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佐藤由香利「若者を魅了し続けるレイブパーティー」

 

 

1.       レイブとは

 

 レイブとは、野外で行う音楽パーティーのことを指す。

 

会場にはテクノ、ハウス、トランス等のアップテンポなダンスミュージックが大音響で鳴り響き、踊るもの、瞑想するもの、寝ころんでいるもの、ドラッグでトリップしているもの、フリーマーケットをしているものなど、実に多様な人間が共存して音楽を楽しんでいる。

 

彼らの共通の目的は、音楽に陶酔し、しばしの間日常生活の空間から離れてトランス(恍惚)状態を楽しむことである。レイブの語源は、ロンドンのジャマイカ系移民の俗語でパーティーを意味している

 

 私自身も良くレイブイベントに遊びに行くが、どうして今日に至るまで若者はレイブに魅了され、駆り立てられ続けるのか。その疑問が、今回のレポートのテーマに挙げた理由である。

 

 

2.レイブの歴史的背景

 

 現在見られるようなレイブの発祥は、1980年代後半のイギリスである

 

クラブカルチャーが隆盛した時期に、テクノ・ハウスという当時の流行の音楽と、エクスタシーやLSDなどと呼ばれる多幸系ドラッグの流行により、屋内中心の若者のナイトライフは、車庫や郊外の廃屋、農場など屋外へ移っていく

 

その特徴は、クラブ産業やメディアや音楽産業の商業目的の活動とは異なり、若者たち自身が非商業的に、自分たち自身が楽しむことのみを目的とし、開催されたものであることだろう。またアメリカを発祥にヒッピーと呼ばれる新しい人種が生まれたことも、レイブが繁栄していくにあたり大きな影響力を及ぼしたとみられる。ヒッピーとレイブの関係は第3章でより詳しく考察していくものとする。

 

 レイブは、短期間のうちにドイツやオランダ、ベルギー、インドのゴア、地中海のイビサ、タイのパンガン島、オーストラリアのバイロンベイ、ハンブルグ、東京などに広がり現在に至っている。

 

 レイブと切り離せない関係にあるのが、トランスミュージックである。一口にトランスミュージックといってもその種類は、実に豊富だ。メロディライン重視のエピックトランスや、無機質で金属的な質感のサイケデリックトランス、音数が少なくアップテンポのものが多いユーロトランス、既存のカテゴリーにとらわれないプログレッシブトランス、またインドのゴア地方で発展したゴアトランスや、スペインのイビザ島を中心に発信されるイビザトランスなどがある

 

 しかしレイブの広がりは、若年層へのドラッグの浸透促進など社会不安の原因も呼び起こした。各国の政府や警察は、レイブを取り締まるようになる。レイブ発祥の地、イギリスでも94年には「クリミナル・ジャスティス・アクト」という反レイブ法が制定され、警察の許可のない野外での大音量と反復ビート音楽が禁止された。各国の政策に伴い、かつての非商業主体レイブは、数を減らしていき、警察の許可の元で巨大な会場を貸し切って行うレイブや、有名DJが訪れるレイブなど、参加費を徴収する合法的で商業的なレイブが一般化していくこととなる。

 

 

3.ヒッピーカルチャーとレイブカルチャーの共通点と相違点

 

 ヒッピーとは、伝統・制度などの既成の価値観に縛られた社会生活を否定することを信条とし、自然への回帰を提唱する人々の総称である。ベトナム反戦の運動を中心に1960年代のアメリカで誕生し、新人類と呼ばれたヒッピーは一大ムーブメントを起こした。音楽と平和と自由と芸術、そして自己陶酔と覚醒、瞑想などに明け暮れドラッグを使用するヒッピーカルチャーとレイブカルチャーは大きな関わり、そしていくつかの共通点を持つ。 

 

まず、アルコールやドラッグ等でメディテーションもしくは、幻想や非日常な体験を追求する点にある。彼らは共通して、東洋文化を崇拝し、ヒンズー文化やイスラム文化に興味を持ち、サイケデリックな世界に陶酔し、グルの存在を探究する。

 

また、自然や宇宙などとの共生を図り、自分自身をその中にリンクさせ、その存在意義などを論議する。

 

しかし、大きな相違点は、ヒッピーは、変容していく社会にメスを入れ、自分たちのメッセージを伝えて社会に革命を起こすことを理想郷としていたが、レイバーは社会に対して特筆するようなメッセージを投げかけたりなどしないところだろう。そして、レイバーは、レイブの中に「生き方」や「スタイル」を求めてはいない。あくまでも確立されたパーティーの時間を楽しむ目的がそこにはあり、レイブの時間が終われば個々に日常の生活に戻っていく。そこが、ヒッピーカルチャーとの違いであるといえるだろう。

 

 

4.レイブのもたらした弊害

 

 前述したようにレイブとドラッグには密接な関係があることは否定出来ない。純粋に音楽を楽しむ数多くのレイバーの中で、一部のレイバーの中ではドラッグの乱用、売買が危惧されている。

 

最近ではカリフォルニアのCow Palaceで開催されたレイブで違法ドラッグを売買していたとして79人が一斉逮捕された。この一斉摘発では、エクスタシー901錠の他にもLSD、コカイン、マリファナが押収された

 

日本でもこのような事件は起きている。2008年6月には、群馬県で催されたレイブの参加者の1人がパーティー翌日に会場近くで倒れ、その2日後に死亡し、体内から薬物が検出されたという。同年8月には群馬県みなかみ町で開かれたレイブで、男女13人が大麻取締法違反などの疑いで逮捕されている。また2009年2月には、山梨県の鳴沢村で行われたレイブの参加者6人が麻薬所持容疑で逮捕されている10

 

