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国場麻希子「携帯電話から読み取る“若者”」

 

はじめに

               「余暇」とは何か。辞典で調べてみると、「余ったひまな時間、仕事の合間などの自由に使える時間(大辞泉)」と記載されていた。現代の若者(10代〜20代)といわれる私達は余ったひまな時間、仕事の合間などの自由に使える時間何をしているだろう。朝、学校や会社に行く電車やバスの中の時間、お昼時間、放課後や仕事帰り・・・。また、それだけではない。人と待ち合わせをしていて待っている時間も余ったひまな時間と考えることができる。そのどの時間にも「携帯電話」の存在が思いついた。私達は少しの合間でも携帯電話をひらいてはいないだろうか。いったい一日にどれくらいの時間を携帯電話と過ごしているのか、考えてみると結構携帯電話をいじっている自分が思い浮かんだ。実際に若者の3分の1近くのユーザーが1日に3時間以上、携帯電話を使用していると最近の調査でわかった[1]。人は一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、その「もの」や「人」に影響を受けると思う。そしてその携帯電話は私達の相手をするために日々進化しているといえる。1年に1回、もしくは2回の割合で最新機種が登場する。また、機種だけではない。基本料金プラン以外にもついてくる「オプションサービス」も充実してきた。それは人が一人ひとりみんな違うように様々なプランが準備されていている。この「携帯電話機種の機能」と「オプションサービス」という2つのキーワードから私達“若者”について探っていこうと思う。(ここで少しオプションサービスの定義をしたい。これは個人的に追加で月額料金などの料金を払うなどして受けるサービスのこととする。)しかし、「機種電話」といっても結構膨大な数がある。最近では携帯電話産業に介入してくる企業も増えてきた。そこで昔から主力である株式会社NTTドコモ、斬新な切り口で顧客を増やし、ドコモ独走だった携帯産業を変えたKDDI株式会社(au)、また、ホワイトプランなどといった今までにない定額サービスを打ち出し、新規契約数を前に上げた2社を追い抜いて1番になった注目度抜群のSoftBank3社にこのレポートでは絞る。[2]

 

携帯電話機種の機能

              「機種の機能」はバラエティにとんでいる。今もっとも新しい、興味を引く機能の一つにワンセグケータイがある。ワンセグ機能とは国内における地上デジタル放送(ISDB-Tintegrated service digital broadcasting-terrestrial)による、携帯電話でテレビ放送のサービスを表している。通話料は無料で放送開始は200641日である。インターネットを活用した市場調査やマーケティングコンサルティングを行う株式会社インタースコープ(敬称略)の調査によると、「ワンセグ」の認知率が200511月では9.9%だったのに対し20064月の調査では前回の6倍以上にあたる65.1%になったと発表した。[3](対象者は15歳から59歳の男女、有効回答は1万)この資料からわかるように、社会の人々の興味を引いているといえる。テレビは私たちにありとあらゆる情報を与えてくれる。そして娯楽でもある。しかし私たちの生活は忙しく、常に何かに追われている感覚がある。世の中の動きも早い。こういった機能を求めるのは、その中で少しでも時間を見つけて周りについていきたい、楽しみたいと思っている現われではないだろうか。また、ワンセグを知っていると回答したうちの81%が今後もサービスを利用したいとの意向を示したことから、ワンセグ機能は人々から支持されているといえる。

 

              ちょっと出かけるとき、例えば近くのコンビニに買い物に行くとき、カバンを持つのは面倒くさい。携帯と財布だけを持って出かけるという経験を誰しももっているのではないだろうか。そんなときに役に立つのに「おさいふケータイ機能」がある。会社によってはiモードFeriCaEZ FeriCaS!FeriCaなどと若干呼び名は変わるが、どれも携帯をコンビニなどに設置されている対応のレジにかざすだけで買い物ができるといものだ。これはあらかじめ携帯に入金(チャージ)してから使用する。普通の買い物のほかにもポイントカードとして使えたり、チケットの搭乗手続き、クレジットカードとして使えたりと活躍の場は広い。ある意味財布を超えたといっても過言ではないだろう。もちろんどの会社のもSuicaに対応している。これは社会の中にいろいろな手続きを電子化することによって、簡単、スピーディーさを求める風潮があると考えられる。手間をできるだけかけない、時間をできるだけかけないといった意識が社会全体にあるように感じる。これは前の段落と通じるところがある。また、これにはセキュリティ面も強化されているとも捉えられる。財布に鍵をつけて歩いている人はいるであろうか、いやいない。しかし、この「おさいふケータイ機能」にはセキュリティが充実しているので落としたりしてもすぐに携帯にロックがかかるようになっている。残念ながら小さな犯罪が徐々に増えつつある日本の社会状態に対応する画期的な機能だと思う。

 

              人々はこの情報が大量に行きかうこの現代を生き抜くために、また、娯楽を楽しむといった原始的な欲求を満たそうとして携帯という道具を使っている。さらには無駄を嫌い、スピーディーさを求めている。何をするにも「効率的に満足するといった現代人像」が以上の考察から浮かんできた。

