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「地域ショッピングセンターの集客力と需要」

           

 大橋 友梨(宇都宮大学国際学部国際社会学科3年)

 

 

1、はじめに

 

 近年、全国各地でショッピングセンターが次々と建設され、増加し続けている。それは、スーパー等と連結しているものであったり、いつくかの店舗が一つの敷地内に集合しているものであったり、様々な形態のものがある。現在では、映画館、フィットネスジム、ゲームセンター等も複合されているような集客力のあるショッピングセンターも急増し、ショッピングセンターそのものがテーマパーク化されてきているように思われる。週末になると、このようなショッピングセンターには、家族連れや休日を楽しむ多くの人々が訪れている。今まで、ショッピングセンターというものは、目的とするものを購入するだけであり、長時間過ごすというような施設ではなかったように感じるが、現在では、休日の余暇時間をショッピングセンターで過ごすという人々が増えてきている。ショッピングセンターに対する需要がこれだけ高まってきている理由は何なのか、そしてこれからどのように発展していくべきなのか、ということを考察していこうと思う。

 

 

2、ショッピングセンターとは

 

 1930年代米国で誕生し、50年代以降全米に拡がり、アメリカ人にとって生活にかかせない商業施設と成長していったショッピングセンターが、日本に登場したのは1960年代であった。

 

まず、ショッピングセンターとはディベロッパーにより一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるもの。またその立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便性、娯楽性等を提供するものなど、生活者のニーズに応えるコミュニティ施設として、都市機能の一端を担うものである、と定義されている。

 

 そして、ショッピングセンターはその存在する場所によって、都市型ショッピングセンター(リージョナブルタイプ・・・大都市の中心地にあり広域商圏を対象とする)、郊外型ショッピングセンター(コミュニティタイプ・・・地方都市の幹線ロードサイドにあり中規模な商圏を対象とする)、近隣型ショッピングセンター(ネイバーフィットタイプ・・・市街地から少し離れた場所にあり地域住民を対象とする)という3タイプに区分される。都市型・郊外型と近隣型を比較すると、前者は週末・滞在型であり、後者は平日・通過型とされており、利用者のニーズに応じ、様々な形態が取られているのである。

 

 毎年100箇所を超えるハイペースで開発されているショッピングセンターは、いまやその数が2500を超え、21世紀初頭には3000、2010年には4000箇所を上回ることが確実視されている。それだけ今の時代、ショッピングセンターそのものの需要が高まっているという事である。ではなぜショッピングセンターに続々と人々が集まるのだろうか。次は消費者の行動に視点を当てて考えていこうと思う。

 

 

3、消費者の時間活用法

 

 人々は普段の飲食物の買い物等は近くの店舗で済ませ、時間があり家族や友人と過ごす時間は少しでも遠く賑わいのある場所で、よりアメニティを感じることが出来る大型店舗で出かけるというように、購買行動を使い分けしている傾向がみられる。

 

この購買行動には時間節約型購買と時間消費型購買という二つがある。まず、時間節約型購買とは、買い物ということに費やす時間は出来るだけ省き、必要なものを手短に揃えてしまうという購買行動であり、勤め帰りの主婦などに多く見られるものである。この行動で、購買は目的ではなく手段となっている。次に、時間消費型購買とは、ショッピング行為を楽しむこと自体が目的となっている購買行動であり、家族や友人など同伴者と共に時間をかけて見て回るパターンが多い。そして現在では、週末の余暇時間の過ごし方としてレジャーよりもショッピングを楽しむという後者の時間消費型購買が増大してきている。

 

この時間消費型購買が増大してきている原因の一つとして、平日の家族の過ごし方の変化があげられるのではないだろうか。現代は女性の社会進出が進むことにより、平日は家族と買い物をする時間は取れず、仕事帰りに手早く買い物をするだけの時間しか取れない、という状況が増えてきていると思われる。そのため、休日には家族で過ごす時間を大切にするとともに、平日では買いきれないものを週末まとめ買いするためにショッピングセンターに出かけるのである。次にあげられるのは、ショッピングセンターのレジャー施設化である。現在増え続けているショッピングセンターは、娯楽性の高い商業施設が出店しているものが多く、買い物だけでなく、様々な方法で余暇を楽しめる施設が用意されている。よって、そんなに遠出をしなくても車で行ける範囲に家族や友人同士で手軽に楽しめるのである。ここには父親の心理として、ショッピングセンターであれば、妻や子供だけが関心のある場所ではなく、様々なものがあるので、父親自身も楽しめ、連れてきやすい、という利点もあるようだ。このように消費者の行動の変化と共にショッピングセンターを発展させていくことで集客力をあげているのである。

 

 

4、おわりに―問題点と改善点―

 

 これまで、ショッピングセンターに注目し、人々の余暇時間の過ごし方を考えてきたが、最後にショッピングセンターの便利さの裏にあると思われる問題点と、これからのショッピングセンターについて考えてみる。

 

まず問題点は、ショッピングセンターの営業形態である。夜遅くまで勤務している人や、緊急時などに便利な深夜営業は、確かに現代社会には必要不可欠となってきている営業形態なのかもしれないが、違う側面から見るとこの深夜営業が子供達の夜更かし、睡眠不足などの問題につながらないとは言い切れないのでないだろうか。親が平日、仕事が終わった後子供と共に時間を過ごすために出かける事も必要であるし、これは社会の変化として当たり前のようになってきてはいるが、これが後々影響を与えるかもしれないと考えれば、需要が高まってきているショッピングセンターも、利用方法を検討する必要があると考える。

 

次にこれからのショッピングセンターが発展していくために必要な事は、高齢者志向のマーケティング展開である。高齢化社会が進行する現代において、ショッピングセンターも高齢者のニーズにしっかりと対応していく必要があると思われる。高齢者の方は、家族でショッピングセンターに来ても、長時間店内を歩き回ることが出来ない場合が出てくる。そのような時、現在では用意されている数が少ない車椅子をより多く常備してあれば、もっとショッピングを楽しむことが出来るのではないか。他にも、歩行時の段差の解消、使いやすいトイレ、介添え者の常駐、巡回バスのサービス、高齢者用の商品開発などが高齢者の方々に有意義に楽しくショッピングセンターを利用してもらえる改善点として挙げられる。

 

このような問題点や改善点を考慮したうえで、これから先もショッピングセンターが発展していけば、人々のよりよい余暇時間が確保されるのではないかと考える。

 

 

<引用・参考Webサイト>
・サトウファシリティーズコンサルタンツ

   http://www.sfc-net.co.jp/j/index.html

・日本ショッピングセンター協会

   http://www.jcsc.or.jp/seminar/data/index.html

・ショッピングモールの掟

  http://www.geocities.jp/jdy07317/2040.html

・地域ショッピングセンターのあり方

  http://www.j-smeca.or.jp/training/pdf14/ibaraki.pdf

・アナリストの眼

  http://www.fukoku-life.co.jp/download/report15_12.pdf

・世界のショッピングセンターのコスト事情

   http://www.sfc-net.co.jp/j/tokusyu/costinfo/cost07.pdf