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相澤沙紀 「サービス・マーケティングの観点から見るディズニーリゾート」

 

日本の中に数多くあるテーマパークの中で、永遠の人気を勝ち取っているディズニーランド。5年前からは新たにディズニーシーが加わり、その周辺にはオフィシャルホテルなども建ち並ぶ。アトラクションはもちろんのこと、年間を通して、またはシーズンごとに行われるパレード、様々なお土産品、さらには園内パンフレット一つ取っても「ディズニーリゾート」は他のテーマパークとは一線を画す形で存在している。「夢の国」と呼ばれるにふさわしい、あの完成された空間を成り立たせているのは、立地条件や施設全体のデザイン、そのほかキャストから客へ与えられる最高のサービスなどである。それらの要素が、何度でも訪れたくなるような「夢の国」を創り上げているのである。そこで、ディズニーリゾートを創り上げる上で最も重要な要素である“サービス”についてマーケティングの観点からディズニーリゾートを考えていきたい。

 

まず、マーケティングの種類は2種類に分けられる。一つはモノ(物)・マーケティングで、もう一つがサービス・マーケティングである。前者はモノ、つまり扱う製品が有形のものであるのに対し、後者は扱う製品が無形、すなわちサービスである。

 

次に、マーケティングを行うにあたり、必要となってくる要素について見ていきたい。マーケティングには主要な四つの要素があり、これを「マーケティングの4P」と呼ぶ。具体的に見ていくと、一つ目はProduct(製品)である。これは製品の品質・特徴・ブランドを表すものである。二つ目はPrice(価格)である。三つ目はPlace(流通)である。これは場所、つまり立地も関係してくる。最後に、Promotion(プロモーション=広告・販売促進)である。

 

以上に述べた四つの要素に加え、サービス・マーケティングにおいてはさらに三つの要素が関係してくる。その一つ目が、Physical Evidence(物的証拠)である。これは施設のデザインや物の配置・色などを考えるための要素である。二つ目はPeople(人々)である。何を行うにも、人の存在は最も重要な要素であり、ここでいう人々とは主に従業員・顧客を指す。そして三つ目がProcess(業務フロー・手順)である。一つのものが完成するまでどのような手順を踏むのか、について考えるものである。このように、サービス・マーケティングは上に述べた“7P”によって成り立っているのである。

 

では、上に述べたような7Pはディズニーリゾートにおいて、どのように反映されているのだろうか。ディズニーリゾート内で見られる7Pについて、具体的な例を挙げながら述べていきたい。まず、Product(製品)についてであるが、品質・特徴・ブランドについて見ると言うまでもなく、ディズニーのキャラクターたちは既に多くの人に周知のものであり、それはすでに一つの「ブランド」として確立していると考えられる。また、数多くあるお土産品を見ても、その一つ一つは非常にしっかりした作りになっており、お菓子もとてもおいしい。さらに、それらの全てはディズニーリゾートでしか買うことが出来ないものであり、そこにもディズニーリゾートのブランド性を見ることができる。

 

次に、Price(価格)についてである。ディズニーリゾートについてしばしば口にされるのがこの価格についてである。まず、園内に入るために必要なパークチケットについてであるが、これはたくさんの種類があるので主なものを見ていく。パークチケットはパスポートと呼ばれ、最も代表的なのが1デーパスポートである。これはディズニーランド・シー共通で、大人(18歳以上)が5800円、中人(1217歳)が5000円、小人(411歳)が3900円となっている。また、60歳以上のシニアパスポートは5100円となっている。平日の18時から入園できるアフター6パスポートは3100円で買うことが出来る。さらに、春休みや夏休みなど、学生(中高生、大学・短大・各種専門学生)にとって長期休暇の時期になると期間限定でキャンパスデーパスポートというものが発売され、通常の1デーパスポートよりも1000円安く買うことが出来る。一見するとテーマパークの入場券が5800円もするのはとても高いように思える。しかし、「夢の国」を目の前にすればそれは決して高いとは思わなくなるから不思議である。また、私たち学生にとってキャンパスデーパスポートは非常に嬉しいものであり、1000円安くなっているといっても結局4800円もするのだが、「1000円も安いならその昼食代に当てることができる」とさえ考えてしまう。

 

三つ目はPlace(流通)すなわち場所・立地である。「東京ディズニーリゾート」というのは周知の通り名前だけであり、実際は千葉県浦安市にある。これは結果論かもしれないが、実際あれだけの面積を誇る大テーマパークを狭い東京都内に作ることは困難なことである。また、ディズニーシーも千葉県の海沿いだったからこそできたものであると考えられる。流通という観点から見れば、ディズニーリゾートは駅の目の前にある。というよりは「舞浜駅=ディズニーリゾート駅」のようなものであり、電車で訪れる客にとっては大変都合のいい立地条件であると言える。また、周辺に立地するオフィシャルホテルにも目を向けてみたい。ディズニーリゾートのホテルには、ディズニーランド内にあるアンバサダーホテル、ディズニーシー内にあるホテルミラコスタ、さらにその周辺にあるディズニーオフィシャルホテルに分類される。私はオフィシャルホテルには宿泊の経験がある。1日中遊んで歩き疲れてそのまま帰るのは非常に苦痛であるが、当日の夜に1泊、しかもすぐ近くにホテルがあるというのは便利である。ランド・シー内にあるホテルに泊まれば、ホテルの中にいながら夜のショーを見ることができる。

 

