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関根理恵 ヴィーナスフォートからみる女性のためのショッピングモール

                   

1はじめに

余暇を楽しく過ごすための手段としてショッピングが挙げられる。特に多くの女性にとって、ショッピングはストレス解消の手段であったり、自分へのご褒美的な感覚であったりと日常生活の中で大きな楽しみになっている。そんな中、19998月に臨海副都心青海地区にオープンしたのがヴィーナスフォートである。ヴィーナスフォートは、「女性のためのテーマパーク」と銘打ったテーマパーク型ショッピングモールであり、女性の中でも特に、20代から30代の女性にターゲットをしぼっている。今回私は20代から30代にターゲットをおいているところに焦点をあて、多くの大型ショッピングモールが家族などの幅広い年齢層をターゲットとしている中、なぜ20代から30代の女性と幅をせばめているのか、またそのための戦略を考察していきたい。

 

2 2030代の女性にターゲットを絞る理由

 2030代の女性はただ不況感に強く、購買意欲があるからというだけではないようだ。臨海副都心は、お台場を中心に10代の若者のための場所になりつつあった。そこで客単価の低い若年層ばかりが集まり、購買欲の高い層が寄り付かなくなってしまうことを危惧したのである。10代の若者が集まるからといって、その層にあわせた店を造り、その色に染まり、溶け込んでしまう渋谷のような場所にしたくなかったのである。そこで、逆の発想で、核になる層を20代、30代の女性に絞り、その顧客に来てもらうために地域全体をどういった街にするのかを考えるという戦略をたてのであった。

3        女性のための演出やサービス

ヴィーナスフォートは2030代の女性をひきつけるために演出やサービスの徹底をはかっている。まず演出については、ラスベガスのフォーラムショップスのコンセプトを参考にしており、ラスベガスの男性的な再現ではなく、路地風の小路の多い柔らかで女性的な感じのヨーロッパの街並みに改良することで女性のための空間を創り出している。また、ヴィーナスフォートの有名なものとして、天井に空が描いてあり、証明によって一時間ごとに日中から夕空、夜へと空が変化していくという演出がある。この演出はただ単に空を映し出しお客さんに綺麗だと思わせるというだけではなく、女性は夕方に購買衝動が強くなるという心理学の実験データに基づいたものでもある。私たちが普段暮らしている地球では、夕暮れは24時間で1度しか夕刻が現れないが、この演出ならば、1時間に1回夕空が現れるため女性の購買意欲をより多くの頻度で掻き立てることができ、ものが売れると見込んだのである。また、ラスベガスのフォーラムショップで人気のあった、石像が雷鳴とともに動き出し語りかけるというアトラクションを取り入れた。アトラクションというと子供の喜ぶようなものを想像すると思うが、これは一種のショーであり、酒の神様バッカムの像であったり、美の女神ヴィーナスの像であったりと子供たちでなく2030代の女性に焦点をおいたものだということがはっきりとうかがえる。

 

次に、女性のためのサービスについてである。はじめに、ヴィーナスフォートが最も力を入れたのは、女性用のトイレである。床面積400平方メートルという日本最大級の面積に、64室の個室と、メイクアップスペース、ベビールームを完備してある。女性にとってトイレというのは重要であり、長蛇の列ができなかなか入れなかったり、汚かったりすると不快を感じたりその施設自体にもう行きたくないという気分にさえなってしまう。そんな状況をつくらないために女性用のトイレを広くし、それを売りにすることで女性の客を呼び込もうとしたのである。

 

次に、たくさん買い物をして荷物が多くなってしまったら宅配カウンターに持っていくと、一度に荷物を送ってくれるというサービスがある。宅配サービスなんてどこにでもあると思うかもしれないが、大抵は個々の店でそれぞれ手続きをしておりその分だけ手間とお金が多くかかってしまう。それをひとまとめに宅配してもらえるのだから、女性にとっては嬉しいことであり、大量の荷物を持ち帰るという心配をすることなく思いっきりショッピングすることができる。

 

 また、ヴィーナスフォートの売りとして大事な役割を果たしているのが、アテンダントクルーというお客さんのあらゆる要求にこたえるスタッフである。彼らは館内のあらゆるところにおり、困っているお客さんに声をかけ、シャッターを押したり、案内をしたりとお客さんのあらゆる要求にこたえてくれる。このような光景は、まるでディズニーランドのようであり、サービス、接客に重点を置いていることがうかがえる。ほとんどのショッピングモールでは、受付係や案内係として出入り口付近に何人かいるだけであろう。それと比較してもヴィーナスフォートがいかにテーマパークというのを意識したショッピングモールなのかということが分かる。

 

4まとめ

 今まで述べてきたように、ヴィーナスフォートには、2030代女性のためのありとあらゆるサービスや演出が施されている。それは、その顧客層を呼び込むためものであったのはもちろんであるが、同時に顧客層を絞り込んだからこそ、他のショッピングモールではできない徹底したサービス、演出をお客さんに提供できるのだということを強く言いたい。

 

はじめにも述べたが、ショッピングというものは女性にとって日常生活の中での大きな喜びである。その喜びをより多く得るために、2030代の女性は、仕事、勉強などの嫌なこと全てを忘れさせてくれる非日常的な空間を求めているのかもしれない。それが、ヴィーナスフォートのヨーロッパの街並みや天井の演出、トイレなどの設備の充実さ、ありとあらゆる要求にこたえてくれるサービスなのであろう。現在のストレス社会にこのような日常から隔離された空間の存在は非常に重要でありショッピングだけではなく空間でも楽しめるという2030代の女性にとってまさに夢の世界になっているのだ。

 

 

 

<参考資料>

Venusfort report    http://www.townnet.com/tsunagu/venusfo.html

99101REPORT     http://www.aquarius.co.jp/report99/rp991211.html

企業情報誌     http://ozvoice.exblog.jp/m2006-03-01/