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福士裕紀「現代におけるコミュニケーションの場〜ブログ・SNS〜」

 

 

1.   はじめに

 

現在、ブログやSNS市場が活発であるという事実は多くの人が認識している。私自身、SNSであるmixiの利用者だ。空きコマや寝る前といった時間を利用して、日記を更新したり、友人の日記にコメントしたりしている。また、芸能人がブログを活用してファンにメッセージを送るというようなニュースもよく耳にする。情報源として、現代ではすでに定着しつつあるのかもしれない。

 

ブログやSNSというシステムについて調査し、考えることは、今後の社会にとって必要なことだと思う。なぜならそれが、社会に大きな影響を及ぼす力を持っていると考えられるからである。したがってこのレポートでは、現状を把握した上で、考察していきたい。

 

 

2.   日本のブログ、SNS社会の現状

 

ブログに関する認知度は2004年4月に59.2%であったものが、2005年5月に91.3%となっている。ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に登録している人の数はともに急増しているために把握は困難だが、総務省が2006年3月末時点で集計したところによると、ブログ登録者数は868万、SNS登録者数は716万だ[1]。インターネットコムとgooリサーチが行った調査によると、約3人に1人がSNS利用経験者であることが明らかになった[2]

 

 個人的に見ても、私の周りの友人の多くが登録している。年代も関係しているが、特に若者の間で一般的になっているのかもしれない。なにより、簡単に利用することができることが普及の一つの要因になっているのではないだろうか。特別な技術や知識を必要とせず、気軽にアクセスできる。

 

 

3.   ブログ、SNSのメリット、デメリット

 

まずはメリットを考えてみる。女性の主な使用目的は他者とのコミュニケーションという調査内容がある[3]。日記などによって自分が伝えたいことを書き、友人らからコメントをもらい、それに返事を書く、という流れが一般的であろう。この作業を通じて、遠くにいる人や、個人的にはあまり連絡を取らない人とのコミュニケーションの場となる。人とのつながりを感じることができることは事実だ。また、自分の考えを自分らしく文章にする力が伸びていくのではないかと考えられる。私自身、mixiで日記を書く際にはどのような文章を展開するかをいつも考えている。相手の受け取り方も想像する。自分の考えを人にうまく伝えるということは、簡単なようで難しい。しかしその能力は、生きていく中で必ず求められると思う。ブログやSNSは、自己主張の場であり、他者の主張にも触れることができる。また、一方的なものではなく、コメントなどによる双方向性がみられる。これらのことから、他者とのコミュニケーション能力を養うことができるのではないかと考えられる。

 

デメリットとしては情報格差の拡大があげられる。ここで言う情報とは、社会におけるものだけではなく、個人的なもの、つまり友人関係においてのものも含まれる。これがデメリットとなるのかどうかは人によって異なるのかもしれないが。その他に、mixiやブログで「裁判員の通知が届いた」と告白してしまう人が相次いでいる[4]。裁判員に選ばれた場合、秘守義務が課せられるのだが、それについて知らない人も多いのであろう。裁判の内容などは誰にも言ってはならないのである。この秘守義務を違反した場合、懲役刑や罰金が課せられる。裁判のシステム改革に支障をきたす可能性も考えられるのだ。ブログ、SNSでの言論の自由が認められる中で、こうした社会的な問題につながることも考えられる。

 

 

4.   今後の展望

 

今後ますますブログやSNS利用者数は増えていくことが予想される。今や日本だけではなく世界でも注目を浴びている。中国社会でもブログの人気が上昇しているとのことだ。中国の調査会社によると、中国でのブログ利用者は9ヶ月で2倍になり、2005年1月から9月におけるブログの登録者数が3336万人に達したとのことである[5]。日本だけではなく、世界規模での視野を持って、ブログ社会に注目していきたい。

 

