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速水絵里子「アメリカの緑茶事情」

 

1.      はじめに

 アメリカという国は、お茶文化が日本に比べて盛んでない。反対に、コーヒーのイメージが強い。スターバックスなどのコーヒーチェーンはアメリカにいたるところで見うけられる。実際アメリカに行った時、お茶という飲み物がコンビニでは売られてなく、アメリカの油っぽい食事に私は辛いところがった。しかし、健康志向や日本食ブームなどの影響でお茶が見直されている。お茶と言っても紅茶やウーロン茶など、種類はたくさんある。そこで私は、日本人に一番馴染み深いと考える、緑茶を焦点に置いてアメリカのお茶事情について調べ、日本のような緑茶は普及するのか、考えていきたい。

 

2.歴史的背景

 アメリカは独立前、イギリスの植民地だった。当時、イギリスでは紅茶が流行していて、アジアから大量に輸入していた。そして、イギリスの東インド会社は、アメリカの紅茶市場を独占しようとして、1773年、茶法を制定した。同年、これに反発した植民地側の人々は、マサチューセッツでボストン茶会事件を起こした。イギリスの過酷な税に植民地のアメリカ人が反対し、停泊中のイギリス船に侵入、東インド会社の紅茶を海に投げ捨てるという事件だった。この事件を期に、植民地の人々の間に、それまで愛飲していた紅茶をボイコットし、代わりにコーヒーを飲む習慣がついた。

これが、アメリカにお茶が浸透しなかった理由である。現代でも、その風潮は、根強く続いているようだ。しかし、最近になりお茶に対するアメリカ人の価値観は変化してきたように思われる。【1

 

3. お茶見直し

 今、アメリカは寿司や天ぷらなど、日本食を日常生活で味わうようになってきている。また、健康的な生活を望む人々にだんだんお茶が注目されるようになってきた。特に、日本食を好むために、緑茶が流行しつつあるのである。しかし、日本の渋い緑茶はアメリカ人の口に合わず、砂糖やミルクを入れて飲むのが一般的なようだ。私が、アメリカに行った時、レモン入りのグリーンティーを飲んだが、日本のお茶とはほど遠く、どちらかといえば紅茶のような感覚で違和感があった。今では、緑茶コカコーラやソーダといった炭酸飲料まで発売していて、日本では考えにくいものがアメリカでは意外に好評だという。アメリカで日本のお茶を広めるには難しいことなのだろうか。日本の大手企業である、伊藤園がその課題に取り組もうとしている。

 

 

4.     伊藤園の取り組み

 日本の伊藤園は、アメリカにお茶文化を広めるため、ニューヨークに本社を置き、アメリカのお茶市場の拡大を狙っている。

伊藤園のTeas’ tea New York は、最近、新たに伊藤園から販売された紅茶なのだが、この紅茶の舞台はアメリカのニューヨークである。伊藤園は、アメリカに日本のお茶文化を広めるために新たに開発した。ニューヨーク州ニューヨーク市の中心街マディソン通りにあるティーショップを基盤に2001年からITOENNorth AmericaINCが展開した。リラックスとヘルシーなイメージの紅茶を中心に展開しているティーブランドである。20085月にラスベガスで開催されたWorld Tea Expo(世界茶博覧会)では、無糖フレーバー部門にて、賞をとった。このように、teas’ tea (お茶の中のお茶)ブランドはアメリカで生まれ、日本人向けにやさしい味にアレンジされた紅茶ブランドである。【2

 伊藤園は、teas’ teaブランドを中心に、アメリカで日本のお茶を浸透させている。この取り組みは、アメリカのお茶文化の広がりに原点になるのではないかと思った。

 

5. 伊藤園調べによるアメリカの大学生に緑茶イメージ

 伊藤園は平成12年アメリカ人の緑茶に対する意識調査を行った。選択肢を6つ設け、うち3つは緑茶の産地を表すもの(OrientalJapanChina)残り3つはイメージや特徴を表すもの(HealthyBitter Medicine)にし、これらの中から回答者の方々にイメージするものを選んでもらった。その結果、これらの中でもっとも緑茶と関連づけられたのは、Japan49%)となった。次いで、Healthy38%)、Oriental37%)、China19%)、Bitter8%)、Medicine4%)となったとある。【3

 このことから、アメリカの緑茶のイメージは日本という国が強いのだと思った。そして、その日本は、アメリカ人に比べると細く、緑茶を飲めば、日本人のようなスリムで健康的な生活ができると考えているため、Healthyが二番目に多いのではないかと考えた。緑茶と健康というイメージは定着しているといえるのではないかと思う。それなのに、アメリカ人は、健康より味を重視するような考えを持っているため、レモン味やはちみつ入りのような甘い味を優先してしまうのではないだろうか。これに対して伊藤園は、新たな試みに取り組もうとしている。

 

6.ニューヨーク派遣員

 今、伊藤園はニューヨークの最新お茶事情を調査してほしいということで、派遣員を募集している。簡単な審査の上、1020名に特派員として6日間のニューヨーク取材旅行をしてほしいそうだ。それをペットボトルのラベルで募集している。【4

ニューヨークでのお茶事情を調べるには、新たな目線が必要なのではないのだろうか。そのため、今、伊藤園は、顧客目線でアメリカの市場にどういう風に日本のお茶を浸透させるべきかを、課題にしているのではないかと思った。

 

 

7.未来のアメリカのお茶文化

 現在、アメリカでは、コーヒーを飲む習慣はまだ確立されているが、お茶に対する嫌悪感はないと思う。つまり、アメリカは今、日本の緑茶を受け入れようとする姿勢ができていると思った。しかし、日本の渋い緑茶はアメリカ人が好むような味ではない。その結果、日本では考えにくいような味の緑茶が現地で根付いてしまっている。それもティーパックが中心でペットボトルのような飲みやすい形では売られていないため、お茶文化の妨げになっていると考える。

次に、緑茶=日本・健康というイメージがアメリカで完成しているのは確かであるとわかった。ジャンクフードやファーストフードを好むアメリカ人は、手軽に飲めるような形を好むだろうと考えるため、ペットボトルでの販売がやはり好ましいのではないだろうかと思った。加えて、アメリカはサプリメントなどで栄養を補おうとする意識が高い。サプリメントの効果と同様の効果(カテキンの栄養素など)が得られることをアピールすれば、より、緑茶の需要は増すのではないかと考えた。

このことから、アメリカでの緑茶市場はこれから拡大し、流行していく可能性が大いにあると思った。その先駆けとして、伊藤園がニューヨークに本社を置き、現地での市場拡大を狙っているのは、アメリカの緑茶事情を知っている結果ではないだろうか。これからの伊藤園の取り組みに注目して、アメリカでの緑茶の広がりを見ていきたいと思う。

 アメリカ人がスターバックスでコーヒーを飲むような風景は一般的だが、もうすぐそれがお茶に変わっているようなことが起こったら面白いのでないかと考えた。私は、アメリカ人の余暇の時間にお茶が流行するような時代を見てみたいと思った。

 

 

 

1】世界のお茶 http://www.o-cha.net/japan/world/report/report04.htm ( 2010/05/31現在)

2】【4TEAS’ TEA       http://www.teastea-ny.jp/  (2010/06/22 現在)

3】伊藤園 https://www.itoen.co.jp/news/2001/122101.html (2010/07/06               現在)