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植田裕美「快適な空の旅 〜航空機内の余暇〜」
私は空間的余暇ということに着目し、中でも航空機内の余暇について調べた。航空機を利用する目的は、休暇をとってバカンスに向かう人、仕事に行く人、または仕事が終わり、帰宅する人など様々だ。なぜ、ほかの交通機関ではなく航空機を利用するのか、ということにも目を向けていきたい。リラックスした状態で、安全で快適に目的地に到着するために、航空機内の空間的余暇を与える側の視点からも考えていきたいと思い、航空機内空間の中で、ファーストクラス級のシート・機内食・その他のサービスという3点にスポットを当てた。また比較対象として、日本代表は日本航空、ヨーロッパ代表はエール・フランス、アメリカ代表はユナイテッド航空、日本以外のアジア代表はシンガポール航空の4社を挙げた。
◆ シート◆
まずは各社のファーストクラス級のシートについて調べた。ファーストクラスを導入しているのは国際線のみ、という会社が多いという要因もあるが、各国の航空会社に共通していたのは、「長時間のフライトでも、いかに快適に、よりリラックスできる空間を提供できるか」ということにサービスの重点を置いていることだ。日本航空では、シートの素材に世界有数のレザーソファーメーカーのポルトロナ・フラウ社製のものを採用しており、ベッドパットは温かく、羽毛のふとんとまくらが用意されている。また、シート腰部にマッサージ機能も内蔵されている。国際線では長時間のフライトを余儀なくされるが、やわらかいシートでは苦にならない。エール・フランス航空のシートは、柔らかいベージュ色で、クッションは深紅。さすがおしゃれな国、フランスという感じだ。シートの間隔が2メートルあり、体の大きな欧米人でも十分な広さを持つ。180°リクライニングするシートなのでゆったりと眠ることができる。アメリカのユナイテッド航空では国土が広いため、大陸を横断するようなニューヨーク・ロサンゼルス間では国内線にもかかわらず、ファーストクラスの導入がされている。リクライニング機能つきの電動シートには、腰と背中の刺激のための「バックサイクラー」機能もついている。国際線には、ファースト・スイートというシートで、調節可能なレッグレストやヘッドレストはとても快適である。180°リクライニングが可能である。シンガポール航空のファーストクラスでは、幅が35インチ(88.9cm)もあり、クラス最大級で最も広い。母親と幼児なら2人で座っても十分余裕がある。備え付けのテレビも23インチと、他社とは比べものにならないほど大きい。
◆ 機内食◆
機内食には各国の伝統料理をサービスしたり、さまざまなメニューから選ぶことができたりと、各社とても力を注いでいる。初めて訪れる国の料理を、到着する前に堪能することができ、小さな異文化体験といっても過言ではないだろう。日本航空では、日本人の主食である白米にこだわっている。魚沼産のコシヒカリを使用し、離陸後に機内で炊いているため、炊きたての味と香りを楽しむことができる。8月までは、京会席料理と洋食のコースが選べる。どちらも前菜からデザートまでの豪華な食事がサービスされる。海外からの旅行者や、久々に日本へ帰国するビジネスマンなどには大好評だそうだ。2005年7月からフリースタイルダイニングというサービスが開始された。これは好きなときに好きなものを食べられるように一人ひとりの食事のタイミングを乗員が見計らってサービスをしてくれるというものだ。エール・フランスでは機内食にもかかわらず、パリの三ツ星レストランのシェフが監修した、本格的フランス料理を前菜4種類、メインディッシュ6種類の中から選ぶことができる。離陸後に出されるウエルカムドリンクはシャンペンをサービスされる。ユナイテッド航空ではアメリカ‐日本間のフライトで、日本の幕の内弁当が出される。久々に日本に帰国するビジネスマンにとっては懐かしい味であり、日本への旅行者にとっては、日本の文化に触れることができるサービスであり、好評のようだ。ジュースやシャンペン、カクテルなどを出発前にサービスしてくれる。シンガポール航空には子供向けにYummyというメニューがある。これは、ファーストクラスを利用する2歳〜11歳以下の子供を対象にした食事のサービスである。メニューには、パンケーキやラザニア、オムライス、ソーセージなど、子供に人気のおかずが用意されていて、好きなものを食べることができる。
◆その他のサービス◆
上記の4社以外にも航空会社では、長期休暇中にはさまざまなイベントを行っている。例えば、機体に子供から人気のあるキャラクターの装飾をしたり、アメニティーが人気のキャラクターや有名ブランドのものを使ったりしている。今や、「旅をするために航空機を利用する」という人だけではなく、「期間限定や地域限定のキャンペーンのサービスを受けるために飛行機を利用し、ついでに旅行をする」という人も少なくないようだ。
「地球の歩き方」では人気エアラインランキングを行っているが、シンガポール航空は、前回、前々回と第1位であり、2006年は第3位であった。回答者の声に「乗務員が着ている制服が良い」という意見があった。シンガポール航空では、シンガポールの伝統的な民族衣装のサロンケバヤのユニフォームを着ている。これはシンガポールの文化に触れることができると大変人気だという。さらにab-road、フォートラベルの行ったエアラインランキングでもシンガポール航空は第1位であった。
◆ まとめ◆
航空機に乗るということは、それ自体が目的ではなく、単なる移動手段にすぎない。わくわくした期待を抱く人や、急いでいる人、つらい状況で航空機を利用しなければならないひと、乗客の心理は人それぞれだが、どんな状況でも航空機内では、最高のサービスを受けることができ、リラックスしたり、疲れを癒したりすることができる。同じ移動手段でも鉄道やタクシーとは違い、さまざまなサービスを受けることができ、待遇もいい。東京から地方へ、または日本から海外へ行くときに航空機を利用するのは、短時間で移動することができるということだけではなく、このようなサービスによる、空間的余暇を求めているという要因もあるのだろうと私は思う。
参考:(2007年6月13日現在)
日本航空:http://www.jal.co.jp/inflight/inter/first/
エール・フランス:http://www.airfrance.co.jp/index.html
ユナイテッド航空:http://www.unitedairlines.co.jp/jsp/ja/support/united_first.js
シンガポール航空:http://www.singaporeair.com/saa/ja_JP/content/exp/new/firstclass/index.jsp
イカロス出版 月刊「AIR STAGE」2007年3月号 (2007.3)
〈エアラインランキング〉
地球の歩き方 (http://www.arukikata.co.jp/webmag/2006/0601/sp/060100sp_top.html)
AB-ROAD.net (http://www.ab-road.net/osusume/airline2004/)
フォートラベル(http://4travel.jp/4t_ranking/air2006/)