インド映画について

国際学部国際社会学科2年 加藤 由恵

 

 インドは世界屈指の映画大国である。映画製作本数、映画館入場者数、ともに世界第一位である。国内映画製作本数は01年には1000本近く制作され、近年伸び悩み気味といっても、03年では877本と世界第一位を誇っている。「ハリウッド」で有名なアメリカ(490本、89年)や日本(310本、04年)の水準を凌駕する。映画館入場者数も、04年延べ27億人と世界第一位である。日本の延べ17000万人と比べて、桁違いの多さとなっており、インド国民一人が年間平均27本の映画を鑑賞している計算になる。

 また、インド映画は例外的にハリウッド物よりも国内映画が圧倒的な人気を博している。04年の日本輸入映画62.5%、国内制作37.5%と比べ、03年のインド輸入映画24.2%、国内制作75.8%と、はっきりとした違いがでている。

 映画製作本数がこのように多い理由を2つあげることができる。

 まず一つ目は、他国に比べてカラーテレビが一般家庭に充分普及していないことである。経済発展の著しい都市部では、90年代以降カラーテレビやビデオ、ケーブルテレビの普及率が急速に高まりつつあるが、インド全体でみれば普及率はなお低水準に留まっている。         人口10億人を超える大国インドは、現状では全世帯の35%を絞める600万世帯が保有世帯であり、内300万世帯がケーブルテレビを視聴している。 テレビ以外の娯楽も少ないため、映画が庶民の楽しみとして重要な位置をしめている。

 二つ目に、多民族国家のインドには、ヒンズー語、タミル語、ベンガル語など23もの言語があり、それぞれの地方・言語圏で競うように映画が制作されていることがある。例えば、03年のデータでみると、ヒンズー語の映画が222本、タミル語が151本、ベンガル語が49本、英語が23本となっている。

 

言語別のインド映画

 インド映画は、大まかには北インド映画(ヒンディ、マラティ、ベンガルなど)と南インド映画(タミル、テングなど)とに分類される。

北インド映画(ヒンディ映画):美形の女優・男優と派手な衣装や唄で奏でる。

南インド映画(タミル映画):内容を重視、どちらかというと大人しめ。

テルグ映画:現実主義の映画が多い

 それぞれの地域の言語が使われた映画は、考え方や好みも反映されるためか、インド・アーリア諸言語地域(北インド)の人は、ヒンディ映画を好み、逆にドラヴィダ諸言語(南インド)の人々は、タミル映画が好まれ、ヒンディ映画は人気がないというのが一般的である。 

 言語別で製作本数を比べてみると、

100本以上  ヒンディ、タミル、テルグ

10本以上  カンナダ、マラヤーラム、ベンガル

10本前後  マラーティ、オリヤー、パンジャビー、ネパール、グジャラート

1桁     アッサム、マリブーリ

のようになる。

それぞれのインド映画について、詳しくみてみよう。最も人気があるヒンディー映画は、マハーシュートラ州のムンバイ(旧ボンベイ)で制作されており、ハリウッドにボンベイの頭文字Bを掛け合わせて、ボリウッド映画とも呼ばれている。ハリウッド同様に、屋内と屋外に大規模な撮影セットがある。03年の映画製作本数877本の内267本はボリウッドで作られたものである。

 一方のタミル映画はマドラス(現チュンナイ)で。最近では近代的なラボや、スタジオが多く作られ、ヒンディ映画の撮影や編集も行われている。独立前には映画界を牽引した趣のあるカルカッタは、ベンガル、オリヤー語など東インド諸語映画の制作で知られている。

サウンドの重要性

 インド映画(主にヒンディ映画、タミル映画)はとにかくにぎやかである。笑いに恋にアクションなどあらゆる娯楽要素が入っている。そして、しばしば場面の途中で歌や踊りが突然挿入される。また、1980年代以降に作られたドキュメンタリー映画はインドの映画作家によって作品のため、複雑なサウンドトラックがつけられる傾向が高かった。音声、ナレーション、それに場合によっては音楽の伴奏はインドのように多くの異文化が入り交じった社会では当然複雑になりもし、また雰囲気をつかむのに重要な役割を果たしている。

 派手なアクションや華麗な踊りも、言葉がよくわからなくても楽しめるようにするためであろう。

 しかし、ドキュメンタリー映画においては、数多くの言語と方言が混在する中ではある特定の言語を対象とした語りは、他の言語コミュニティにはうまく翻訳されて伝わらないかもしれない。それは英語で行われたインタビューにも同様の問題が浮上してくる。エリート階級は英語を解するが、インド国民の大部分は自分たちの住む地方の言葉を使っているドキュメンタリーがテレビで放送される場合でも、そのインタビューの発言内容が理解できるかどうかで問題が起こりうる。字幕はこの問題への解決策の一つ考えられるが、もし英語の字幕であれば大部分のインド人は理解できない。この結果難しい選択が残されることになる。大多数は資金が限られているため、その多くは英語字幕をつけることを選択し、作品が組合のホールや地域センターで上映されるときにその場で音声を観客が使っている言葉に訳し直している。

 

インド映画の拡大

 近年では、アメリカアカデミィー賞外国語映画部門に何度かノミネートされるなど、インド映画が海外からも熱い視線を浴びるようになってきた。海外での人気・評価が高まるにつれ、個別の映画製作会社では力を入れて国内市場だけでなく、海外市場を開拓しようという動きがでてきている。インド政府も外貨獲得の手段の一つとして映画産業に力を入れており、02年には映画の輸出を振興するために、映像ソフトの輸出にかかる関税を免除した。

 輸出動向をみると、NRI(印僑)が多く移住する中東・北アフリカ地域については、昔からインド映画の人気は高く、多数の作品が輸出されていた。輸出本数が多かったのはレバノン、オマーン、モーリシャスなどである。そのあと、欧米や東南アジアにも輸出されるようになり、最近は日本や英国なども新たな輸出先として期待されている。

  輸出に関して、質が高くなったという点もあるがそれ以外の理由もある。イスラム圏のインド映画ブームを例にとって見ると、受け入れられた理由は@インド系の労働者が多いこと、Aイスラム教義が色濃く影響されているため「ラブシーンのないインド映画は好都合」←ハリウッドや西欧映画のなかのキスシーンはカットされてしまうので、内容は空くが難しくなるB言葉がわからなくても話の内容がだいたいわかってしまう単純さ、華やかさ(民族衣装やダンス)

 Aのように宗教的な理由やBのように言語による問題が、映画輸出には関係しているのである。

 またインド映画局は、ある国と互恵的な取り決めの基で行われる。DFF(映画局)は海外のフェスティバルに出される映画のパッケージを相手国の言語でつける組織の役割を果たしている。相手国それぞれに好まれるようなものを選び、を上映する。インド映画を世界に広める役割を果たしているのである。

 

Documentary box   http://www.city.yamagata.jp./yidff/docbox/7/box7-4.html

インド映画局   http://mib.nic.in/dff/

インド映画    http://www2s.biglobe.ne.jp/~asiafilm/india.htm