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齋藤美佳「地元から余暇政策を考える」
テーマについて
私の地元の町の経済状況は悪化している。負債も多く、不況にあえいでいるのだ。これといってこの地域にいてよいと思える点がないのもあり、観光客が少ないのはおろか住民までもがどんどん他所に出て行ってしまっているのが実状である。
一方、余暇空間が充実しているところは日常的に経済が動いている。このような活性的な地域とは何が違うのであろうか。その要因には観光資源の有無が大きく関係していると思う。観光資源が豊富にあるところはやはり人も集まり、地域が活性化されているのだ。
人々の余暇の過ごし方で特に経済的効果を持つのは観光であろう。その点においても観光資源が人々の余暇の過ごし方にどう影響するかが重要となってくる。このようなところから観光資源の地域に与える影響や経済への効果などを定義していく。
余暇の定義・意義
余暇活動は、「人間がその本来の人間性を取り戻すための価値ある活動」[1]である。旅行・娯楽・趣味などに費やす時間、あるいはそれ自体のことを指す。また、創造性や個性を育むことのできる重要な時間でもある。
人生80年の時代を迎え、生涯の生活時間のバランスのとれた配分の実現が人々の意識にあがってきた今日、余暇の充実は極めて重要な意義を持つ。そして、余暇の充実は日本の経済社会に「運動・趣味や社会参加活動等余暇の充実は、高齢者の健康管理や生きがい対策の重要な一環をなす。」「余暇活動を通じ、地域コミュニティの形成、地域の文化の継承・発展が期待される。また、地方圏においてはリゾート地域整備等を通じて地域経済の振興にもつながる。」「余暇関連支出は消費支出の中で最も増加が見込まれる分野であるので、余暇の振興は内需中心の調和の取れた経済成長に大きく寄与する。」などの好影響を与えるとされる。[2]
余暇は人間が人間としての姿を取り戻し、創造性や個性を磨くより積極的な時間として捉え直される必要があるのだ。
余暇の必要性
では、なぜ余暇が必要とされるのかというと、余暇活動をおこなったり、その時間を持つことによって、個人の営みや家庭、地域とのつながりの中で自分の生活の質を高めることができるからだ。
余暇の充実は精神的にも肉体的にもゆとりをもたらし、ストレスの多い社会にあって、個人が生涯にわたり心身の健康を保持していくうえで不可欠なものなのである。日本の経済成長による、これまでの労働時間が断続的に増加し続けた結果、職場中心に偏った生活行動から、個人、家庭や地域とのつながりを重視するバランスの取れた生活への転換を促す重要な役割も持つ。
経済水準が高く、人々は心身ともに真に豊かなゆとりある暮らしを送れる、という理想的な国家形成のためにも余暇は重要なはたらきをなすことが期待されるのである。
余暇空間としてみた地元の観光資源における問題
余暇領域における観光資源について調べるにあたって、まず、慢性的な経済不振が続いている地元・塩谷町のまちおこしの政策と現状について調べてみた。
塩谷町の有名なものとして、昭和60年「水環境保全状況が極めて優良である」として、環境庁水質保全局長より日本名水百選の認定を受けた尚仁沢湧水が第一に挙げられる。
この名水を求めて、休みの日には多くの人が採水スポットまで訪れる。今では、ペットボトル飲料として販売されるようになったり、豆腐づくりに利用したりと、二次産物づくりにも力を入れている。さらに、そこは公園となっており、「尚仁沢はーとらんど」という施設が設置されている。そこでは、塩谷町のさまざまな名産品のアピール・販売などもおこなっている。
また、新たな名物となっているヤーコンの栽培も進められている。特産品化のために、こちらも加工品を模索中であるようだ。
塩谷町では、特に体験滞在型の観光の振興に力を入れている。
尚仁沢はーとらんどを始め、私が4年生のとき閉校となった母校である小学校を宿泊施設に作り変えた「星ふる学校 くまの木」などの観光施設の情報のネットワーク化をより進め、情報提供ができるようにしている。地域イベントの施行も積極的におこなっているようだ。
だが、実感としては結果が伴っていないようである。
塩谷町役場によると今後の振興計画として、自然観光地を生かすため、「快適さ」「ここち良さ」「便利さ」のほか、塩谷町の資源を生かした「する観光」「遊ぶ観光」「調べる観光」などに重視し、主要観光地を結ぶ長距離自然歩道・主要河川・サイクリングロード・ハイキングコース等を利用した魅力ある観光ルートづくりもおこなっていくとのことだ。地域資源を生かした、塩谷町ならではの観光政策である。これによって、町の認知度が極めて低い都市住民に向けたイメージアップにもつなげ、地域の活性化を図ろうとしている。[3]
観光資源とは何か
ここで、観光資源の特徴についてみてみる。
