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中村真惟「海外旅行の動機につながる外的要因とその意義」

 

 

1、はじめに

 

大学に入って初めて海外に出た。日本とは違う空間に身をおくことによって、刺激を受けたし、自分の世界が広がったように思えた。それ以来、時間とお金さえあれば海外旅行に行きたい、と考えるようになった。しかし、やはり気になるのは旅行にかかる費用である。最近の動きでは航空券の代金に含まれる燃油サーチャージ料が廃止される傾向にある。安く手軽に海外に行けるということだ。近場なら、国内旅行より安くあがるかもしれない。また、円高もまだ続いている。このような効果が海外旅行市場についてどのような影響を及ぼしているか、人々の意識調査を主にして調べてみた。

  

 

2、燃油サーチャージ料とは何か

 

原油の高騰に伴って、航空会社の企業努力で吸収しきれない燃油価格の一部を、乗客に負担させる追加運賃のこと。本来は、燃料経費は航空運賃に含まれるものだが、燃油価格の激しい変動に対応するため、乗客にわかりやすくするため、通常の航空運賃とは別に徴収されている。

国際線を運行する空港会社が燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ料)額の値下げを次々と発表している。全日本空輸(ANA)は41日から630日までの燃油サーチャージ額を現在の9割近くまで下げると発表した。また、7月以降の燃油サーチャージ廃止の動きも出ている。[1]

 

 

3、値下げに対しての人々の反応は(社会人対象)

 

アップルワールドによる調査の結果、20代から60代以上まで男性142名、女性160名の合計302名の回答が寄せられた。なおこの調査が行われた時期は1月末である。1月からの燃油サーチャージ料の値下げについて認知している人は全体の98.0%とかなり高い数値であった。「関心のある行き先については値下げの料金まで詳しく知っている」人が44.7%と、皆高い意識を持っていることがわかる。次に海外旅行の具体的な計画についての質問には、「燃油サーチャージ料に関係なく海外旅行にいく」という人が41.1%最も多く、「値下げを機にいってみたい」と考える人が26.2%と続く。また、「もう少し値下げされれば行ってみたい」という人は32.1%に上り、多くの人が費用を気にしていることがわかる。これは、1月時点の調査なので、値下げされた今、海外に行こうとする人は増えるかもしれない。年代別にみると、20代の若者が海外旅行に最も意欲的である。「値下げを機にいってみたい」と回答した人が全体の4割に上った。さらに、旅行先については、アジアが34.3%、ヨーロッパが32.9%とほぼ同数であった。特に女性にヨーロッパの人気が強かった。費用が高く遠いためなかなか行きにくかったヨーロッパが、値下げによって身近になってきたのだと思う。ところで、「海外に行きたいと思わせる理由」についても調査された。「世界遺産などの自分の興味」が21.3%で最も多かった。ついで、「為替変動による円高」が19.7%、「燃油サーチャージを含む料金の値下げ」が19.4%、「まとまった休み」が18.0%となっている。自分の意思もあるが、外的な要因が深く関わっていることがわかる。GWの旅行目的を尋ねた質問では、トップは男女ともに「のんびりして疲れを取る」で28%だったが、男性はこの質問に対し、32.7%、女性は22.7%と差がでる結果になった。また女性は観光など積極的に旅を楽しみたい、と答えた人が約2割に対し、男性は1割だった。女性の方が海外旅行について積極的であることがわかる。[2]

 

4、学生へのアンケート調査の結果

 

 私の身の回りの学生30人にアンケートを取り、その結果を集計した。これから夏休みということもあり、夏休みの予定などについても尋ねてみた。内訳は男子が16人、女子が14人である。まず、夏休みの予定が決まっているか、という質問に対しては、決まっている人が10人、決まっていない人が5人、未定な人が15人であった。また、決まっている、と回答した人には行き先も尋ねた。全員が国内旅行であった。定番のディズニーランドが2人、京都が2人、他は、沖縄、鎌倉、苗場スキー場、那須などがあがった。近場で済ませる人がほとんどのようだった。次に、サーチャージ料の値下げについて知っていたか尋ねてみた。知っていたと回答した人が16人、知らなかった人が14人と半々の結果になった。サーチャージ料が廃止されたら海外に行ってみたいか、という質問に対しては、はい、と回答した人が18人、いいえと回答した人は12人だった。傾向として、値下げについて認知していた人が、はい、答える傾向しあった。行ってみたい国や地域についても調査した。多かったのがヨーロッパである。10人もの人がヨーロッパ内の具体的な国やヨーロッパ全域をあげた。イタリアが4人、スペインが3人、ドイツが2人と人気があった。このほかには、フランス、イギリス、エストニア、スイス、北欧などがあげられた。続いて、オーストラリアも3人と多かった。他にあげられた国はアメリカ、ロシア、エジプト、カンボジア、ニュージーランド、中国、台湾、韓国、カナダ、ハワイとどの国も一人ずつだった。最後に海外旅行の目的について聞いてみた。「日常からの開放」「リフレッシュ」「癒し」などと回答した人が10人、「観光など楽しむこと」と答えた人が10人と最も多かった。「いつもと違う経験をする」などと答えた人が9人、「刺激を受ける」と答えた人が3人、「旅先の人々との交流」と答えた人が1人だった。

 

5、おわりに

  

 今回、人々の意識調査から海外旅行について迫ってみた。不景気といわれるこの時勢、燃油料の値下げは大きく旅行市場に影響していくだろう。少し前までは円高の影響で韓国への旅行者がとても多かった。しかし、燃油料が値下げあるいは廃止された今は、日本から遠く離れた地にも行きやすくなったといえる。特に印象に残った点は、学生が行ってみたいと考える国、地域は非常に様々であり、ヨーロッパの人気が最も高いことに驚いた。社会人では、男女差が顕著に現れた質問項目があったが、学生ではどの項目もさほど変わらなかった。社会人と学生との大きな違いは、やはり、旅行の目的であろう。社会人は疲れを取ったり、ゆっくり休むために旅行するのに対し、学生はやはり観光など積極的に旅を楽しみたい、という姿勢が見てとれる。しかし、そのような願望はありながらも、金銭的な面などでなかなか海外に行く機会がないのが学生である。もっと多くの人が海外に行けるチャンスを得るためにも、このまま燃油料の廃止の動きは続いて欲しいと願うばかりである。

 

[1]マイコミジャーナル「相次ぐ燃油サーチャージ値下げ、撤廃……早期の需要回復狙う航空各社」

http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/02/19/surcharge/index.html

 

[2]アップルワールド.com

http://japan.techinsight.jp/2009/02/suzuki0902120058.html