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木崎将文「京都学生祭典と成功要因」

 

 

1.はじめに

 

余暇とは、仕事から解放され、自分の自由に使うことのできる時間である。このように考えるとき、誰もが余暇を過ごしているといえる。ショッピングをして過ごす人もいれば、海外旅行を楽しむ人もいる。また、寝て余暇を過ごす人もいるだろう。このように、余暇の過ごし方は人の数だけ存在する。その一方で、特定の時期にしか過ごすことのできない余暇も存在する。その中で私は、学生生活の間にしかできない余暇に着目し、「学生祭典」を取り上げることにした。

 

今回のレポートでは、毎年多くの来場者を集め、大成功を収めている「京都学生祭典」を通して、学生生活の間にしか経験できない余暇についてみてゆきたいと思う。手順は、京都学園祭典の概要、歴史、企画や活動内容を踏まえた上で、祭典を成功へと導く要因について論じたい。

 

 

2.京都学生祭典とは

 

京都は、50近くもの大学・短期大学が集積し、古くから学生による交流が盛んにおこなわれてきた大学都市である。府内からだけではなく、地方からも大勢の学生が集まり、互いに刺激しあいながら発展してきた。現在では、京都の人口の約一割を、学生が占めている[1]

 

京都学生祭典は、「学生のまち、京都」の魅力を全国に発信すべく、京都の大学生が主体となり、企画、運営を行う学生まつりである。これは、大学生や短大生であれば、原則誰でもスタッフとして運営に参加することができ、他大学との幅広い交流を持つ機会にもなる。また、最近ではKYOSENSEプロジェクトという環境問題への取り組みも開始された。最高入場者数は224000人を記録している[2]。(2006年度)

 

 

3.歴史

 

京都学生祭典は、2000年から2002年にかけて、大学コンソーシアム京都が主催となって開催した、京都・学生フェスティバルを母体として発展したものである。これは、京都市が策定した、大学間の連携強化、教育研究・生活環境の充実、大学と地域の連携を掲げる、「大学のまち・京都21プラン」をイベントコンセプトの中心として開催された[3]。その後は、京都の三大祭り(祇園祭、葵祭、時代祭)に次ぐ、四つめの祭りとなることを目標として、毎年開催されている。

 

 2003年に開催された第一回目では、祭りの方向性を「音楽祭典」としたため、音楽企画が中心となった。それと並行して、世界中の学生製作映画・映像をコンペティション募集し上映する、「京都国際学生映画祭」も開催された。また、当時、立命館大学の学生で実行委員だった、倉木麻衣によるライヴも催された。その後は「音楽祭典」の枠を超え、第三回目からは、京都学生祭典の、創作おどりの出し物や全国踊りコンテスト、第五回目からは、学生が一から作り上げた、みこしを使った地域密着型の催しも始まった。この他にも数々の企画が生まれ、年々発展している[4]

 

 

4.企画

 

京都学生祭典の数ある企画のなかでも、特に規模が大きいとされる、Kyoto Student Music Award、京炎そでふれ!、京炎みこし、Grand Finaleについて述べることにする。Kyoto Student Music Awardとは、「第3次、京都発音楽ブームの実現」をコンセプトとし、開催される学生音楽コンテストである。過去に京都が中心となり、音楽シーンを盛り上げてきた時代が、「拾得」という日本初のライヴハウスが誕生した1970年代と、「くるり」などのバンドが登場した1990年代の二期あったことより、今回を第3次と位置付けている。学生ならば誰もが参加でき、一次予選、二次予選を勝ち上がった10組のみが、当日、JR京都駅前ビルで開催される本選に出場できる。優勝した者には、賞金50万円とGIZA studioによるメジャーデビューへのバックアップが受けられるという、大変規模の大きいコンテストである[5]

 

京炎そでふれ!とは、京都の特色を取り入れて作られた創作おどりである。「京炎」という言葉には、学生の燃えるような思いを京都から発信したい、という意味が込められている。また、「共演」、「競演」という言葉ともかけられている。京炎そでふれ!の活動の一環として、京都学園祭典では全国おどりコンテストが開催される。このコンテストは、京都らしいおどりを競い合う、京炎そでふれ!の部と、ノンジャンルの部の、二部から構成されている。当日は平安神宮周辺を歩行者天国とし、120の団体がおどりを通して競い合う[6]

 

京炎みこしとは、「京都の学生と市民の安寧・京都の活性化」を願う気持ちを乗せて、みこしを担ぐ企画である。和紙や西陣織などを用い、地域の職人と連携しながら、学生が一からみこしを作成する。本番では、みこしを担ぎ平安神宮を練り歩く[7]

 

Grand Finaleとは、文字通り祭典の最後を締めくくる企画である。前の文章で述べた、Kyoto Student Music Awardの優勝者によるライヴ、全国おどりコンテストの優勝グループによるおどりが披露される。また、最後には6000人にもなる会場が一つとなり、京炎そでふれ!のおどりを踊る。これは見る人々を圧倒し、まさに最後を飾るのにふさわしいといえる[8]

