少子・高齢化が進んでいる。私の住んでいる地区も同様で、「島唄(または方言)を教えようにも、若者がいない」という言葉を私は、よく耳にしていた。少子・高齢化は、島唄や伝統行事の消滅の理由でもあり、次で述べる「方言の消滅」にもつながる、大きな要因と言えるのではないだろうか。

Unescoは、20092019日、世界で約2500の言語が消滅の危機にあると発表した。そこには、「奄美語」が取り上げられており、奄美の方言を消滅言語の危機にある1つの「言語」として認めたのである。UNESCOのフランソワーズ・リビエール事務局長は「言語消滅の原因には、次世代に伝える意思を失うという心理的要素が多い。自信を持って少数言語を話せるよう条件づくりに努めたい」と述べたわけであるが、では、「次世代に伝える」「自身を持って少数言語を話せるようになる」には、どのようにすればいいのであろうか。私は、まず、私たちのような若者が、積極的に伝統行事に参加することが、方言を残していくための第一歩になると考える。伝統行事に参加し、その地域の言葉に触れ、また、年配の方と話すことで、まずは、方言に興味を持つことが重要であるのではないだろうか。実際に私もそうである。伝統行事に参加し、年配の方や方言と接触し覚えた方言は数え切れないほどある。方言を残すという点で、それは、小さなことかもしれないが、若者が積極的にならない限り、方言を次世代に残すというのは困難なことであろう。

では、次に奄美大島の伝統行事について、方言を次世代に伝えるという点と関連付けながら考察していきたい。

 

http://www.osumi.or.jp/sakata/hougen/amami.htm

  http://jig134.mobile.ogk.yahoo.co.jp/fweb/0623d41BAgJqXxop

 

 

3、豊年祭

   まず、豊年祭とは「農作物の豊作を祝う祭り」(1)と定義されているわけであるが、私が住む集落では五穀豊穣を願い、豊年相撲が行われる。そのため、小学生から壮年まで力士となり、まわしをつける。まず、力士たちは「ヨイヤー、ヨイヤー」という掛け声とともに、五穀豊穣を祈願しながら、集落を歩く。祈願が終わったら、集落の公民館に戻り、豊年相撲が行われる。また、豊年祭では、相撲をとるだけでなく、相撲の合間に、余興で島唄が歌われたり、伝統的な踊りを踊ったりする。相撲は、昼の1時ころから始まり、夕方の5時ごろに終わる。そこからは、「八月踊り」がメインで、夜の9時ごろから土俵を囲み、太鼓のリズムに合わせて踊りを踊る。そこで使われるのが、やはり方言である。では、そこで、先ほども考えた、「方言の消滅」について、伝統行事という視点から考えてみようと思う。まず、私は、「方言の消滅=伝統行事の本質の消滅」と考えてもいいのではないかと思う。伝統行事の島唄や踊りは、その言葉や踊りの意味を知ってこその島唄や踊りであると私は考えているからである。意味も分からずに、ただ、その島唄や踊り自体を意味も知らずに覚え、歌ったり、踊ったりするようであっては、「次世代に残す」というにおいては、実現不可能に近いのではないだろうか。やはり、その島唄で使われている方言一つ一つの意味や、踊り一つ一つの意味を知ることが、次世代に残していく上で重要なことではないだろうか。それを教えてくれるのが、年配の方である。年配の方が持っている島についての知識というのは、非常に重要なものであって、かつ、私たち若者が次世代に残していかなければならない、島について知る一つのツールであると私は考えている。そういったものを私たちが得る最高の場が、伝統行事なのではないだろうか。方言を次世代に残していく上で、伝統行事に参加し、方言を知ることが、一番重要なことであると私は考える。

 

  (1) http://100.yahoo.co.jp/detail/%E8%B1%8A%E5%B9%B4%E7%A5%AD/

 

4、方言を次世代に残すには

   23でも述べたように、方言を次世代に残すには、やはり私たち若者自身が積極的に方言を知るまたは、触れることが重要であると考える。それは、それは小さな一歩に過ぎないかもしれないが、その小さな一歩が積み重なることで大きな成果を得られるのではないだろうか。その成果を得られる最高の場が、先ほどでも述べたように、伝統行事なのである。人それぞれ、方言への触れ方は違うと思うが、やはり、若者自信が行動を起こさなければ何も変わらないであろう。私も、方言を次世代に残す一人の若者であることを自覚し、今後も奄美大島の方言話者として、次世代が自身をもって方言を話せるような環境づくりに努めたい。