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「『日本に来て初めて電車の中でメークをしている女性を見たとき、思い浮かんだ言葉は『虚栄』でした。きれいでしょと他人に見せているような感じ』・・・・アイルランドの女子留学生、クララ・ダグラスさん(21)は、車内化粧の第一印象をこのように語る」


「『車内で化粧をする人はきっと忙しいんだろうな。でも中国ではあれほど濃い化粧はしない。むしろ素肌美人の方が大切化粧に興味がない人も多い』」


ポーラ文化研究所の調査によると、朝のメーク時間は1994年が平均で7・1分だったのが03年には10・7分に増加した。▽これはあくまでも平均値。『化粧が大好きな女性たちに絞れば、たいていは30分。長い人は1時間』と解説するのは『電車の中で化粧する女たち』の著書がある甲南女子大学専任講師の米澤泉さん(ファッション文化論)だ」


「『羞恥心はどこへ消えた?』の著者、聖心女子大学の菅原健介教授(社会心理学)は「90年代に入ってからアイメークに特にこだわるようになり、化粧時間が長くなった。その結果、家の中だけでは収まらず、通勤途上の電車内にはみ出している』と説明する」


「韓国では地下鉄で10年ほど前から、車内化粧が見られるようになったという。・・・・化粧の位置づけが日韓で近似していることが背景にあるのかもしれない」


「車内で化粧をする行為は自分の楽屋裏を公開するようなもの素顔と作られた顔の違いが他人によくわかってしまう


「日本の大学で英語講師をしているオーストラリア人男性のミルトン・ミルティアドスさん(44)は『電車内で20分かけて女性の顔を完全に変わるのを見た。もっと早起きしてやればいいのに』とその化粧術の巧みさに感心しながらも、時間管理がなぜできないのかと疑問に思ったという」


「『人は見た目が九割』といわれて外見重視の風潮が近年強まり、携帯電話で写真を撮られる機会も急激に増えた。顔の”武装”に迫られる。化粧品会社は毎月のように新製品を投入。なすべきプロセスも年々増えている」


「一方、心理学者の小倉千加子さんは一種の退廃を車内化粧に見いだす。▽『つまり車内でマナーを守ったところで、それで何かいいことがあるんですか。マナーを守っても、はい上がることができない社会。努力が報われないなら、ぎりぎりまで家で寝て、化粧は車内で楽に。そんな意識が潜在的にある』と分析する」


小さな現象の車内化粧だが、人によって見方は様々。多くの要因が絡みあっているようだ」


「・・・地下鉄の東京メトロがマナーポスターで車内化粧を初めて取り上げたのが20012月。『目にあまる行為!』とかなりの非難口調だった。▽03年が二回目。直近が085月の『家でやろう。

で『行為自体が悪いとならないよう、あくまで車内は困るという言い方にしています』と担当者」


「ポーラ文化研究所が078月、首都圏の女性1500人を対象に調べたところ、電車の中でメーク経験がある人は19、全くしたことがない人は81%だった。▽・・・30代以下では経験者は軒並み20%を超え、特に20代後半では経験者が約43%に達した」

080611日経「なぜ平気?車内化粧」)