観光資源には大きく分けて、テーマのあるもの、非日常を提供するもの、地域特性を活かしたもの、滞在できるもの、体験できるものなどがある。
近年、観光資源には大型化がみられる。一箇所にさまざまなサービス施設を同居・集積させた、複合施設が増加しているのである。消費者のあらゆるニーズに同時に応えられることが観光資源として、より求められている条件のようだ。
次に、観光資源の及ぼす影響についてみてみる。地元・塩谷町と茂木町の比較を例に挙げて考える。
それぞれの町の特徴について調べてみると、前者の面積:約176ku・人口:約1万3千人、後者の面積:約173ku・人口:約1万5千人と、さほどの違いはない。
どちらも自然に富み、これに関連した観光施設を多数もつ。農産物なども名産品としてある。だが、特によく知られている、というものでもない。
茂木町に関して、とりわけ有名なのが、「ツインリンクもてぎ」である。これはサーキットに関係のないイベントも催すことで、レースファン以外にも開けた余暇施設となっている。誰でも楽しめる、が売りである。
この施設は1997年(平成9年)にオープンした。そこで、茂木町の観光入込客数を調べてみると、平成8年に611,287人であったのが、翌年には1,347,432人、平成17年には2,559,496人と、数を伸ばしている。[4]この観光資源の存在による影響は明らかである。
このように観光資源は、経済成長に大きく寄与するものである。
私達は心身の余裕を楽しむために余暇時間において、特別感を出そうと贅沢をしたり、観光資源に浪費したりする。
このように、余暇活動は重要な投資機会である。いかに観光資源が魅力をもっているか、つまり、いかに人々に消費させるかという点で、余暇活動は経済成長にもつながる。
地域に有効な観光資源
茂木町の例では、観光資源が町のアイデンティティとなり、町の地名度をあげた。確固たる集客資源となったのである。
私がこの観光資源の例を挙げたのは、何よりも以前「ツインリンク」の設営候補地のひとつが地元・塩谷町であったということによる。
観光資源による環境破壊問題なども考慮しなければならないが、経済的効果の観点からどういった特徴を持つ観光資源がよいのかを考えると、不特定多数の人々からの支持を得られるものが地域に有効な観光資源であると思う。複合施設に限らないが、あらゆる人々を楽しませ、その多様なニーズを満たすことができる、ということがポイントではないだろうか。
観光資源による追従効果・具体策とまとめ
さらに、観光案内などの集客方法や集客手段である交通機関はどうか。
「車社会」といわれる栃木県であるが、私の地元も交通の便については非常に不便である。どんなに魅力的な観光資源に恵まれていたとしても、そこまでの交通手段のなさも課題となってくる。一方で、興行施設設置などに伴った新たな交通機関の整備が進む可能性もある。
そして、たとえば栃木県においては県央から県南にむけて外国人が多く居住している。また高齢化に伴い、シニア世代の余暇時間が増えたといわれるが、そのような人々にも余暇活動を楽しんでもらうために、わかりやすい案内所やマップなどの設置が有効であろう。
より多くの人々が観光などをはじめとした余暇の時間を過ごせるようになれば、経済的によい効果が得られたりと、さまざまな状況が変わってくる。そのような個人の充実した余暇活動を可能としていくうえで、国や地方公共団体はどのような支援をなすべきだろうか。たとえば、余暇を重視した資源配分をすることだ。空間、土地、時間、情報、交通機関などの資源を少しでも分配することができる。そのために、資金や技術の提供であったり、新たな法を整備したりすることが挙げられる。
今日、観光だけにとどまらないが、都市への一極集中が叫ばれている。そこから、逆に地域の都市観光地化という考えもある。交通機関や、より有効な観光資源の増加・整備が地域の都市観光地化につながるというものだ。
地域がその特色を活かしつつ、より魅力あるまちになるためにはこのような余暇空間が求められているのである。
観光資源の地域における役割は重要である。今後の社会においても、このような余暇政策の持つ意味は大きいものであると思う。
参照
[1] 昭和62年度運輸白書 第1章第1節4 余暇活動の充実
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa62/index.html
2008年6月19日参照
[2] 国民生活審議会の活動 第12次国民生活審議会総合政策部会余暇・生活文化委員会中間報告 余暇充実のための基本的方策
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/shingikai/kokuseishin/spc_top.html
2008年6月21日参照