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夢から見える余暇

 

人にとって「余暇」とは何であろうか。人の求める余暇とは、ゆとりという言葉と同意義であろう。経済的ゆとり、すなわちモノに対する欲求がほぼ満たされている現代において、時間的ゆとりを得ることが焦点となっている。すこし前の統計になってしまうが、年間休日総数を比較すると日本は世界でトップの少なさである(平成7年「労働経 済の分析」)。現代の日本人のゆとり追求には、時間的ゆとりの確保が大前提であるが、「余暇」と区切られた時間をいかに有効に使うか、精神的な満足感を得るかが非常に重要である。時間的な余裕がない日本人にも、少なくとも一つは夢がある。その夢は、現実的なものから非現実的なものまで多種多様である。この「夢」をテーマに、日本人の余暇政策に関してひとつのニュースを取り上げ考察してみる。

 

@ビックなニュース

日本スポーツ振興センター2007513日、サッカーくじ(toto)のひとつ、第277回「BIG(ビッグ)」(J1J214試合の結果予想)で1等(全試合的中)が出ず、次回への繰越額が過去最高の149,3797,800円になったと発表した。Totoとは、Jリーグの14試合の勝ち負けを予想するくじである。「BIG」とは、試合の勝ち負けをコンピュータが予想してくれて、購入金額を決めるだけで簡単に買えるくじである。今回1等がでなかったことで、12回連続で1等が出ていないことになり、繰越金額が15億円になったことと、販売集中によるシステム障害がテレビなど で報道されたこととで注目を集め、518()は、どこの売り場でも「BIG」を買い求める人の長い列ができた。[T]

 

このように、最高6億円が当たるスポーツ振興くじ(toto)が異常な人気を呼んでいる。私もこんなに簡単に買えて、またその1等賞金が6億円となると、「もしかすると…」と一攫千金に夢を持ち、1枚ぐらいは買ってみようかと思うほど興味深い宝くじだと思った。1等賞金が6億円で、年末ジャンボ宝くじやその他のジャンボ宝くじ1等当選金額の2倍である。なぜ今回、このような異常な人気を呼んだのであろうか。

 

今回はメディアが騒いだこともあり、尋常でないほどの人気を呼び、どこの売り場でも「BIG」を買うために長蛇の列ができてしまった。このことから見ると、多くに人は一攫千金の夢にお金を投資し、また長蛇の列に2、3時間以上も並ぶことに自分の余暇を使用したのである。それほどその一攫千金の夢、そのために長蛇の列の一員になることで、「わくわく」といったような感情を抱き、それで多くの人は自分の余暇を楽しんだと考えることができる。このような余暇の使い方は、ほかにも多くある。たとえば、ギャンブルである。ギャンブルは、「もしかすると…」という一攫千金の夢を描きながら、機械の前に座り、お金を投資し、「わくわく」といったような感情を抱くために自分の余暇を使用している。

 

したがって、今回のビックなニュースから自分の余暇の使い方を考えると、「BIG」は1等賞金が6億円であり、これが当たるかもという胸の高鳴りと一攫千金の夢成就のために数時間並ぶ時間を、多くの人は自分の余暇の時間として使用したのである。以上は、ビックなニュースに関して考察してきたが、果たしてそのスポーツ振興くじとは何であろうか。以下に述べる。

 

Aスポーツ振興くじとその役割

 スポーツ振興くじは、子どもからお年寄りまで、誰もが身近にスポーツに親しめる環境整備や、国際競技力向上のための環境整備など、新たなスポーツ振興政策※を実施するため、その財源確保の手段として導入されたものである。スポーツは、人生を豊かにし、充実したものとするとともに、人間の身体的・精神的な欲求に答える世界共通の人類の文化の一つである。心身の両面に影響を与えるスポーツは、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成や個々人の心身の健全な発達に必要不可欠なものであり、人々が生涯にわたってスポーツに親しむことは、きわめて大きな意義を有している。

 独立行政法人日本スポーツ振興センターでは、国のスポーツ振興基本計画に 基づくスポーツ振興政策の一環として、国のスポーツの国際競技力の向上、地域におけるスポーツ環境の整備充実といったスポーツの普及・振興を図るため、「スポーツ振興基金」の運用益や「スポーツ振興くじ(トト)」の収益、また、国からの交付金である「競技強化支援事業助成金」によりスポーツ振興のための助成を行っている。〔U〕

 

※ スポーツ振興くじが目指すスポーツ振興政策〔U〕

@ 誰もが身近にスポーツに親しめる環境の整備

週休2日制、学校週5日制、高齢化社会などに対応し、子どもからお年寄りまで、家族や仲間で身近にスポーツに親しめる環境づくり

A トップレベルの選手の国際的競技力向上のための環境の整備
ナショナルトレーニングセンターなど、オリンピック等の国際競技大会で活躍する選手強化のための拠点整備

B 国際的スポーツ活動への支援
我が国で開催されるオリンピック競技大会、アジア大会、ワールドカップサッカー等の国際的なスポーツ大会の開催の支援

C スポーツ指導者の養成、資質の向上

スポーツに親しむ人が、いつでも、気軽に、優れたスポーツ指導者による指導を受けられる体制の整備

Bまとめ

このようなくじは、ヨーロッパや南米の多くの国々で既に長い伝統を持っており、その性格は、宝くじのように「夢」を買うことで小口の「寄附」を募るというものであり、あわせて、試合結果を推理する楽しみという「知的ゲーム」の要素を加えたもので、その収益は、スポーツ振興のための貴重な財源となっている。例えば、イタリアなどでは「半分は子どもたちのために、半分は自分の夢のために」として広く親しまれている。日本の今回メディアを騒がせたニュースも、多くの人が自分の夢と間接的ではあるが、子どもたちのために、多くの人は余暇を使用したといえるのではないだろうか。[U]

 

(参考資料)610日現在

[T] http://www.excite.co.jp/News/society/20070513211400/20070514M40.097.html

[U] http://www.naash.go.jp/toto/what.html