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宮城奈央子「電車旅行という余暇〜青春18きっぷの効能〜」

 

 余暇の過ごし方の1つとして、「旅行」は依然として人気であると言えるだろう。最近では私達のような学生にとっても旅行が身近な存在になってきており、大学生をターゲットとした様々な旅行パンフレットを見かけることができる。旅行会社の競争のため、国内はもちろんの事、海外旅行でさえも決して手が届かない価格ではなくなっているのだ。

 

 しかしそうは言っても、海外旅行となると1年にそう何度も簡単に行けるものではない。経済的な問題だけではなく、時間的な問題も関わってくるからである。それでは国内に目を向けてはどうだろうか。海外がハイカラで注目されがちであるが、日本国内にも魅力的な場所はたくさんあるし、まだまだ訪れたことがない場所も多いだろう。同じ日本であっても都道府県やそれぞれの地域に独特の文化・風習があり、どこへ行っても新しい発見をすることができる。

 

 国内を旅行する際の交通手段としては、飛行機・電車・バス・車など様々なものが挙げられるが、今回私は電車に注目してみたいと思う。その中で、JR旅客会社が発行している「青春18きっぷ」を取り上げて、電車で行く国内旅行の魅力を追っていきたい。

 

 青春18きっぷは、学校が長期休暇に入る機関にあわせ、期間を区切って発売される特別企画乗車券で、全国のJR在来線および宮島航路で使用できる。発行額は1997年夏期から現行の11,500円となっており、みどりの窓口のある駅や旅行会社、大学生協で購入することができる。利用期間は学生がおおむね長期休暇(春休み・夏休み・冬休み)に入る期間で、その約1ヶ月前から発売される。名称が「青春18きっぷ」なので、学生限定だと思われがちだが年齢制限はない。1回分は乗車当日のみ有効で、日付の入っているスタンプ(改札印)を押印してもらうと、定められた列車であれば何度でも乗り降りすることができる。また1枚の乗車券で5回(人)乗車できる。青春18きっぷはその期間のみ有効で、使い残した分を次の期間に繰り越し使用することはできない。ただし利用期間内であれば、その残った分を後日別の人が使用することはできる。

 

 青春18きっぷの歴史は、前身である「青春18のびのびきっぷ」が発売された1982年にさかのぼる。日本国有鉄道の増収策の一環として企画されたきっぷの1つであり、青少年(学生)を主なターゲットとして発売された。当時国鉄には長距離を走る列車が多くあり、その利用を促すためのものであった。発売当初は1日券3枚と2日券1枚のセットで、価格は8,000円であった。それから幾度かの改定を経て現行の様式となった。

 

 私が青春18きっぷの存在を知ったのは大学に入学した後であるが、それは私の地元に電車がなく、情報を目にする機会がほとんどなかったからだ。私は入学して間もなく、駅や大学内の生協などでのチラシや友人からの情報を通して知る事ができた。つまり、それほどこのきっぷは多く宣伝されており、認知度も高いと考えられるということだ。その利用者としてはターゲットである学生層はもちろんの事、留学生など外国人にも愛用している者が多いそうだ。また、時間に余裕のあるリタイア世代にも近年受け入れられる傾向も見られる。

 

 私も利用者の一人であるが、それは青春18きっぷに多くのメリットがあるからである。まずはその価格であるのだが、11,500円は1回(人)分に計算するとたった2,300円である。つまり単純に考えると、運賃が2,300円を超える駅まで行くときや、同じコースを日帰りで往復する場合ならば片道運賃が1,150円を超える駅まで行くときには元が取れるということである。決められた列車ならどこまでも乗り継いでいくことが可能だから、遠くへ行けば行くほどお得になる。また複数人で利用できる事も大きなメリットの一つであろう。友人と一緒に旅行するときにこのきっぷを利用すれば、かなりの節約になる。また先に述べたように、利用期間内であれば別の人が使用することもできるので余ったとしても無駄が少ない。さらに経済的な面以外にもメリットはある。それは、このきっぷが乗り降り自由だという事である。これによって目的地のある旅行だけでなく、目的地のない旅行が可能になる。しかもそれがかなりの広範囲にわたってである。それは他の手段を利用する時にはなかなかできないことであろう。そこに青春18きっぷと、それを利用する電車

の旅行の魅力があるのではないかと思う。また電車での移動は自動車でのそれと違って交通渋滞に巻き込まれることはない。時々なんらかの不都合で電車が止まってしまうことはあるが、ほとんどの場合時間を気にせずにゆったりと移動することができる。のんびりと景色を見ながら、その土地を感じることができるのも私が感じた魅力の一つである。在来線に乗って移動していると、その土地の風景はもちろんの事、電車に乗ってくる人々の雰囲気や会話での方言を聞いたりする事で別世界に来たと実感できる。それも電車旅行ならではのメリットだといえるだろう。

 

 では問題点はないのだろうか。やはり多くのメリットの裏側には、それに伴うデメリットも存在する。多数の利用者がいれば当然大混雑が発生してしまう。特に大都市と地方主要都市を結ぶ幹線においては重大な問題である。また乗れる列車が制限されていることも弱点であろう。特急や急行には乗れないので急ぎの際は利用を断念せざるを得ない事も考えられる。長距離の移動になる場合、己の体力との相談も必要になる。長時間座りっぱなし、もしくは立ちっぱなしの状況が続くとかなりの疲労が予想できる。ただ疲れただけの旅にならないようしっかり自己管理しなければならない。また、きっぷの不正使用も問題となっている。使用中の日付がついたきっぷを途中で他人に譲渡したり、日付を変えたりするなどがその一例である。

 

 このように青春18きっぷにはプラス面もあればマイナス面もある。しかしこれら問題点を踏まえても、このきっぷとそれを利用する電車旅行には大きな魅力があると私は思う。特に私達の学生のような、時間と体力がたっぷりあり、金銭的には弱い者にとっては長距離旅行を楽しむ絶好の手段である。さらに各駅やその市町村の観光アピールを工夫し、力を入れることができれば、たとえ小さな町でもきっぷの乗り降り自由という性能を活かした経済効果が期待できるのではないかと思う。またある区域におけるツアープランなどがあれば、内容によっては幅広い年代の利用者の獲得が期待できる。

 

 JRや各鉄道会社は青春18きっぷの他にも様々なお得な切符を発売している。多くの情報を集めれば、のんびり魅力たっぷりな電車旅行がいくらでも可能である。私達利用者側も、モラルをもって上手く切符を使用すれば充実した旅を楽しめるだろう。たまには時間や目的地を気にしない自分だけのぶらり旅をしてみてはどうだろうか。私はそんな旅をお勧めしたい。

 

 

 

 

<参考>

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E6%98%A518%E3%81%8D%E3%81%A3%E3%81%B7 (青春18きっぷ- Wikipedia

 

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%84%E9%81%93%E6%97%85%E8%A1%8C (鉄道旅行- Wikipedia