 

これら4つの企画についてみてきたが、コンテストのエントリー基準に学生であること、という項目を入れるなど、学生主体の祭典を目指していることがわかる。その一方で、みこし活動からわかるように、地域との交流も積極的に行っている。学生自らが祭典を作ってゆこうとする主体性と、地域との交流が合わさっているからこそ、これほど大規模な祭典を、毎年開催することができるのではないだろうか。

 

 

5.成功要因

 

京都学生祭典を成功に導く要因として、まず考えられるのは、京都に存在する大学・短大の数の多さではないだろうか。京都は全体的に保守的であり、新しいものを拒む傾向があるように思われる。これは、京都が長い歴史を有しているからであろう。府自体も、景観条例を制定するなど、「昔ながら」を大切にしている。また、京都市民もかなり保守的な傾向が強いと思われる。私は、地元が京都なのだが、ここ、宇都宮に来て一人暮らしをするにあたり、京都がいかに保守的であったかを痛感した。保守的な考えの下では、新しいことを考え、行動に移してゆくことは難しいといえる。ここで、京都に大学・短大が多数存在することが、重要な役割を果たしている。これほどに多くの大学・短大があると、地方の学生も大勢、京都に来ることになる。しかも、地方の学生は、強い目的を持って京都に来る場合が多い。双方が交流し、互いに刺激しあうことによって、次から次へと新しい企画を生み出し、人々を飽きさせない京都学生祭典を毎年開催することを可能にしているのではないだろうか。

 

次に、大学コンソーシアム京都の存在である。京都学生祭典は、学生が主体となり活動することを掲げている。しかし、これほどまでに祭典の規模が大きくなりすぎると、学生主体の活動だけでは成し遂げられないものも生じてくるだろう。例えば、保守的な京都の地域・企業に対し、祭典に協力してもらうように働きかけることは、学生の力だけでは非常に困難なことである。また、祭典を来年へとつなげていく際、次の代への引き継ぎが生じるわけだが、数多くの大学・短大が関わる京都学生祭典においては大変難しいことである。仮に、次の代への引き継ぎがうまくいったとしても、新しく引き継いだ学生スタッフだけで、初めから活動を完璧に把握し、行動してゆくことは不可能であろう。そこで、あくまでも学生主体の活動を尊重し、学生だけではできない部分をサポートしてゆく立場をとる大学コンソーシアム京都の存在が、祭典を成功へ導くために必要だといえる。大学コンソーシアム京都は、コンソーシアムの本来の意味である、共同という概念を駆使し、学生が作り慣れていない枠組みを作り、仕組み、仕掛け、見せ方、仕込みの4要素を学生に提供している。具体的には、大学間における、横のつながり、祭典が継続してゆくためのシステム作りのサポートや、地域・企業と学生との間に仲介として入り、活動がスムーズに行われるよう導いている。このコンソーシアム京都の存在が、学生主体の活動だけでは難しい部分を補い、地域と学生間の連携をより強固なものとし、祭典を円滑に行えるようにするのである[9]

 

また、開催場所に、交通の便に優れている京都駅ビルや、京都の歴史が感じられる平安神宮を使用していることも来客数を増やす働きをし、祭典の成功要因となっているだろう。これほどの場所を提供してもらえることは、学生と地域社会との間に協力関係が成り立っている証ではないだろうか。

 

 

6.終わりに

 

京都学生祭典及び、その成功要因を通して学生生活の間にしかできない余暇についてみてきたわけだが、交流することの大切さを改めて感じた。交流を通して、今まで知らなかった自分の一面に気づかされる。また、双方で意見を交換するなか、考えを共有し、協調性を育むこともできるであろう。京都学生祭典が成功し続ける理由は、やはり、大学・短大の数の多さがもたらす学生間の大規模な交流と、学生間の交流を維持する大学コンソーシアム京都という組織が既存していたことではないだろうか。私も、残り少なくなってしまった学生生活において、交流を大切にし、学生生活の間にしかできない余暇を探してゆきたいと思う。

 

 



[1] 「京都学生祭典開催趣旨」。

http://www.kyoto-gakuseisaiten.com/

 

[2] 註1に同じ。

 

[3] 「京都市総合企画局大学政策担当、大学のまち・京都21プラン(概要)」。

http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000060488.html

 

[4] 「京都学生祭典、祭典の歴史」。

http://www.kyoto-gakuseisaiten.com/

 

[5] Kyoto Student Music Award 公式Webサイト」。

http://www.ksma.jp/about.html

 

[6] 「京都学生祭典 京炎そでふれ!」。

http://www.kyoto-gakuseisaiten.com/

 

[7] 「京都学園祭典、京炎みこし」。

http://www.kyoto-gakuseisaiten.com/

 

[8] 「京都学園祭典、企画紹介」。

http://www.kyoto-gakuseisaiten.com/

 

[9] 「京都現地調査にあたって」。

http://www.geocities.jp/tguwada/kyoto05.pdf