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ウインタースポーツと環境保護
1.はじめに
余暇には人によって様々な過ごし方があるがスポーツに汗を流すという人も多い。本論では自然を利用したスキー、スノーボードなどのウインタースポーツ、特にスノーボードに注目し近年のエコブームと関連付け、「スポーツを楽しむために環境保護を考える」という概念で考察を行っていきたい。このテーマを選んだ背景には自分自身の体験がある。私は一昨年からスノーボードを始めたのだが、昨年、早期からシーズンチケットを購入して張り切っていたのにも関わらず、雪が降らない、積もらないという現実に直面した。豪雪地域であるのに2月の段階でゲレンデの一部は雪が溶けだし、土面の茶色が見えることもしばしばあった。温暖化が騒がれているのはもちろん知っていたが、その深刻さを改めて実感した瞬間であった。ウインタースポーツ界への環境破壊の影響は大きくここ2、3年の間でいくつもの大会が中止となっている。
最近は温暖化対策に対し多くの人が関心を寄せる。エコバッグを持ち歩く人もいれば一部地域では買い物袋の有料化がなされている。エコケータイやハイブリッドカーも人気を集めている。このように社会現象と化して皆で対策に取り組もうという姿勢は重要であるが、自分の体で自然の変化を実感する機会に触れ、さらなる問題意識を深めるきっかけになるという見方としてウインタースポーツをとりあげた。内容としては、ウインタースポーツに関わる人々、特にスノーボードブランドメーカーやリゾート地が現段階でどのような環境保護の取り組みをおこなっているのか、ということを中心に調べ考察を加える。
2.ウインタースポーツ人口
近年スキー、スノーボード人口は減少の傾向がみられる。スキー人口については90年代前半をピークとしてその後減少していった。スノーボードは80年代前半から輸入され始め、当初はスキーとの滑走パターンの違いにより、接触事故が相次いだため多くのスキー場ではスノーボードの滑走が一時は禁止された。しかしバブル後の不景気によるゲレンデ利用者減少に伴ってスノーボードも受け入れ、多くのリゾート地で利用者の獲得を目指した。その結果90年代後半にはスノーボードが急激に流行しそれに伴いスキー人口が低迷したという側面もある。現代ではスキー、スノーボード愛好者の割合はおよそ半々でともにその人口は伸び悩んでいる。[1]
2009年1月にNTTドコモが行ったスキー・スノーボードに関するアンケート(回答数300,088人)[2]によると、「スキー・スノーボードはしますか?」という質問に対しスキーをする、スノーボードをする、昔やっていたという60パーセントを超える。つまり生涯のうちにウインタースポーツを経験する人は多い。さらにスキーがブームとなっていた頃の世代の人が子供を連れて再開したり、スノーボードのファッション性、スタイルから若者の支持を得て流行につながることから、次世代を担うという意味で環境保護活動の概念と一致する。子供、若者をはじめ様々な年代の人がウインタースポーツと雪に触れ、楽しさとともに自然破壊の深刻さを実感することで、環境保護の必要性、重要性を今までとは違った感覚でとらえることができるのではないか。
3.各取り組みの概要
ウインタースポーツに関わる多くの団体、企業が様々な形で環境保護に取り組んでいる。特にウェアやブーツなどを売り出すスポーツブランドメーカーでは、積極的な取り組みが見られるのでその一部をあげてみたい。
・バートン
スノーボード用品メーカーのバートン(BURTON SNOWBOARDS本社 アメリカ・バーモント州)は2008年8月より不要なスノーボードギア(ボード、ブーツ、バインディング)を回収しリユースする活動「09リサイクルプロジェクト」を開始。[3]不要ギアを提供するとバートン店内商品を10%OFFで購入出来る。回収されたギアはオリンピック選手やプロアスリートが環境保護とスポーツ振興を目的として開催するイベントアースリートフェスタでユース。このフェスタのテーマは「魅せる、楽しい、ECOイベント」「きっかけ」。
またエコ系ギアとしてのボード、バインディング、ブーツなどが登場。例えばブーツのメッシュ部分にはリサイクルラバー(※ラバー 布地の表面にゴムを塗って防水性を持たせたもの)、バインディングストラップ部分にはペットボトルリサイクル素材と合成エコレザーを使用。[4]
