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佐藤 恵 「東京ミッドタウンの戦略―タウン内ショップに注目して―」

 

1、東京ミッドタウンについて

話を展開していく前に、まず、「東京ミッドタウン」は何かということについて説明しようと思う。

2000年、防衛庁本庁が檜町から市ヶ谷へ移転したことから、「新しい」都市計画が始まった。それは、広大な緑を臨む檜町公園を含めた、都心に残された大規模かつ優良な再開発事業である。高い可能性を秘めたこのエリアに、オフィス、住宅、商業施設などからなる、これまでにない「複合都市」を創造したいという思いから、国際都市・東京にふさわしい「都市再生」を目指す、一大プロジェクトがスタートした。そして2005年、人々から親しまれるニューヨークのミッドタウンにちなみ、タウンネームを“東京ミッドタウン”に決定し、20073月、キーワードとなる「デザイン」をテーマに日本の新しい価値と感性を世界に発信する拠点として六本木にグランドオープンした。東京ミッドタウンは広大な緑と6つの建物からなる新しいスタイルの複合都市で、街にはレストランやショップ、オフィス、美術館、ホテルなどの施設がある。日本のデザインを世界に広める拠点として造られたことから、街のいたる所にアートが息づいている。また、タウン全体のコンセプトとして、「グリーン」という観念を念頭におき、東京の中心地とは思えないほど緑豊かなつくりとなっている。また、タウン内にあるショップには“上質感”と“他にはない個性”を追求させている。さらに、ミッドタウンが注目を集めている理由として、そのデザイン性の高さがあげられる。敷地内には美術館などのアート施設から日本や海外のアーティストによる彫刻や絵画などが気軽に鑑賞できるようになっている。また、タウン内には36店の様々な店が立ち並び客を楽しませる。基本的に値段は高めであるが、買い物はもちろんのこと、商品を眺めているだけでも楽しむことができる。

 

2、ミッドタウン内にあるショップの戦略

1で述べたように、「東京ミッドタウン」は魅力あふれる新都市としてアピールされてきているが、では、彼ら東京ミッドタウンはどのような戦略をもってして、訪れる人々をひきつけているのか。私は特にタウン内にあるショップや美術館に注目して考えていこうと思う。

まず、かれらがどのような客層をターゲットにしているかということについてである。ミッドタウンは休日は勿論のこと、平日までも多くの人々が訪れる。ショップ全体が団塊世代以上の世代に受けいられやすいよう“和テイスト”に統一されるなど、年齢の高い世代の支持も得られるように考慮されている。また、ショップ一つ一つにコンセプトやこだわりを持たせ、それらの内装やデザイン性を高めることで、若者の心を捉えているように感じる。さらに、建物全体の造りとして、シックな色合いや落ち着いた色のライトを選んでいるため、高級感が漂い、大人のムードをつくりだしていることからデートスポットとしても、若いカップルから老夫婦に渡って支持されている。したがって、狙った客層としては幅広く、より多くの人を惹きつけられるような戦略がとられているようである。

しかし、ミッドタウンの客を惹きつける戦略はこれだけではないように感じる。というのも、人々が余暇として考える要素を新しいスタイルで提案しているようにみえるのである。タウン内には様々な建物が建設されたと先に述べたが、ここで注目したいのは、美術館が建てられたということである。つまり、買い物をしながら、更には美術館にも行くことができるのである。休日にどちらも楽しみたいという人はもちろんのこと、美術館に行くことを余暇の過ごし方として考える人にも、美術館に行ったついでにタウン内のレストランで食事するなどといった二重の楽しみ方ができるのである。また美術館の他にも、写真ギャラリーなどの鑑賞ができたり、広大な緑の中を散歩することができるなど、人々に提示されている楽しみというのは数多い。さらに、ショップなどの内装やデザインにこだわっていることから、買い物以外でも人々の目を楽しませることができるのである。さらにいうなら、何かを買おうとする目的がなく訪れた場合でもその人たちを満足させられる施設が整っているのである。つまり、様々な方向から人々の心理をついたアプローチを展開しているのである。 

このような、人々の余暇と融合させた東京ミッドタウンの形は従来のデパートやショッピングセンターには見られないであろう。では、なぜ彼らはこのような戦略を打ち立てたのだろうか。

数多くのデパートが競い合うように建てられ、そのような中で生活する人々には従来のような形、つまり買い物だけに重点をおいたようなデパートのつくりではあきたりなくなってきていたといえる。そのような人々の心を掴むためには新しいスタイルの導入が必要であったはずである。買い物以外にも余暇として過ごせるスペースを提供するという発想は人々の意表をつくものであり、ありきたりあった今までの買い物に刺激を与えたであろう。

 また、タウン内にあるショップ全体を高級仕立てにした事にも従来との違いが認められ、ここにもミッドタウンの戦略がうかがえる。では、なぜ今までのデパートなどとは異なり、高級志向の造りにしたのだろうか。この問いに関して、私なりに考えてみた。

それは、デパートというものは人々のニーズに合わせて構成されるものであるからだ。ということである。つまり、ミッドタウンが高級化されているというのは、人々の求めている形に合わせて造られた結果だということである。経済的に余裕のある人々が増えたためであろうか、今まで憧れる存在であった高級品に手がとどきやすくなり、人々は以前よりも高級なもの好むようにみうけられる。また、社会全体の傾向としてもプレミアムといった名のついた商品の人気が高まっているなど、高級品を求めようとする人々の姿勢は確かに確認されるのである。したがって、このような風潮のなかで“高級”を売りにした作戦は成功をおさめることができるといえるのである。

 

3、まとめ

わたしが感じ取った東京ミッドタウンにおける様々な戦略は、巧みともいっていいほどうまく人々の心を掴んだものであると実感する。それは、かれらが今という時代の人々を鋭く観察し、人々が欲しているもの、求めているものを機敏に感じとっているからであると強く感じる。時代とともに人々の流行や考え方は変わっていくものであり、それに応じた変化というのがデパートには求められる。そういった中でどれだけうまく人々の心に入り込んでかれらを魅了できるかということがポイントとなってくるのだと感じた。

買い物だけにあきたりなくなった人への、新たな提案、これが今現在考えられる新しいスタイルであり、ニーズである。これからさらに、今度はこのスタイルに飽き足りなくなる人が必ず出てくるだろう。新しいものへの対応は尽きることなく、その都度、戦略がねられることであろう。戦略がねられることについて考えたとき、そこには人々の意思が反映されているということ、また策士から社会への提案がなされているということが読み取れるであろう。

 

 

参考文献:http://www.tokyo-midtown.com/jp/index.html 東京ミッドタウンホームページ