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峰村明日香「テレビの発展と現在の私たちの生活」
1私たちとテレビ
内閣府大臣官房政府広報室が平成11年に行った余暇時間の活用と旅行に関する世論調査によると、平日の余暇時間は何をするかという問いに対して「テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの見聞き」を挙げた人が62.7%と最も高かった。休日についても同様の回答が43.5%で一位だった。家族とのだんらん(29.6%)友人などとの交際(21.7%)を抜いてこれらが選ばれるのは家にいながら気軽に、そしてあまりお金がかからず楽しめるからだろうか。この結果からも分かるように我々は余暇時間の多くをテレビ視聴に費やしている。先進国の人々は、平均して1日に3時間テレビを見ているというデータもある。このままのテレビ視聴を続けていくと75歳まで生きた場合、9年間をテレビの前で過ごすことになる。(日経サイエンス-テレビが消せない)これは驚くべき数字だ。
1992年と1999年のギャラップ社の世論調査によれば、成人の4割、10代の若者の7割が「テレビを見すぎている」と回答している。他の調査でも、成人の約10%が自分は「テレビ中毒」だと思うと答えている。テレビを見ることそのものは問題ではない。娯楽や教育の機会を提供するし、気晴らしや逃避の手段になる。テレビを見すぎだと強く感じていながらやめることができないというのが問題なのだ。人々はなぜそんなにもテレビを見てしまうのだろうか。
2テレビの登場とライフスタイルの変化
人々のテレビ視聴の理由としては世界の出来事を知りたい、気軽に楽しみたいといった答えが挙げられる。これは1963年と2002年の調査でほとんど違いがない。(技術革新によるテレビ視聴およびライフスタイルの変遷)人々がテレビに求めるものは今も昔も変わっていない。より多くの情報を手に入れたい、そんな人々の願いに答えて日本でテレビ放送が始まったのは1953年である。シャープより国産第1号の白黒テレビ(14インチ・175,000円)が発売され、この年の2月1日午後2時から「NHK」がテレビジョン放送を開始した。初日の受信契約数は866件、受信料月額は200円だった。当時の大卒の初任給が8千〜9千円の時代なので一般の人々がテレビを購入するのは非常に困難だった。そのため、テレビは街頭で楽しむものというのが主流だった。その後1960年ごろからカラーテレビ放送がスタートし1972年にはNHK総合テレビが全番組カラー化した。2006年には携帯端末向け地上デジタル放送「ワンセグ」放送の開始など近年に至ってもテレビはどんどん進化を遂げている。
このようにテレビはどんどん身近で使いやすいものになった。1990年代は3時間台だった一日の平均テレビ視聴時間は2003年以後の調査では4時間を越えている。これは一日の16%以上の時間を占める。テレビ視聴は睡眠、食事と並ぶ生活の必須行為になっているのである。しかしテレビ視聴時間の増加に伴い睡眠時間の減少という問題が起こっている。1960年には平均8時間13分だった睡眠時間が2000年には7時間26分と47分短くなっている。(技術革新によるテレビ視聴およびライフスタイルの変遷)現代人は寝る時間を削ってまでテレビに没頭してしまう。
3テレビ視聴増加の原因
テレビが登場する以前はラジオが情報を得る手段だった。1925年に東京放送局(現NHK)がラジオ局を開局したのが始まりで、ニュース、天気予報に加え歌が流れるなど人々は音声を楽しんでいた。しかしラジオは音声のみなので視覚に訴えることができるテレビは非常に画期的で多くの人々に受け入れられていった。
その後、テレビをより便利に活用できる技術が開発されたことが大きな成功だ。それはリモコン、VTRの登場である。リモコンの登場により、わざわざテレビの前まで移動しなくてもチャンネルを替えられるようになった。コマーシャルの間に違うチャンネルに替える、見たい番組を探すために次々とチャンネルを替えるというようなテレビを断片的に見る行為が広がった。一瞬でできるのでそれほど必要性はなくとも気軽にパッと替えてしまう。また断片的な見方が広がることでテレビをつけっぱなしにする人が増えた。これは集中して見る人が減ったことを示している。リモコンの登場により、テレビを付けっぱなしにして、面白いところだけみるというスタイルが定着したのである。VTRの登場はテレビの楽しみ方を増やした。あらかじめセットしておけば用事があって見られない番組も好きなときに見ることができる。時間にとらわれないこのやり方は現代人のライフスタイルに合っている。
