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久保麻衣子「高齢者の余暇活動について」
1. はじめに
現在の日本は高齢社会が進んでいるため、高齢者一人一人の老後の余暇時間は増加していると言える。また、団塊世代の高齢化により、これから急速に高齢化が進展すると予想されている。また、医療の発達によって、介護を必要としない健康な高齢者も増えてきている。そのような高齢者は、自分自身の健康づくりのため、また、地域への貢献のために社会へ参加しようとする意識がとても高い。しかし、どのように参加していいかわからない人や、一人では参加しにくいと感じる高齢者が多いのである。そのような高齢者の余暇活動の現状を良い方へ変えるにはどうしたら良いか、また、これから社会はどういったことをしていくべきなのか興味を持ったので、このテーマを設定した。
2. 高齢者の余暇について
毎日仕事に追われていた中年期とは異なり、退職後はゆっくりと自分の時間を楽しむことができると考える人は多い。しかし実際は、日々何をしていいかわからなくて、多くの人が退屈を感じてしまうというのが現実である[1]。現役時代に活き活きと仕事をしていた人でも、定年して月日が経つにつれて、元気がなくなったり、活気をなくしてしまうという。
そうならないためには、仕事に励んでいる中年期から生涯設計をするのが良い。退職する前に、自分が何をしたいのか、何に興味があるのかなど考えておくことが大切である。もしもその時にわからなくても、退職するまでには思い浮かぶかもしれない。そうすれば、60歳から余暇活動の準備を始めるよりも、定年後の時間を有効に使えるのである。
3. 新しい余暇活動
高齢者は若者たちのように、ディズニーランドなどのレジャー施設へ出かけることはあまりない。それは、ほとんどのレジャー施設が子供向けに作られているからである。例えば、ジェットコースターなどの絶叫マシーンは子供にとってはとても楽しさを感じるものだが、高齢者にとってはあまり魅力的ではないことが多い。
そこで、近年では高齢者のためのレジャーも増えてきている。例えば、バリアフリーが施してあるボーリング場や、高齢者のためのスキー教室などである。栃木県で言うならば、ろまんちっく村がそういったレジャー施設の一つであると私は考える。ろまんちっく村には天然温泉があり、いつでも花や野菜を見られるハウスがある。また、クラインガルテンというスペースがあり、そのスペースを借りて、自分たちで耕し管理することができる。さらには、石鹸を作ったり、フラワーアレンジメントを習うことができる体験プログラムがあるので、趣味や興味の一環として参加することができる。
新しい余暇の楽しみ方として、自給自足生活がある。都市で働いていたサラリーマンの中で、定年後は田舎で野菜や米などを自分で育てながら、のんびり生活したいと考える人の少なくはない。いわゆるセカンドライフである。自給自足であるため、新鮮で安全な食べ物を作ることができる。経済的には決して楽なことではないが、新しい生活をしたいと考えている人にとっては人気がある。
また、最近ではニュースポーツという新しいスポーツが多く見られるようになった。スポーツの中心は主に若者であるが、ニュースポーツとは高齢者のために作られた新しいスポーツのことである。例えば、バレーボールである。ソフトバレーボールは、軟らかくて大きなボールを使用するので怪我の心配がなく、何人でも同時に楽しむことができる。このように、ニュースポーツとは、誰でも気楽に参加することができ、体力作りや友達作りに役立つ。
また、近年の中高年の多くがパソコンを使うことができる。よって、インターネットを利用したコミュニティも盛んになってきている。その一つが「A・Ha」である。これは40歳以上ならば、いつでも誰でも無料で登録することができるというものである。また、簡単に日記を書いたり、写真を貼り付けて他の人に公開することができる。こうして、SNSを社交場として、普段出会うことができないような人たちと知り合ったり、共通の趣味を持った人と情報を共有したりすることができる。このように、A・Haでは「余暇を楽しむ」ことを目標に掲げ、会員を増やし続けている。
4. 今後の課題
余暇活動を充実させるためには何が必要となるのだろうか。
