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「大学と地域のかかわり方」

〜小学校教育における学習チューターについて〜

国際学部国際文化学科3年 中澤 浩子

 

1、学習チューターとは?

 学習チューターとは、近隣の小中学校で行う学習支援ボランティアであり、主に教育学部の学生を対象としている。学習チューターと一言で言っても実際に行う内容は様々で主に次の3つが挙げられる。

l         授業中の先生の補助

TT(チームティーチング)方式で児童一人一人に応じたきめ細やかな指導を行う。

l         放課後学習支援

放課後に児童の学習相談を受けたり、学習のつまずきを解消したりする。

l         昼休みの活動

昼休み時間に児童を遊びに誘って、友達と遊ぶ楽しさを伝え、児童が自ら遊ぶようにする。

 

ゆとり教育のため学校での授業時間が減り、学力低下が問題となっている。それとともに、一人一人の習熟度にも差が出てきた。そのため、個に応じた指導を充実させていく必要があり、学習チューターが活用されている。日本の児童の学力は国際的に見て上位にあるものの、勉強が好きだという児童が少ないなど学習意欲は決して高くないということ、さらに自然体験・生活体験など勉強以外の遊びの場が不足していることなどからこれからはただ授業を補助するだけではなく、学校生活や課外活動に合った支援が必要となっているだろう[1]。また、学校生活の満足度・授業の理解度ともに学校段階が上がるにつれて低下していることから高校と大学が関わっていくことも必要になってくるかもしれない。

 

2、宇都宮大学の学習チューターの取り組み

@       スクールサポートセンター

 宇都宮大学ではスクールサポートセンターが大学と近隣の学校との仲介となって学習チューターを派遣している。スクールサポートセンターとは宇都宮大学と教育現場をつなげる機関であり、この機関の業務内容として主に次の5つを挙げることができる。

l         構内授業研究への外部指導者のサポート

l         教科や総合的学習などの進め方についての専門的なアドバイス

l         放課後学習や行事の補助への教職を目指す学生の派遣

l         学校課題の解決のためのチームの編成と助言

l         教育委員会の施策への助言や参画

3つ目が学習チューターの派遣を指している。

 

Aシチズンシップの導入

 シチズンシップ・・・テーマをもって学習ボランティアを50時間取り組むことによって単位を与える制度

 

宇都宮大学の学習チューターは宇都宮市の「放課後学習チューターの配置等に係る調査研究事業」という事業がきっかけで始まった。その事業は宇都宮市教育委員会が文部科学省の委託を受け、平成15・16年度に行われた。その事業が昨年度で終了したので今年度からは大学と小中学校が提携し、自主的に続けている。そのため、昨年度までは市から学習チューターにバイト代として1時間1000円がでたが、今年度からは無報酬で完全なボランティアになった。

 

また、来年度からシチズンシップを実施しようという計画が進んでいる。現在宇都宮大学が思考しているシチズンシップは学習ボランティアのほかにも、市が主催する野外活動などで学び取ることを目的としている。そのため、ただ参加するだけではなく、生徒自身が活動の中で企画をし、実行することが求められる。評価方法は、生徒がシチズンシップの状況や結果をレポートにまとめ、教授に提出するという案が有力である。だが、シチズンシップを科目にするか、また科目にするならどの部類に入れるかなど、現在はまだ計画中のため、未決定のこともある。さらに、スクールサポートセンターによるとシチズンシップを取り入れるには大きな問題が2つ出てくるという。1つ目は授業や学校行事が詰まっていて学習ボランティアに参加する時間を作れない学生がいること。2つ目は学習ボランティアを授業にするために他の授業の時間割を見直さなければならず、大学全体の問題となること。

 

宇都宮大学と峰小学校の場合、学習ボランティアに参加している学生は計5人でそのうち4人が教科学習・1人が昼休み活動のボランティアという内訳である。また、教育学部生が4人・他学部が1人と、学習チューターは教職希望者のためのボランティアというのが現在の実態である。だが、これからは2で述べたように授業現場以外の教育現場でも学習チューターを活用することを考えていく必要がある。そうなると、学習チューターというボランティアが教職希望者に限らず、教育学部以外の学生にも魅力的であることが望ましい。バイト代の支給とシチズンシップの導入は他学部の学生の参加を促すものとして最も単純で学生のメリットとして魅力的だと考える。

 

3、学習チューターの実態

今回、学習チューターとして峰小学校4年生の算数の授業に参加してみて、学習チューターを実施することの難しさを感じた。参加する3時間のうち1時間が担任の先生の都合で算数から国語へ変更し、教室の後ろに立っているだけだった。また、前もって授業形式や内容を知る機会がなかったため、授業の進行に戸惑ってしまった。このことを改善するには、事前に担任が学習チューターに授業方法の説明をしたり、たがいの要望を伝えたりする打ち合わせをする必要があるだろう。加えて、事後にも支援の仕方について担任と学習チューターが一緒に振り返る機会を作るべきであると考える。

 

教育学部の学生にとって学習チューターは教育自習の前に教育現場を体験できるいい機会であり、教育実習と比較して考えると自主的に参加することが大きな違いであり、意味があるだろう。しかし、教職希望者以外の学生にとってはまだなじみのないボランティアである。インターンシップのひとつとして教育現場に関わると考えれば進路観を広げる良さもあり、大学と地域の小中学校のかかわり方のひとつとしても両方に意義がある。これからは学習チューターの定義を広げて教科科目以外でも学生が参加できるようにすれば大学の資源を有効に使えるだろう。そのためにスクールサポートセンターのような機関はもっと積極的に学生に企画の紹介・アピールをしていくべきであると感じた。



[1] 学校教育に関する意識調査(文部科学省,平成15年度実施)によると、小学校全体の8.3%、中学校2年生の22%、高校1年生の32.4%が学校生活を楽しくないと答えている。