 捜査関係者は、レイブが行われるキャンプ場は、都会からかけ離れた山の中で外部と遮断されているため、犯罪への認識が甘くなったのではないかと指摘しており、レイブという空間が薬物使用の温床を生み出していると懸念している11

 

また、近年ではレイブ開催にあたり地域住民の声も厳しいものが多く、キャンプ場周辺の宿舎が駐車場を貸し出すため、一般の観光客が使えない、逮捕者が相次ぐことによって町のイメージダウンにつながる、夜中まで若者がうるさい等の理由から、レイブを自粛するよう市町村に呼び掛けているとのことだ12

 

 このような事件は、遺憾極まりないものである。ある一部のレイバーの犯罪のせいでレイブイベント自体が悪の温床のような概念で捉えられ、私たちレイバーは、どんどん行き場を失っている。確かに、レイブ拡大の背景にはドラッグの姿があったことは否定出来ない。しかし、決してレイブ=ドラッグではない。純粋に音楽を楽しむクリーンなレイブファンは世界中に存在するし、近年では大物ミュージシャンとレイブのコラボレーションや、エコイベント化されているレイブもたくさんある。

 

 レイバーの多くは、自然との共生や瞑想を好んでいる。今日では、環境保全や動物の権利、地球温暖化やエコ、リサイクルをテーマに掲げたレイブも多く、終了時に会場でゴミ袋を配るエコ活動や、売上金の一部をNGOなどの団体に寄付することも多くなっている。次の章では、今日の日本のレイブシーンを取り上げる。

 

 

5.近年日本のレイブシーン

 

 現在の日本のレイブは3種類に分類することが出来る13

 

まず、第一に最もレイブの原型に近いもので、DJやサウンドシステムを設置してゲリラ的に行われるイリーガルのフリーパーティーある。口コミやインターネットで集客を行い、必要経費のみを参加者のカンパから募るものである。しかし、あくまでイリーガルなものなので、当日中止されることもある。

 

次にダンスフェスティバルと呼ばれるものがある。田舎のキャンプ場や郊外の野外等で合法的に行われる商業的なフェスティバルである。入場料は高額だが、有名なDJやバンドが多数プレイすることも多い。数日間にわたって開催されるものが多く、参加者はキャンプをして過ごすこととなる。日本では、お台場で開催される渚音楽祭り14などが有名である。また私が2009年で最も注目しているのは、奄美大島日食音楽祭15である。皆既日食が見られる2日間に、奄美大島で行われる多種の音楽が融合したレイブである。

 

最後に、商業レイブと呼ばれるもので、都市内の大会場で有名スターを集めて一晩限りで行われるものである。日本では長野県で行われるSOSフェスティバル16や、群馬県で行われるGathering17などが有名である。

 

 

6.何故若者はレイブに魅了され続けるのか

 

 最終章では、以上のことを調べた上で、初めにテーマに挙げた「何故人々は、レイブに魅了されるのか」という疑問を考察してみたい。

 

私意的な意見になるが、レイブには純粋なパーティーとしての要素のみならず、私たちが太古の時代から受け継いできた、ある種の宗教的要素が含まれているのではないだろうか。音楽、目的、こそ違えど、大地を踏みしめて集団でトランス(恍惚)状態になりながら無我夢中に踊るという行為は、何も近代社会に限って生まれた文化ではないはずだ。憑依されながら脳と体に覚醒を呼び起こしながら踊るという作業は、もしかしたら神から選ばれし者の、特別な儀式だったのかもしれない。または、ごく一般的に行われる極めて身近なものだったのかもしれない。

現在のIT社会では、神の存在を意識する瞬間は、確実に失われつつある。神無き時代の到来といっても過言ではないだろう。しかし、私たちの持つ心理の一端には、今でも神や大自然を崇拝するという本能は確実に備わっており、狂気と錯乱に対する欲求も決して、消滅することはないだろう。その存在を噛みしめるために、私たちは、今日もレイブに駆り出されるのではないだろうか。

 

 

 

「レイブ音楽」Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%96

2「レイブ音楽」Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%96

3「エクスタシー」

脳内のセロトニンを過剰に放出することにより、人間の精神に多幸感、他者との共有感などの変化をもたらすとされる合法麻薬。日本では、麻薬法により規制されている。

「LSD」

幻覚作用をもたらす合法麻薬の一つ。日本では麻薬法により規制されている。

「レイブ音楽」Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%96

「パーティーワールド」。

http://party.marimoff.com/party_world/900-1/

「ポスト・テクノ(ロジー)ミュージック拡散する「音楽」、解体する「人間」」。

著 久保田晃弘 佐々木敦

「シリコンバレー地方版」。

http://www.chihouban.com/blog/2009/05/79.html

「産経ニュース」20080914「レイブ会場で今年も女性死亡、薬物反応。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080914/crm0809141130008-n1.htm

「産経ニュース」20080906.「野外音楽パーティー、レイブ」。

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/gunma/080906/gnm0809060303002-n1.htm

10「毎日新聞」20090214「薬物野外パーティーで使用、6人逮捕」。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090213-00000149-mai-soci

11「産経ニュース」20080906.「野外音楽パーティー、レイブ」。

http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/gunma/080906/gnm0809060303002-n1.htm

12「レイブ情報全国版ブログ」。

http://plaza.rakuten.co.jp/ravenavi/diary/20080811/

13「パーティーワールド」。

http://party.marimoff.com/party_world/900-1/

14「渚音楽祭 春」。

http://www.nagisamusicfestival.jp/japanese/artist.html

15「奄美皆既日食音楽祭り」。

http://www.totalsolareclipsefestival.jp/

16Mother presents SOS festival」。

http://ameblo.jp/rave-navi/entry-10114407380.html

17Vision Quest」。

http://www.visionquest-tokyo.com/i/indexjt.html