一方で、途中で利用を辞めてしまう人もいる。例えば、SNSmixi」を頻繁に利用していた人が突然辞めてしまうという現象だ。いわゆる「mixi疲れ」という症状である[6]。この症状が、最近多くみられるようだ。多忙なコミュニケーションに疲れを感じてしまうのである。他者とのコミュニケーションという目的を達成するための手段としてmixiを利用していたが、それがいつの間にか目的になってしまったということである。このような症状に陥る人は今後増えていくのだろうか。

 

また、ブログやSNSというものに関心を示さない人々もいる。日記なんて面倒だ、などと言う人々である。確かに文章を書くことは、時間も手間もかかる。多忙な現代人にとって、負担になるという考え方もできる。

 

これらのことから考えられることは、社会が両極端に分かれてしまうということだ。そのことが社会にとって悪影響になるのかどうかは、まだ検討がつかない。しかし、社会が分かれてしまうということを聞くと、悪い方向に進んでいるのではないかと想像してしまう。

 

 「mixi疲れ」にみられるように、ブログやSNSに「振り回される」ということに、ここでもう少し注目したい。日記へのコメントは義務ではない。しかし、友人が書いた日記にコメントする、自分の日記にコメントしてくれた人に対して返事を書く。このことがあたかも義務であると思わせてしまうような傾向があるのである。コメントしなければ友人関係が途絶えてしまうという不安もあると考えられる。ここで私が言いたいことは、ブログやSNSとの付き合い方を考えて欲しいということだ。負担になるほどまでに振り回されないように、うまく付き合いっていくことが求められる。そのためには、一歩引いて自分と向き合うことが大切だと思う。

 

 

5.   まとめ

 

なぜブログやSNSがこれほどまでに人気を呼んだのだろうか。自分自身に当てはめて考えてみよう。mixiを始めるきっかけとなったのは、友人の話を聞いてからである。その存在自体は知っていたものの、内容についてはあまり知らなかった。一種の出会い系サイトではないかというイメージを持っている人もいると思う。しかし実際始めてみると、なかなかおもしろい。同じ趣味を持った人が集まるコミュニティーがいくつもあり、また、友人が日記を更新するたびにメールで知らせてくれる。初めはどのように日記を書いていけば良いか戸惑っていたが、今では自分らしく書けるようになった。何より、友人からのコメントが嬉しい。そして人とのつながりを感じることが嬉しい。「つながり」は安心感をもたらす。このことが、ブログやSNS利用経験者にとって根底にあるのではないだろうか。

 

メリットとしてコミュニケーション能力について触れたが、少し不安に感じることがある。それは、架空のコミュニケーションではないか、ということである。パソコンや携帯電話を使用したこのコミュニケーションが、実際の場、つまり顔と顔を合わせた場になったときにどういった形になるのか。現在ではパソコンや携帯電話がかなり普及し、どこにいても誰かとコミュニケーションをとることができる。しかしそれはモノを媒介としたコミュニケーションである。直接のものとそれとはやはり違いがあると思う。誹謗中傷的なことを述べて、簡単に誰かを傷つけることができる。しかし、傷ついた人の「顔」は見えないのだ。この点に私は問題があると思う。顔と顔を合わせたコミュニケーションの場合、相手の表情を見ることができる。自分の表情を見せることができる。これが本当のコミュニケーションと言うのであれば、ブログやSNSのコミュニケーションにとらわれすぎることはあまり良いこととは言えないのではないだろうか。現代におけるコミュニケーションの場の1つであるという考え方が適切だと思う。

 

 

 

 



[1] ブログ社会の影響度 http://research.goo.ne.jp/database/data/000623/

[2] SNS定期リサーチ http://japan.internet.com/research/20070223/1.html

[3] SNS定期リサーチ http://japan.internet.com/research/20061215/1.html

[4] KandaNewsNetwork  http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0812/01/news037.html

[5] ITpro  http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/USNEWS/20051125/225159/

[6] ITmedia News       http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/21/news061.html