バートンはスノーボード用品の製造販売メーカーとして有名なブランドである。このようなメーカーの今後の動きに対するスノーボード愛好者の支持や期待、興味は大きい。よって環境保護を視野に入れた商品やイベントを発信することは、人々にウインタースポーツと環境保護のつながりを考えさせる原動力になりうる。
・持続可能な観光を目指す フランスリゾート地
フランスのスキー場のリフトを管理する仏リフト組合SNTFでは、ソーラー発電パネルによる電力を利用したリフトの普及に努めている。すでにピレネー地方の一部スキー場で取り入れられている。
またスキー場では、暖冬時に人工雪を作るために水が必要であるが、雨水や公共施設の屋根に溜まった雪解け水を使用するところや、渓谷の水を確保するため水力発電所のタービンに下水を使用するというスキー場もある。[5](フランス政府観光局)
フランスのリゾート地における活動の一部である。私が調べた限りではあるが日本においてはこのようにリフトにソーラー発電を利用しているというゲレンデは見当たらない。日本では長年の間スキー場などマウンテンリゾートのビジネスを展開させているのにもかかわらず、欧米のリゾート地に比べ、環境保護に対する意識とアクションがとても低いという指摘もある。[6]観光事業という観点からの環境保護活動も利用者、顧客を動員できるシーンである。日本の国土の80%は山岳地帯だ。今後リゾート関係者、自治体、愛好者他、様々な形でウインタースポーツに関わる全ての人が連携しウインタースポーツの活性化とともに環境保護活動の活性化に取り組む姿勢が必要である。
その他、売上の一部を環境保護活動のために寄付する[7]、地球をイメージした地球柄のウェア[8]を開発し、着る人・見る人に地球の大切さを訴えるなどといったような独自の方法で環境保護を呼び掛ける企業がある。これは消費者に対し環境に考慮している企業やブランドであることをアピールする機会にもなり、イメージアップにもつながるものと考えられる。
ウインタースポーツ愛好者たちもそれぞれ出来ることから始めている。例えばメンバーを募って一台の車でゲレンデへ行き二酸化炭素排出量に配慮する、冬にスキーやスノーボードを楽しんだゲレンデに夏に集まりゴミを拾うなどであるが、そのような考えを念頭においたNPO法人やスキー、スノーボードの専門誌[9]が主催で行うこともある。
4.終わりに
雪があってこそのウインタースポーツであり、それに携わる産業である。雪、自然の大切さを体で知っている人たちの熱意や呼びかけは力強さが感じられる。ウインタースポーツに触れることは今後さらに間近に見えてくるであろう自然の変化をいち早く実感できる機会ではないか。近年は不況の影響も受け、ゲレンデに出かけスキー、スノーボードをするという人は少なくなっていることは事実だが余暇を使って是非多くの人に雪に触れてみてほしいと願う。健康作りとして、子供や家族とののふれあいの場、仲間との交流の場として、趣味として、旅行として、どういった形でもその雪の白さ美しさ、山の空気に感動を覚えることは間違いない。雪山だけではなく海、川など自然のある空間に身を置き、環境破壊を他人ごとではなく自分のこととして捉える意識が本当の意味でエコ活動につながるはずだ。
註
[2] アンケートレポート ポイント優待サービス(ドコモプレミアクラブ) My dokomo
スキー、スノーボードについてのアンケート。
http://www.mydocomo.com/web/premier/fuyasu/enquete/result0902.html
[5] フランス政府観光協オフィシャルサイト ウインタースポーツの山岳リゾート地でも環境意識の高まり 〜「持続可能な観光」の実現へ〜。
http://jp.franceguide.com/edito.html?EditoId=198871&NodeId=1&xtor=RSS-1
[8] プレスリリース。
地球環境保護を意識する全てのウィンタースポーツ愛好家へ H2Oプロジェクトを推進するヘリーハンセンから生まれた地球の姿をグラフィカルなプリントで表現したスノーボードウェア
http://www.goldwin.co.jp/corp/pr/07/071210/index.html
[9] スノーボード・スノボー専門誌「SNOWBORDING」SNOWBPRD TOP>>新着情報
環境保護イベント”Clean Up Our Playground Program” 開催!
https://www.twj.to/general/newsview.php?cate=21&newscd=314