「テーマパークの成功と復興」

 

米次夕香(宇都宮大学国際学部国際社会学科三年)

 

1.テーマパークをとりあげることについて

 経済産業省による定義を用いれば、テーマパークとは「入場料を取り、特定のテーマの下に施設全体の環境づくりを行い、テーマに関連するアトラクションを有し、パレードやイベントなどのソフトを組み込んで、空間全体を演出して娯楽を提供する事業所をいう」となる。遊園地と異なり、テーマパーク産業はアトラクションや施設だけを有するものではなく、そこに一貫した「テーマ」を必要としているものということだ。1983年に東京ディズニーランドや長崎オランダ村が開業したことにより、日本でもテーマパークという概念が定着した。その後週休二日制の導入や、バブルによる所得の増大によって次々とテーマパークが設立されていった。この時期に人々の余暇に対する意識が高まり、同時に余暇に使う時間と資金が生まれたといえよう。その後のバブル経済の崩壊に伴い、当時建設されたテーマパークのほとんどが、現在は経営困難、もしくは破綻に追い込まれている。その中で唯一の勝者となっているのが東京ディズニーランドである。そして、敗者となってしまった多くのテーマパーク、その中でもハウステンボスに焦点を当ててみる。高齢化社会になり、教育現場の中でゆとりという言葉が使われる今、余暇に対する人々の意識が高まっている。そんななかで、「テーマパーク」という人々の余暇の時間を糧としている産業が、どのように生き延びていくのか、そして復興のためになにをなすべきかを考察したいと思う。

 

2.成功例としての東京ディズニーランド

 1983年の東京ディズニーランド開園以来、2000年にショッピングモール「イクスピアリ」をオープンし、2001年には東京ディズニーシー及びそれに隣接したホテルミラコスタの開設、とテーマパークとしてだけではなく、「東京ディズニーリゾート」といったリゾート地として人気のテーマパーク一位の座を不動のものとしている。ディズニーランドの勝因は、@立地条件のよさA徹底したサービス精神Bキャラクターの魅力にあると思われる。詳しく述べると、@関東圏にあり、東京駅からわずか15分でディズニーリゾート最寄駅の舞浜駅まで行くことができる。東京ディズニーランドの4割は関東圏の人々である。A従業員の接客のレベルの高さ。加えて、敷地内の建物には細部までこだわりがいきとどいており、何度行っても新たな発見がある。季節ごとのショーや、閉演前のパレードなどのクオリティが高い。Bどのような世代にも共通して好まれるディズニーのキャラクターを起用したこと。と、いうことである。これらの要因が重なり合うことで、東京ディズニーランドは日本のテーマパーク市場で、他の追随を許さない存在になった。

 

3.復興を目指す長崎ハウステンボス

 オランダと約400年の交流がある歴史を生かして、オランダの建物をそっくりそのまま長崎の土地に作って観光地としたのがハウステンボスである。日本にいながらオランダの町並みや、風車、チューリップといった非日常感を味わってほしい、というコンセプトである。2003年に実質上経営が破綻したものの、野村證券グループの援助を受けて復興に乗り出した。ハウステンボスの復興に向けて、中川一樹(業務執行本部長)氏は、関東や関西、アジア圏の観光客を取り入れることが年頭にあったが、本当の意味での地域貢献をなすために地元の協力を仰ぐ、といった発言をしている。その言葉どおりに、ハウステンボスアカデミアと称して、ネイルアートやフラワーアレンジメント、パッチワークなど文化的な多様な分野での教室が開かれている。

 

4.ハウステンボスの復興が向かうべき方向

 ディズニーランドとハウステンボスを比較してみて感じることは、コストパフォーマンスとサービスの違い、である。ディズニーランドの入場料金は5500円であり、テーマパークの中では比較的高めである。しかし、この入場料金を支払えば、「ファンタジー」の世界にのめり込むことができるし、数々のアトラクションに乗ることができる。パーク内の多少高めのお菓子であっても、シーズンごとに変わるパッケージに魅かれてつい買ってしまう。「ディズニーランド」に対する徹底した姿勢が、「これだけのお金を払っても満足できる」という安心感を生み出し、リピーター95%以上という数字を生み出している。

 ハウステンボスは、オランダを「観光」してもらうためのテーマパークである。敷地内に足を踏み入れると、チューリップが咲き乱れている風景はすばらしく、建物も豪華であり、非日常感を味わえる。しかし、パーク内の従業員はほとんどすべてが日本人であり、なんとなく現実に引き戻されてしまう。海外の観光客が入場した際に、従業員に英語を話せる人がいなかった、という指摘があった。従業員の質が、外観に伴っていないということは、消費者から見れば魅力に欠くのである。建物が本格的な造りなので、維持費を賄うために入場料金が4800円と観光するだけの費用としては高めである。しかも前述したハウステンボスアカデミアの教室に通うためには、この入場料を支払わなければならない。本当に地域に根ざした復興を望むのなら、市民に無料開放する日を設けたり、市民だけの特別価格でチケットを販売してもよいのではないか。

 人々がテーマパークを利用するときに求めることは、「非日常」を味わうことだ。ハウステンボスには若者が求めがちな刺激はほとんどないが、高齢者が求める落ち着きがある。高齢化社会を迎えている日本で、高齢者をターゲットとした市場を視野に入れることは重要である。そのためにハウステンボスはさらなるサービスの充実とコストの値下げを図るべきである。市内、もしくは近辺の地域の人々の、特に高齢者の余暇を狙った戦略がより必要だとわたしは考える。

 

参考

     ハウステンボス オフィシャルwebサイト http://www.huistenbosch.co.jp/top.html

     オリエンタルランドホームページ http://www.olc.co.jp/news/news.cgi?home_f

     東京ディズニーランドホームページ 

     財団法人 広域関東圏産業活性化センター http://www.giac.or.jp/