四つ目はPromotion(広告・販売促進)である。テレビCMでは新しいアトラクションや季節ごとのイベントなどが宣伝されている。また、毎週土曜日の930分〜14時にTBSで放送されている情報番組「王様のブランチ」では、「ディズニーナビ」というコーナーを設けてディズニーリゾートについて毎週、様々な情報を提供している。テレビだけでなく、ディズニーリゾートの特集をしている雑誌なども書店で多く見受けられる。これほど多くの情報媒体があれば、誰でも目にする機会はあるだろうし、行ったことがない人でも一度は行ってみたいという気持ちになるのではないだろうか。

 

上の4Pに加え、サービス・マーケティングに特徴的な3Pについても見てみたい。まず、一つ目のPhysical Evidence(物的証拠)である。施設のデザインや物の配置は言うまでもなく、完成された空間となるように様々な工夫が凝らされている。例えば、ディズニーランドは「夢と魔法の王国」という呼び名にふさわしく、キャラクターや色とりどりの建物で溢れているし、ディズニーシーの方は大人も楽しめるような落ち着いた雰囲気の空間となっている。テーマパークと言えばアトラクションを楽しむのがメインという感じであるが、ディズニーランドもディズニーシーも、アトラクションが苦手な人でも園内を見て回るだけで十分楽しめる。さらに、ディズニーランド・シーは敷地内から外部の景色が見えないよう作りになっている。これは夢を壊さないためという理由なのであるが、確かにどれだけ高いアトラクションに乗っていても、外の景色が見えたことは一度もない。逆に、敷地外からも中の様子は見えないようになっている。だからこそ、敷地内にいる間は全く違う世界にいるような感覚を楽しめるのである。

 

次に、People(人々)である。あれほど広大な敷地を運営・管理するには従業員の存在が重要である。清掃スタッフだけでもランドとシーのそれぞれに600人いて、300人交代で掃除を行っているという。さらに、ランド・シーは24時間稼動しており、日中はゴミ拾い、夜間は水をまいてブラシ掃除・トイレ掃除などを行っている。実際に顧客と接しているスタッフとしてはパレードのスタッフもいる。パレードに出演しているスタッフになるためのオーディションは非常に難しいものであるらしい。厳しいオーディションに合格して、訓練を重ねているからこそ、客が「場所取りをしてでも見たい!」と思うようなパレードが完成するのだと思う。ディズニーリゾートに訪れる客の存在もなくてはならない。訪れる度に客の多さに驚き、若干うんざりすることもあるのだが、その客がいなければあれほどの盛り上がりを見せることはないのだろうし、何よりもディズニーリゾートの運営に支障をきたすことになるだろう。私たち客の存在は、ディズニーリゾートの中で主役といっても過言ではないであろう。

 

三つ目はProcess(手順)である。これは既に述べたPlaceとも関係がある。つまりサービスを提供する人たちが経るプロセス自体が商品であり価値なのである。どういうことかというと、サービスはそもそも目に見えない不可視のものである。したがって、それを創り上げるまでの手順は難しいものであるが、重要なことである。私たちがディズニーリゾートに客として訪れている間、つまりサービスを受けている間に「自分がサービスを受けている」という意識はあまり感じないだろう。その裏側で、サービスを提供する側の人々はどのようにしたらいいサービスを提供できるか、様々な過程を経て見えない努力をしているのである。

 

以上七つの観点からディズニーリゾートを見てきたが、上に述べてきたことについて、客の視点すなわちサービスを受ける側の視点から問題点を考えてみたい。まず、思いつくのが価格についてである。既に価格については述べているが、やはり正直なことを言えば全体的に価格は高いと言える。パークチケットもそうであるが、園内で販売されているポップコーンやアイスクリームなどの価格も一般的なものに比べれば異常に高い。中身だけを考えるからそう感じるのかもしれないが、例えばポップコーンを入れる容器がキャラクターの柄であったり、アイスの形がミッキーの形であったり、と「ディズニーブランド」を商品に適用してサービスの一つとして提供している。そう考えれば「サービス料込み」の価格設定だろうと考えられる。また、客の多さも一つの問題として考えられる。最近ではファストパスの発行や、アトラクションの行列に何度も折り返しをつけて進んでいるように感じさせるなど様々な工夫がなされている。しかし、それにしても人気のアトラクションでは「180分待ち」、長いときで「200分待ち」という表示も珍しくない。それだけ人数がいるということなのだから、もう少しその待ち時間を軽減させるような対策はないのだろうか、といつも行列に並ぶと考えてしまう。客の一人一人に最高のサービスを提供するためには何かを犠牲にしないといけないのかもしれない。それがみんなに平等な「時間」ということになるのだろうか。

 

サービスについて改めて考えてみると、様々なことが見えてきた。見えないものを創り上げて客へ提供するということの難しさ、目に見えないものすなわちサービスをお金で買う、人々の存在。“customer satisfaction(=顧客満足)”が注目される時代に、顧客が求めているものは日々変化し続けている。それに対応するべく、目に見えないものを創る側の努力は並大抵のことではない。

 

これからも更なる進化を遂げていくであろうディズニーリゾートは不動の人気を保ち続けることが考えられる。完成された空間の中で提供される最高のサービスを求めて人々は「夢の国」へ訪れることであろう。今回のレポートを通して、新たな視点からディズニーリゾートを見ることができた。今度訪れたときはただ楽しむだけでなく、どのようなところでサービスが提供されているか、また何をサービスと考えるのか、という点に注目することができそうである。

 

参考資料  http://blwisdom.com/ikey/05/10/2.html

            http://allabout.co.jp/glossary/g_career/w000938.htm

            http://www.blwisdom.com/word/key/100096.html

            http://www.tokyodisneyresort.co.jp/