090701ebisuyah
戎谷治記 「音楽ゲームの魅力とその影響」
1.問題設定
最近、ゲームセンターで中高生をよく見かける。というより、より幅広い年齢層をターゲティングしたゲームをよく見かける。このようなゲームの大衆化現象はゲームセンター内だけでなく、家庭用ゲームにおいても見られる。
今回、私は「音楽ゲーム[1](以下音ゲー)」と呼ばれているものに焦点を当て、その歴史的変遷やシステムを踏まえ、企業の販売戦略と消費者の動向、特に後者に着目する。手法として、オンライン上で音ゲーユーザーに簡単なアンケートに協力していただき、ユーザーの特徴と音ゲーに関する意識調査を行った後、得られた結果について考察していく。
2.音ゲーの概要
リズムや音楽に合わせてプレイヤーがアクションをとる(画面で指示されたボタンを押す、ステップを踏む、楽器を模したコントローラを操作するなど)ことで進行するタイプのゲーム。一般に、プレイヤーの行ったアクションがリズムと一致していれば得点が上がっていく。
また、逆に一致していなければ減点されていき(もしくはシューティングゲームのように得点が得られない)、なかにはあまりにもリズムが合わないと曲の途中で強制的に演奏が中断させられゲームオーバーになるタイプのゲームもある。
アクションのタイミングに一定のノルマが課せられ、そのノルマを達成できない場合にゲームオーバーとなるタイプのゲームもある。
3.音ゲーの種類とその発展
皮切りとして1996年ソニー・コンピュータエンタテインメント発売の『パラッパラッパー』は、リズムに合わせてキー入力をするビデオゲームとしては音ゲーのルーツと言える作品であり、爆発的な大ブームを起こした。
また、音ゲーを一つのジャンルとして確立させた作品として、『beatmania』(1997)が挙げられる。その後『ダンスダンスレボリューション』(1998)、『drummania』(1999)、『GUITARFREAKS』(1999)、『KEYBOARDMANIA』(2000)が登場した。ゲームセンターを中心に使用楽器を変えたバリエーション作品を稼働させたことで、より幅広い客層を呼び寄せることに成功した。
音ゲーが複雑化・高度化する一方で登場したナムコの『太鼓の達人』(2001)は、「太鼓を叩く」と「縁を叩く」の2種のみに操作を単純化したことでファミリー層からの支持を得ることに成功した。
家庭用においては独自の面白さを持つものも様々なメーカーから発売され、特にニンテンドーDSソフト『リズム天国ゴールド』(2009)は、音楽ゲームにおける販売記録を塗りかえる[2]など、ジャンルとしての確立性を根強いものとしている。[3]
4.アンケート結果から見えてきた音ゲーユーザーの特徴と意識分析
今回オンライン上でアンケートを行うに当たって、アンケート用紙の作成は を、アンケートの協力は大手SNSサイトであるmixiの音ゲーコミュニティ[4]と音ゲーユーザー用のSNSサイト[5]を利用した。都合上2日間限定のアンケートになってしまい、結果35人というごく少数のユーザーからしか協力は得られなかったため、得られたアンケート結果がかなり偏ったものになっている可能性が大いにあることを断わっておきたい。
得られた結果から、約75%のユーザーが20代前半であることがわかった。音ゲーがジャンルとして確立してから10年以上経過しているため、彼らは当時小学校高学年から中学校高学年だったことになる。多感なこの時期に新感覚のゲームが登場したと捉えると、現在の音ゲーユーザーの中で最も影響を受け易かった層だと考えられる。
次に、ユーザーの男女比が約3:1という結果になった。一般的にゲームは男性ユーザーが多いことを鑑みると、違和感のない結果と私は考える。
そして音ゲーの利用種類に関する結果に目を向けたい。今回利用したSNSとそのコミュニティの特色を踏まえると、項目「beatmania」が際立つと推測していたが、各種類とも極端な偏差は見られない。また、35人という少数の協力者に対し、126の総該当項目数が得られた。これらのことから、音ゲーユーザーは一種類の音ゲーに固執するよりは、複数の音ゲーを利用する傾向があると考えられる。
音ゲーを始めた理由・きっかけに関しても、様々な回答が得られた。質問項目を複数選択可にしたことと、項目分布に偏差がほとんど見られないことから、多答したユーザーが多いこと、そして理由・きっかけは多様であるということ、の2点が考えられる。
音ゲーを利用する頻度に関する質問では、週に3〜5回は利用すると答えた人が16人で、全体の約45%を占めた。また、毎日利用すると答えた人も含めると、全体の約6割弱の人が少なくとも週に3回は音ゲーを利用していることになる。今回の調査では音ゲーの利用を「家庭用」と「ゲームセンター内の筐体」とに区別しなかったために利用時間に関する精緻な結果が得られなかったが[6]、いずれにせよ、定期的に利用するユーザーは多いと考えられる[7]。
音ゲー仲間に関する質問では、約9割のユーザーが「少なくとも1人はいる」という結果になった。この背景として、音ゲーには「ライバル機能」というものがあり、他プレイヤーとスコアやクリア状況を競い合ったり、共通の趣味を持つプレイヤーを持つなどの、友達を増やす役割も果たしている。また、定期的にトーナメント形式の大会やイベントが行われており、音ゲーユーザーの心を惹きつける一役を担っている。
音ゲーによる効果・影響の質問では自由記述式をとったが、非常に多様な意見が寄せられた。ほとんどのユーザーが「リズム感が向上した」、「音楽への関心が増した」といった正の影響について回答していたが、「学校を辞めた」、「金欠状態になった」という負の影響について回答したユーザーもいた。
5.まとめ
今回の簡素なアンケート調査からすでに多様なユーザーがいることが判明した。水面下にいるユーザーがどのような特徴を有しているかを知ることは難しいが、音ゲーを利用する人々を、短絡的に偏ったイメージを持つことは不適切であろう。
また、女性ユーザーを取り合うプレイヤーや、コミュニティ形成に関するマイナス評価[8]といった、社会的な問題が存在する。一プレイヤーとして多様なユーザーと交流を図るとともに、こういった問題を見逃さないようにしていきたい。
[1] ゲームの大衆化を考察する際、客層、ユーザー人口、普及率の三点から一つのキーゲームと考えられる。
[2] IT総合情報ポータル「IT media」http://plusd.itmedia.co.jp/games/articles/0901/26/news087.html
から参照。
[3] 第2章と第3章に関しては音ゲーの概要と経緯であり、情報の齟齬が生じ難いこと、そして他に詳細な情報・情報元が得られなかったため、止むを得ずWikipediaを参照した。
[4] 利用者数の多さから、コミュニティ「音ゲー下手ですが何か」、「UDX!!」の二つを利用した。
[5] 音ゲー専用SNSサイトとしては広く知られている「bemani SNS」を利用した(その中でも最もユーザー数の多いコミュニティ「beat mania UDX」を利用した)。
[6] 家庭用の音ゲーを多く利用するユーザーはお金を費やさず、かつ時間を気にすることなく利用することができる一方、ゲームセンターでは利用料金のほか他のユーザーとの譲り合いや店の営業時間などの制約がかかる。
[7] 一般楽器と同様、定期的に利用しないと腕が鈍ると懸念するユーザーも存在する。
[8] 例えば筐体の独占が挙げられる。