070627madanbashi

 

真玉橋知香「SNSによる新コミュニケーション ―国内最大SNSmixiを事例に―」

 

 SNSという言葉を知っているだろうか。2002年にアメリカで本格的に普及し、2004年に日本でも本格的に広まった[1]SNSとは、Social Networking Service(別名Social Networking Site)のことで、人と人とをつなげ、その関係性をサポートするコミュニティ型の会員制サービスのことである。20075月、国内最大の会員数を持つSNSmixi(ミクシィ)は、会員数1000万人を突破したことを発表した[2]。このmixiは私たち大学生にとって身近なものとなっている。

現在、私の周りの友人の大半はmixiを利用している状態であり、日々の日記などをネット上に綴っている。私自身も2006年の2月に友人に薦められたことをきっかけに利用を開始したが、登録してみると、既に友人の何人かは登録していて、それぞれにその日の様子や日々心に浮かんだことを日記にしていた。それからmixiは私の暇つぶし、まさに余暇として生活の一部になっていった。学内の友人も次々にmixiに登録していき、あっという間にmixiは学内で、友人の日記を見ていないとわからない会話をも生むようになっていった。

 このようにSNSの輪の広がりは私自身、経験を持って実感している。そしてそれは20042月にmixiがサービスを開始して以来、20067月には会員数を500万人まで伸ばし[3]、それから一年以内に会員数を倍増させたという公表データからも、mixiをはじめとするSNSの普及が伺えるだろう。では、このSNSmixiとはどのようなものか。

 

 まずはmixiのターゲット層をあげてみよう。

mixiのサービスは現在PC版とモバイル(携帯) に分かれており、PC版の利用率を見てみると、1819 9.7%、 2024 33.8%、2529 24.7%、3034 16.4%、3539 8.1%、4044 3.7%、4549 1.9%、50代以上 1.6%となっており[4]、利用者層は10代から20代前半までが最も多く、次いで20代後半も全体の約4分の1を占めている。モバイル版との比較においては、20代前半までがPCよりもさらに利用率を伸ばしているが、それ以外の年代では利用率を低下させている。全体の利用者に対する20代までの利用者の占める割合はPC版でも68.2%となるため、mixiの主なターゲット層は20代までの若い世代ということになるだろう。

 

では実際にこうした世代がmixiを利用するのはどういった利点や楽しみがあるのからなのだろうか。

第一に、mixiは友人の招待メールによって始めて登録することができるようになるため、登録した時点ですでにサイト内には友人の輪が出来上がっていることが多い。つまり簡単に現実世界と同じ友人関係を築くことができるのである。mixi内で見つけた友人同士はお互いの承認の元で「マイミクシィ=マイミク」になる。現実世界の友人の輪はこのマイミクの中に反映されているため、簡単に見つけ出すことが可能になっている。またmixiの登録情報はmixi内に対して公開レベルを設定できるので、現実世界の友人にのみ自分が分かるように設定することもできる。こうした紹介登録制、登録情報公開レベルによってある程度は個人情報を保護できる仕組みになっているので、プライバシーがさらされる危険性も低くなる。もちろん完全に安全というわけではないが、こうしたある程度の安心感はユーザーには不可欠だろう。

第二に、mixiでは最も魅力ある機能だといえるのが、利用者がそれぞれ自由につけることができる日記機能である。この機能は要するにブログと同じであるが、個人が自由に自分のページに日々の出来事を、ブログよりも気軽に掲載することができ、なおかつ他の人たちからコメントをもらうことができる。この機能とブログとの差別化されるべき利点は、無制限の不特定多数の人々に向けてでも、特定の人に向けてのみ書くということでもなく、ある特定の範囲の人に向けて書くことができるという点にあるように思う。もちろん特定の範囲というのはmixi会員全体にあたるのだが、この場合特に強調したいのが、マイミクの友人たちに向けてという意味である。利用者は現実世界でわざわざ顔を突き合わせて改めて話す内容でないことや、日ごろなんとなく思っていることなどを特定の誰に話すでもなく、しかし一方でマイミクという現実の友人全体に向けて話すことができるのである。日記の内容はだいたい日常の生活から書き出されることなので、内面的な事柄に及ぶ場合も多いが、掲載者も見られることを前提に書いているので、見ている者は自由にその日記にコメントすることができる。現実世界でも会っている友人であるならば話題の共有が容易に可能で、遠く離れた友人であっても共感したり、時には励ましたりすることができる。この日記を書くという個人の情報発信機能によって、お互いの知らない一面を知ることもでき、友人関係を深める手助けにもなることもある。