まずは、学習が必要であると考える。近頃では、余暇に対する考え方の転換が求められている。これまでの日本において、余暇は働くためのエネルギーの回復の時間であると考えられてきた。しかし、本当の余暇の意味はそれとは異なるのである。余暇とは、人それぞれの創造性や個性を磨くために、個人が自由に使うことができる時間であると捉え直される必要がある。そのためには、学習が必要である。正しい余暇の意義や必要性を広め、余暇を楽しむための環境を整えることが大切である。また、一方的に教えられるだけでなく、自ら積極的にたくさんの人と交流をして視野を広げることが望ましい。
次に必要なのは、生きがい作りであると考える。興味のあることを見つけたら、それに優れた先生を見つけることが望ましい。自分一人で学んだり追求するのも悪くはないが、やはり先生の所へ通って、お互いに高め合える仲間を作ることが大切である。それによって、趣味を学ぶことが生きがいになるだけでなく、仲間に会って話をすることも生きがいになると考える。このように、生きがいを見つけることでより一層余暇を楽しむことができる。
余暇を楽しもうとする個人の努力だけでなく、行政の努力も必要である。私たちの身の回りには、高齢者のニーズに合った公共施設はほとんどない。人によって趣味は異なるが、できるだけ多くの人が趣味を楽しめるように、様々な活動に対応する施設を設けることが求められる。例えば、同じ施設であっても、時間や曜日によって活動を変えるなどしても良い。そこで重要なのは、歩いても通うことができるように施設と施設の距離を短くしたり、金銭的な負担をかけないように参加費用をできるだけ少なくするなど、高齢者が参加しやすい環境を作ることである。また、これらの情報を公開することも求められる。
5. 感想とまとめ
現役時代に仕事を生きがいにしていた高齢者にとって、退職後の余暇時間はとても暇で退屈に感じる傾向がある。そこで大切なのは、自分の趣味や興味をあらかじめ見つけておくことである。定年後の余暇時間を十二分に利用するには、計画を立てることが大切である。目標や目的をしっかり持ち、それに向かって進めば、自然と充実できるはずである。また、近年ではSNSなどの新しい余暇活動も目立ってきている。SNSとは、インターネットを利用したコミュニティであるが、それは自宅にいながら多くの人に出会うことができる。同じ趣味をもった人とそれについての情報交換をしたり、家が近所の人を見つけて一緒に出かけたりと、様々な交流をすることができる。
余暇の充実が求められている現在であるが、よく見てみると、高齢者のニーズにしっかりと対応している施設やプログラムは少ないということがわかった。私の祖母は老人クラブに所属していて、しばしば温泉へ行ったり、舞台を見に行ったりしている。しかし、その老人クラブの勧誘は市やどこかの組織が勧めているものではなく、全て仲間どうしの紹介によって集まり、老人クラブの会員となっているという。
私は、そこが問題だと感じている。多くの高齢者にとって、余暇活動にはどのような活動があるのか、どこの施設に行けば自分の趣味を楽しめるかなど、わからないことが多い。これは、高齢者に情報がまだまだ行き届いてないということである。私は、行政は余暇の充実をさけんでいるが、高齢者に直接関わるような取り組みは行っていないと考える。余暇は個人で楽しむものであるので、外部の干渉はすべきでないと考える人もいると思うが、私はそうは思わない。なぜなら、情報を一度にたくさんの人に知らせるには政府の協力が必要であると考えるからだ。多くのコミュニティが一般の人によって運営されているが、私は、中には政府が運営するコミュニティがあっても良いのではないかと考える。そこでは、ボランティアなどといった社会参加を促しても良いと思う。
また、公共施設の民営化が進んでいるが、その施設を運営する団体は積極的に施設の情報を提供したり、利用者である高齢者の意見を多く取り入れて、高齢者が参加したいと思うような工夫をするべきだと私は考える。そうすることによって、施設が余暇活動の場所となるだけでなく、高齢者どうしのふれあいの場となるだろう。また、高齢者どうしが交流できるだけでなく、高齢者と子供、高齢者と大学生、高齢者と会社の上層階級の人たちが話をしたり、何かを一緒に体験したりできるプログラムを取り入れてもいいと考える。そうすることによって、経験豊富な人生の先輩である高齢者からたくさんのことを学び、得ることができるのではないかと考える。