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「地産地消の食事と余暇について」

 

1.はじめに

 最近、食への関心が高まってきているように感じる。例えば、スーパーの品物に産地の表示がなされているのはなじみがあるが、最近ではレストランの料理に使われている食品の産地がメニューに表記してあるのを見かけることもある。最近、地産地消という言葉を聞く機会が増えた。その土地で収穫された作物を使った料理を提供するレストランや、地産地消の宿と題し、その土地のものを食べることを目的とした旅行のプランが組まれている。[]

 

外食産業が発達により、私たちは日本にいながらにして、日本料理のみならずさまざまな国の料理を手軽に味わうことができるようになった。その店舗数は数え切れないほどであり、町には飲食店があふれていて、飽和状態である。また、野菜や果物がその収穫時期と関係なく一年中食べることができる。それは、輸入品やビニールハウスなどの栽培によって補っているからであろう。しかしながら、現在、その土地で取れたものをその土地で消費するという地産地消の食事が流行している。このように身近なところでさまざまな料理が味わえるにもかかわらず、ざわざわその土地に赴き食事をする理由とはなにかを調べていきたい。さらに現在、多くの飲食店で提供している料理の素材にその土地で取れた野菜などを使う店が増えている。したがって、消費者が地産地消にこだわる理由とは何かを考えて生きたい。

 

 

 2.地産地消ブーム

 

地産地消について調べているうちに、地産地消が、一種のブームになっていることを知った。その背景には、国の政策として、地産地消が推進されているという事実があった。それは最近の食の問題と関係があると考えられる。現在、日本のカロリーベースの食料自給率は、約40%である。[]つまりは食料供給の半分以上を輸入に頼っているのである。輸入食品の問題は多くある。例えば、中国の冷凍餃子や汚染米の事件などはまだ記憶に新しい。このように、食の問題が相次いだことによって人々が食の安全への関心が強まり、国産の、更には地産地消の食材を求める傾向が出てきたということができるだろう。また、現在ではフードマイレージというキャンペーンが行われ、なるべく近くで生産されたものを消費する試みがなされている。[]

 

国の地産地消推進計画では、地産地消を生かした産地づくり、学校・福祉施設における取組、観光施設・外食産業における取組、などが策定として挙げられている。このような政策は、イタリアで行われているスローフード、韓国の身土不二などを手本としている。スローフードとは、北イタリアから発生した現代人の食生活を見直す運動で、@消えつつある郷土料理や質の高い食品を守ってゆくことA質の高い素材を提供してくれる小生産者を守っていくことB子供たちを含めた消費者全体に味の教育を進めていくことをテーマに掲げ、各地に残る食文化を尊重し将来に伝えていく活動である。身土不二は、食べ物に宿る風土と人体に宿る風土が一致すればするほど体によいという考えである。この言葉は、14世紀中国の仏教書に初めて登場した。現在は国産農産物愛用運動のスローガンとして使用され、国産品の優先的な購入を推進している。[]つまり、地産地消とは、ただ単にその土地で採れた物を食べることを目的としているのではなく、生産者と消費者の距離を縮め、また食の教育を進めて食の理解を高めるという目的もあるのだ。

 

国は、学校や団体に交付金という形で支援を行っている。こうして、地元でとれた作物を学校給食に使用し、観光地において地元の農産物を使ったお菓子や料理を観光地のアピールに使うことが増えた。外食産業においても、農産物の安定供給の確保や、消費者ニーズに応える観点から、地域の産物を使用した活動が進められている。

 

 

 3.地産地消の製品や限定品と余暇の関係

 

現在、安近短の余暇活動が多く受け入れられている。食べることは、毎日の生活に欠かせないものである。しかし、少し時間を割いてゆっくりとおいしいものを食べることは、立派な余暇として成立するのであり、消費者に多く求められている形態であるといえる。2009年のG.Wの過ごし方を見ても、食事に出かけるという項目は、上位に来ている。[]そこで、今注目の地産地消はなぜ、消費者に受け入れられたかを消費者心理の側面から考えていきたい。地産地消という言葉は人々に第一に安心、安全という言葉を連想させるものなのではないかと思う。実際、県のホームページなどを見ると、地産地消の食事に対し、安心安全、新鮮と提言していることが多い。消費者にとって、近くに生産者が住み、どのように生産されているかがすぐにわかる状況にあることは何よりも安心できるのだろう。

 

第二に地産地消の作物や料理はおいしそうだというイメージを植え付けているのではないだろうか。例えば、米といったら新潟、さくらんぼといったら山形といった地名ブランドのような要素を含むものであると考えることもできる。栃木県でも地産地消を紹介するホームページでは、地産地消の取り組みとして、特産物であるイチゴを使ったデサートや県内でとれた野菜を使ってつくられる料理を提供するレストランが大々的に取り上げられていた。また、地産地消の作物を使った料理を食べるツアーもあることから、地産地消が観光地では一種の観光資源としての役割を果たしていることが伺える。

 

 第三に、消費者の食へのこだわりが高まったのではないかと思う。例えば、最近では、低カロリーや低脂質の食品が増え、また無農薬栽培の野菜が人気になった。これは、メタボリックシンドロームや活習慣病が広く世間に知れ渡った結果であると考えられる。

また、環境への関心も増したと考えられる。それは最近のエコバッグの流行や、テレビや雑誌で頻繁にその話題が取りあげられていることからもわかる。消費者にとって地産地消の作物の購入は健康的にも、長距離輸送を行わないという点で環境にも良いことをしていると感じさせ、それがその利用を促したのではないだろうか。

 

 

4.考察 

 

今、各地域で地産地消が進められ、消費者にもそれが受け入れられている。確かに、地産地消を進めることで、食料自給率の問題を改善し、消費者が安心して食材を購入することができるなど利点も多い。また、消費者も地産地消の作物は健康にも環境にもよいものと求め、それらを積極的に取り入れようとしている。

 

しかし、地産地消の課題もまだ多く残っていると感じる。そもそも、国や県、市町村は地産地消をどこまで進めようとしているのだろうか。もし、地産地消がこのまま推し進められていったら、スーパーの品物にも変化が起きると考えられる。消費者は、季節ごとにその土地で採れるものしか購入することができなくなる。それでは、多様化した食生活に慣れた消費者から不満が出てしまうだろう。また、地産地消商品は、輸送費のコストダウンが期待できるが、輸送会社への影響はどれほどなのだろうか。それらの会社の損益は無視していいのかなど、さまざまな考え方ができると思う。これらは、地産地消を進めていくこれからの課題である。

 

考え方を変えてみれば、今までの季節や旬を無視して、一年中、野菜や果物が手に入る状況が異常だったのかもしれない。旬の野菜を食べることは、食べ物を通じ季節を感じる事が出来る。それは、食事をする上で大きな楽しみではないだろうか。地産地消について散々

述べてきたが、昔ながらの食事の良さの再発見によって地産地消の作物が広まり、多くの人に受け入れられているのだと思う。 

 

 

 



[] 料理にこだわって選ぶ旅館・ホテル国内旅行特集【トラベルコちゃん-国内旅行】

 http://www.tour.ne.jp/special/japan/yado_food/ (2009/06/28

[] 農林水産省・食料自給率とは

http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html

2009/6/29)

[]フードマイレージキャンペーン

http://www.food-mileage.com/about/2009/6/28

[]地産地消の推進について

http://www.jsapa.or.jp/chisan/shisaku/PDF 2009/6/29

[] ゴールデンウィークの過ごし方 マイボイスコムネット調査結果http://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/13109/2009/6/29