最近では地上デジタル放送が開始した。従来のアナログ放送より情報量が多い、画像が鮮明、安定した受信ができるなど多くのメリットがある。地デジの登場によりホールで生演奏を聴くような音響を体感できる、またテレビに登場する話者の話すスピードを自分で変えられるなどこれまでは考えられなかったことが実際にできる。テレビはただ見るだけのものから使うものへと変化している。
生まれたときからあるのでテレビは私たちにとって、あって当たり前のものになっている。一般家庭のテレビ所有率はほぼ100%で、あまりにも普及しすぎたために理由などなく、「あるから見る」というのが現状だ。また一家庭で複数所有しているというのもテレビ視聴増加の原因である。一つの家にテレビが複数あることにより家族が一人ひとりばらばらに好きな番組を見るといったスタイルが定着しつつある。
4テレビ中毒
「テレビ中毒」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これはアルコール、タバコなどと同様やめたいのにやめられない状況を言う。ずっとテレビをつけてしまう、どうしてもテレビから離れられない、といった中毒症状である。程度の差はあれ、この中毒の人は多いのではないだろうか。
夫は休みの日に家にいると一日中テレビをつけっぱなしにする。また子供がうるさくなると好きなテレビ番組を見させて静かにさせる。自分で一緒に遊ぼうとせずにテレビに頼る、そんな子育てでいいのだろうかとブログで悩みをつづる母親がいた。他のあるサイトには受験期の息子がテレビにばかり集中して勉強に手がつかなくて心配だと書いてあった。
テレビ中毒に対する対処法はいろいろある。見る番組を決める、スイッチを切る満足感を味わう、家族に消してもらう、などだ。一週間に見る番組のリストを紙に書いて張り出し、それにチェックをしていくというのもいいだろう。しかし本人の意思がないとやはり難しい。テレビは発光により視神経や脳に強烈な刺激を与え、それにより観客がテレビに集中するのではなく、テレビが観客を集中させる能力を持っているのだという(まくべん:勉強哲学)。どうしても自分の欲求に負けてしまう場合、最終手段としてはテレビを持たない、捨ててしまうということがいいのだろうか。いずれにせよ「絶対に視聴時間を減らすのだ」という強い気持ちが大事である。そのため1日2時間しか見ないなど具体的に見る時間、番組を決めることが重要だ。本気の目標を設定することがテレビ中毒から抜け出す第一歩である。
5まとめ
以上テレビがどのように発展し、成功してきたかについて述べて来た。音声のみのラジオから視覚に訴えられるテレビが登場、その後カラー化、地上デジタル放送の開始など進化を遂げている。テレビをより便利に使用できるものとしてリモコンとVTRが登場した。リモコンによってテレビをつけっぱなしにしながら面白いところをつまんで見る見方が広がり、VTRによって好きな時間に好きな番組を見ることができるようになった。また、地上デジタル放送の開始によりテレビはただ見るものから使うものに変化した。しかしこのようなテレビの進化により私たちのライフスタイルは大きく変化した。1日の平均テレビ視聴時間は4時間を越え、テレビが食事、睡眠と並ぶ生活の必須行為になっている。平均睡眠時間も減少していることから寝る時間を削ってテレビを見ている人が多いことが推測される。「テレビ中毒」と言う依存症状に陥っている人もいる。
テレビはとても楽しい便利なものであることは間違いない。私たちはこれからも利用し続けていくだろう。テレビはどんどん便利になりますます手放せなくなるかもしれない。ここで、使用する私たちの意志と自覚が大切である。
参考
技術革新によるテレビ視聴およびライフスタイルの変遷
www.geocities.jp/denki0201jp/sawama.pdf
まくべん 勉強哲学
www.synapse.ne.jp/makuben/tetugaku-12.htm
パパはテレビ中毒
plaza.rakuten.co.jp/donnguri2004/diary/20070113
余暇時間の活用と旅行に関する世論調査
www8.cao.go.jp/survey/h11/yoka/2-1.html
日経サイエンスーテレビが消せない
www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0206/tv.html
テレビの歴史
cozalweb.com/ctv/shiryo/rekishi.html