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槐さおり 「“効率性”からみえる世界〜ファストフード・ショッピング・スポーツの視点から〜」

 

1】はじめに

 「効率性」という言葉を辞書で引くと「効率のよいこと。手間ひまを無駄なく使うこと」とある。次に「効率」について引いてみると、「一般に、仕事の能率」とある。私なりに解釈を加えると、効率性とは「目的に対する最適な手段の選択、つまり、どのような状況のどのような目的に対しても、最適な手段を見つけることができること」と考える。そこで、現代社会において物事がどのように効率的に進んでいるのか、どのように時間を有効活用しているかについて調べてみたいと思い、このようなテーマ設定をした。

 

なお、以下に続く文章は、「効率性」という点に注目し書いてあるので、効率性を求めることがいいことであるとか批判をしているわけではないので、留意していただきたい。

 

2】ファストフード産業 〜マクドナルドを例に〜

現在、ファストフード産業の中で売り上げ、店舗数などで上位に位置する日本マクドナルド。日本では1971年、東京銀座の三越で一号店がオープンしたのをきかっけに、現在では約3800店舗まで拡大し、将来的には、10000店舗を目指している。マクドナルドを始めとするファストフード店を利用する理由としては、やはり「安くて早い」が最大の理由であろう。その実現のためにマクドナルドには効率性を上げるための様々な戦略が存在する。

 

 マクドナルドは、駐車場が隣接しているのでたやすく駐車できる。カウンターまで少し歩き、並ばなければならないことはあるが、通常はすぐに食べ物を注文でき、お金を払って受け取る。他のレストランでは選択肢がたくさんあるが、ここのメニューはとても制限されているので、客はそのメニューから選択するだけでよい。食べ物を受け取りちょっと歩いてテーブルへつくと、食事ができる。片付けは簡単で、分別しゴミ箱に捨てるだけである。また、ドライブスルーは、窓口まで運転し、注文し、会計し、食べ物を受け取り、すぐに走り出すことができる。ドライブスルーはファストフード店にとってとても効率的である。客がドライブスルーを使えば使うほど、必要な駐車スペース、テーブル、従業員が少なくてすむ。さらに、消費者がゴミを持ち帰ってくれるので、ゴミ箱を増やす必要がなくなり、ゴミ箱を定期的に空にする従業員もいらなくなる。こんにち、マクドナルドは、さらに小さく、さらに安く、さらに効率的なファストフード点になるという成長目標がある。

 

 しかしこれらは、店側と客側の視点からすると大きく異なる。店側は、行列すべき列、限られたメニュー、客の回転率を上げるために作られた座り心地の悪い椅子といったすべては、食事に来た客たちに経営戦略上必要なこと「早く食べてすぐに出て行け」に誘導している。さらに、ドライブスルーは購入した客たちが食べ始める前に立ち去らせるようにできている。一方で、客は数多くの無償労働をしているのだ。客は列を作り、食べ物をテーブルまで運び、ゴミを捨て、トレイを片付ける。客は従業員に変わって働いているのである。このようなことは、ウェイターにしてもらうより効率的だろうか。ファストフード店にとって効率的なものは、しばしば客にとって非効率である。実際、私がニュージーランドに留学をしていたとき、バーガーキングというファストフード店へ入った。バーガーキングでは、食べ物を受け取る際に空のカップが渡され、自分でカップに氷とジュースを入れなければならかった。初めは驚いたが、周りの客はごく普通に自分でジュースを入れていた。これも店側が客を働かせていっそう効率を上げていることになる。このようにファストフード産業は効率性を上げようと日々努力しているのである。 

  

3】ショッピングにおける効率性

 買い物をする上で、各種の専門店を転々とするよりもデパートが効率的であるのは明らかである。近辺で言えば、ベルモールやインターパークなどのショッピングモールは、いろいろなデパートやいくつもの専門店が同じ建物に店を出すことで効率性を上げている。一度にたくさんの店を訪れることができ、食品街で食事をとり、映画を観ることができ、髪を切ったりもできるからである。買い物における効率性の追求は、ショッピングモールだけでは終わらない。2つか3つの品物を必要とする場合には、ショッピングモールへ行くよりもコンビニへ行ったほうが効率的である。広い駐車場に車を停め、カートを押してまわり、目指す商品を探しながらいくつかの通路を行き来し、レジで待ち、それから遠くに停めた車まで買ったものを持っていく必要がないのである。コンビニでは、客は店の真正面に車を停め、整然と並べられた商品(品数は多くなく、概して高いが)から必要とするものをすばやく探し出すことができる。ここには、ファストフード店と同じく限られた商品だけが用意されている。店舗には一般的に求められる商品のラインナップのみを揃えようと努力を続けている。コンビニの効率性は、各商品につき1ブランドのみを販売する点にあるので、たくさんの品揃えはできない。消費者は選り好みをしようと思えば、スーパーマーケットへ行かなければならない。最近では、通販やテレビショッピングは、自宅にいながら気軽に買い物を楽しむことができることで人気を獲得している。さらに効率的なのは、ケータイショッピングだろう。いつでも、どこでも1クリックで商品の購入ができ、カードなどで支払えばあとは商品の到着を待つのみなのである。

 

買い物にも、客を働かせる多くの例を見ることができる。商店街などの食料品店では、店員が必要なものを探してくれていたが、スーパーマーケットでは、買い物客自身が長い通路の広がる店内で欲しいものを歩き回る店員として、買い物へ行くたび働かなければならないのだ。

 

4】スポーツ分野における効率性

 スポーツにおいても数多くの効率性が見られる。例えば、野球は試合が雨天中止となるのは、費用の面だけでなく、再試合を行うという意味でも非効率的である。このような事態を解消するために、いくつかのスタジアムはドーム球場となった。ドーム球場は1965年、アメリカで大リーグ・ヒューストン・アストロズの本拠地として世界初の全天候型屋根付き球場アストロドームがオープンした。屋根付き球場建設の理由は、夏の暑さや蚊の大量発生から球場内を守り、快適な環境を確保するためだった。日本では、1988年、東京ドームが「国内初のドーム球場」として東京都文京区に竣工した。ドーム開きとなった同年4月の公式戦開幕日、首都圏は季節外れの豪雪となったが、ドームの中では快適な野球環境が整えられたため「早速ドーム効果が現れた」と話題になった。国内には、一般に東京ドーム・大阪ドーム・ナゴヤドーム・福岡ドーム・札幌ドームの「5大ドーム」を始めとし、多くのドーム球場が存在している。また、屋根を持たないスタジアムは、人工芝を敷いている。人工芝は、雨で濡れた本物の芝よりも水はけがよいので、雨のあとでもより早く試合を開始できるのである。

 このように、さまざまな領域で効率性が進められ、時間の有効活用がなされているのである。

 

《参考》

・マクドナルド化する社会 ジョージ・リッツァ・正岡寛司訳 早稲田大学出版部

・日本マクドナルドHP http://www.mcdonalds.co.jp/

Wikipedia ドーム球場

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%A0%E7%90%83%E5%A0%B4#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E3.81.AE.E3.83.89.E3.83.BC.E3.83.A0.E7.90.83.E5.A0.B4

・ガソリンスタンド(サービスステーション)業界の動向

http://www.ryugin.co.jp/chosa/report/pdf/442.pdf#search='%E3%82%AC%E3%82%BD%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%89%20%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%95%20%E6%8E%A8%E7%A7%BB'