 第三にあげられる利点としては、現実世界の友人関係では困難になりがちのことがmixiでは容易に可能になるということだろう。ネットを介することで地元の友人や海外に長期留学した友人の近況なども知ることができ、距離を感じさせないコミュニケーションが可能となるのである。mixiを始めとするSNSの多くは個人のページを持つことになり、そこを訪れることによっていつでも個人の近況を知ることができるようになっている。個人と個人の間で行われるコミュニケーションという点では、ネットであっても顔の見えるコミュニケーションであるといえるだろう。また、ログインさえすればいつでも閲覧できるというネットの特性により、相手の時間を気にせずメールやコメントを送ることができることも利点である。

  最後にmixiは、現実世界以外の人間関係を築くこともできる。mixiにはチャットの機能に近い、共通項を持った者どうしが集まる「コミュニティ」という機能がある。集まりの種類は多種多様で、共通の趣味嗜好、好きな有名人、居住地域、出身校、出会いを作る目的のものから血液型まで、さまざまなコミュニティが存在している。こうした集まりの場では意見や情報を交換したり、共通の話題や興味を持った人々の集まりであるので、現実の友人以上に話題が盛り上がったりするということもある。実際にmixiのコミュニティで知り合った人々が、現実世界で会ったりする「オフ会」も行われている。

 このようにmixiは、ブログとチャットの両方の機能を兼ね備えており、気軽にその機能を利用できるためにさらに利用者数を伸ばしていくと予想される。

 

しかし、その内部ではほとんどの利用者が現実世界の友人関係とネット上の関係が入り混じった状態で交友関係を構築しているため、さまざまな問題も起こってきている。

 200610月にはウイルスに感染した男性のPCのファイル共有ソフトにより個人情報がネットに流出し、その内容とmixiに登録されていた実名から本人だと特定され、交際女性のわいせつ画像とともにmixi内の日記などの情報もネット全体に公になる事件があった[5]。また、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を製作しているガイナックスの取締役がmixiの日記での失言により引責辞任に追い込まれたり[6]、未成年の大学生の飲酒運転日記を批判された大学側が「指導の不十分さを深く反省する」とする文章をweb上に掲示したりする[7]など、mixiでは問題が多発している。

 

こうした問題はmixiをはじめとするSNSで、現実世界とネット世界の広がりとの境界意識があいまいになっていることに起因するのではないだろうか。犯罪被害者のmixi日記が報道されるなど、私的な情報が流出したケースも多々続いており、ネットに掲載してしまった時点でそれはもう実質的に個人情報とはいいがたい現状がある。こうした問題に対して潟~クシィは、日記や登録情報の公開レベル制度を設けるなど現在のシステム導入への対応をしたが、保護の現状はmixi内の情報は報道しないでほしいという旨のリリースを出すにとどまっており[8]、その安全性は「一応」保護しているという状況であろう。

さらに現在、元オウム真理教(現アーレフ) の上祐史浩が教団を脱退し設立した新団体の広報活動の一環として、20073月にmixiに参入しており、宗教的な活動も内部では行われているようだ。

また、最近では「mixi疲れ」という言葉も出てきており、これはそれまでmixiで多くの人と交流していた人が、突然mixiを退会してしまうなどの現象をさして言う[9]。原因は多くの関係性の薄い人とマイミクになりすぎてしまい、友人のしるしとして日記にコメントをつけるという行為が義務化していき、それを負担に感じてすべての関係を断絶してしまうといものだ。

少しずつ日本に浸透しつつあるmixiを始めとするSNSは楽しみもある反面、関わり方を誤れば日常生活以上の負担と危険性を負う。SNSのよりよい利用のためには、SNSがどんなにクローズドなセキュリティを持っていようともそれは常にネットという情報網の一部になっているということを自覚して利用しなければならないだろう。今後SNSとどう付き合っていくかは、私たち個人の責任と判断に任されているのである。



 



[1][1] ウィキぺディア 「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」頁より

[2][2]株式会社ミクシィ プレスリリース 「『mixi』、ユーザー数1000万人突破」 2007521http://press.mixi.co.jp/press_070521.html

[3][3] 株式会社ミクシィ プレスリリースSNSmixi 500万人突破〜インターネット社会のインフラとして、第一歩を踏み出す〜」2006726http://press.mixi.co.jp/press_00060726.html

[4][4] 同注2

[5][5]JCASTニュース 三洋電機お粗末社員 女性わいせつ画像流出 20061010日 http://www.j-cast.com/2006/10/10003314.html

[6][6]IT mediaNews mixi日記の記述で引責 ガイナックス赤井氏が取締役辞任 2007427日 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/27/news092.html

[7][7]IT mediaNews  mixi19歳が飲酒運転を告白 大学が「指導不十分」と謝罪 20061114日 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0611/14/news057.html

[8][8] 株式会社ミクシィ プレスリリース mixi日記の報道について http://mixi.co.jp/press_00060500.html

[9][9] IT media News mixi疲れ」を心理学から考える 2006721http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/21/news061.html