 

オプションサービス

               まず1つ目は3社に共通するものを挙げたい。「メールを絵文字だけでなくさらに加工するサービス」だ。これはデコメール(ドコモ)、デコレーションメール&ラッピングメール(au)やアレンジメール(SoftBank)といろいろな呼び名がある。ちょっと前に他社の携帯機種にメールを絵文字つきでおくれえるようになったと喜んでいたが、もうここまで進化していた。絵やアニメーション、写真、メール画面の壁紙まで可愛くすることができる。メールは顔が見えない、表情が見えないからなどということから人間関係が希薄化するという議論が出ていたが、このような携帯の変化を見るにあたり、むしろ人と人とのコミュニケーションの頻度や密度はさらに高まったように感じる。若者、人々は他者とのコミュニケーションを求めているのだ。忙しい世の中でも少しの時間で、相手の都合のいい時間にも接触を図りたいという欲求が見られた気がする。

 

               しかし面白いことに最近ドコモで面白いサービスが始まった。2 in 1(ツーインワン)というサービスだ。これは1台の携帯で2つの番号と2つのメールアドレスを持てるというサービスである。カタログには「モードによる使い分けができて」と書かれていて、仕事とプライベートとを区別できるといったことをアピールしている。確かに携帯電話が普及し、生活にとけ込むようになって常に他者から干渉を受けるようになってきた。生活の中での公的、私的なことの区別がつきにくくある。でもその干渉のもとである携帯電話の電源のon/offや着信を受ける/受けないなどといった選択の自由は所有者自身にある。このサービスもこういった選択をサポートするサービスともとらえられるのではないだろうか。

 

               以上の2点を総合して人々は他人とのつながりを求める一方、他人にあまり干渉されたくない、などといった矛盾した2つの感情が複雑に絡み合っていると考えられる。また、その欲求にあわせての選択は容易にできるものであり、自分を軸にして行動を起こすことができる。これらの特徴は長所とも短所とも判断することはしないで、ここではこれが今現代の人間関係、コミュニケーションのあり方だと捉えるにとどまる。

 

まとめ

               若者と呼ばれる世代は短時間でより多くのことを得たいといった合理的で、効率的な方法を好むようだ。実際に社会もそれを求め、また発展してきた。私はその趣向が若者同士の人間関係にも現れたと考える。人と人とのコミュニケーションは満足感や幸福感を満たすと同時にストレスにもなりうる。それらの長所や短所を最大限に抑えた結果なのかもしれない。携帯でのコミュニケーションは、そのとりたいといった欲求をぶつける相手のストレスを最小限に抑えることが可能だ。しかし、この現代の人間像は確かに一昔とは変わっている。その変化によってよくない傾向が出ているのも確かだ。多数あるが一例を挙げると「携帯に依存する若者も増えてきている」といった問題がある。[4]

 

               人が携帯電話を進化させているのか、それとも携帯電話が人を変化させているのか。それはまだわからないが、確実に携帯電話は人々へ影響をもたらすものであり、社会を映す鏡である。柔軟性のある若者にとってその影響は大きいと思われる。生活が日々変化していくこの世の中で、携帯電話はこれからも人々の生活に合わせて変わっていくであろう。日々の日常について考えることは難しい。それは多様で複雑で抽象的だ。人間の生活の一部となってきた携帯電話は詳しく見ることによって、私たちの日常が有形化し、客観的に考えることができる1つのツールとなり得る。その変化は今後どういった恩恵を私たちに与え、どういった不利益を及ぼすのか考えてみると、変化が現れやすい携帯電話のこれからの進化が楽しみだ。



(参考文献)

 

[1] AFPBB Newshttp://www.afpbb.com/

   若者の9割、「携帯電話が生活を変えた」http://www.afpbb.com/article/1389800

 

[2]  NTTドコモホームページhttp://www.nttdocomo.co.jp/

   Au by KDDI(KDDI株式会社)ホームページhttp://www.au.kddi.com/

   SoftBankモバイルホームページhttp://mb.softbank.jp/mb/

   *各社20076月の携帯電話総合カタログも参考

 

[3]  株式会社インタースコープホームページ:http://www.interscope.co.jp/index.html

 (記事「Interscope News Release: http://www.interscope.co.jp/release/060426.html

  

   社会法人 中央調査社:http://www.crs.or.jp/index.html

「ケータイメールな人間関係〜文化庁「国語に関する世論調査」の結果を中心に〜」:http://www.crs.or.jp/52411.htm

 

   辻大介の研究室:http://www.d-tsuji.com/index.htm

   (記事「若者の人間関係は「希薄化」したのか」:http://www.d-tsuji.com/paper/e03/index.htm

 

[4] Psychological Circlehttp://www8.plala.or.jp/psychology/

   (記事:http://www8.plala.or.jp/psychology/disorder/fureai.htm)